地元のネットワークを仕入と集客に生かす - 石窯パン工房 TAKU - ブランスリー電子版

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お店拝見/2012年12月号

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地元のネットワークを仕入と集客に生かす - 石窯パン工房 TAKU
オーナーの高橋店長(左)と、製造チーフの上野さん(右)。石窯はツジ・キカイの「平窯王」を使用し、売場から見える位置に設置。「石窯のパン」という点で客の興味をひくことも多い
「石窯パン工房 TAKU」の外観。女性客から「かわいい」と好評。設計は地元の友人に依頼
焼き菓子と地元名産品のジャムのコーナー
 名湯ひしめく神奈川県湯河原の町に、この春4月にオープンした「石窯パン工房 TAKU」。店名の由来は店長の高橋拓也さんの名前だ。高橋さんはもともと湯河原の出身。同県内の小田原や、東京のベーカリーでの計15年の修業を経て独立を果たした。
「地元に親しまれる店を目指しています」という高橋さんは、親交の長い地元の同級生が営む地域の精肉店や豆腐店、ジャム店などを材料の仕入先にするなど、独自のネットワークを形成している。また、4種類揃えている人気メニューの食パンの2つを、湯河原のイメージに合わせて「山」「海」と名づけた。「山」(角食パン、1斤500円)はジャム店から仕入れた、湯河原みかんなどの季節の柑橘類の皮を入れた食パン。「海」(山型食パン、1斤280円)は塩気を意識して甘さを控えめにしたパン・ド・ミだ。
「柑橘類の皮だけを仕入れることが出来るのは、ジャム店との付き合いが深いおかげです」とシェフの上野歩さん。店舗で販売している湯河原のジャム各種や、豆腐店の豆乳プリンも同じ理由で仕入れが可能となっている。「いま話が進んでいるのは、当店のカレーパンを精肉店で販売してもらうことです。当店の宣伝にもなってくれればという思いもありますね」(上野さん)



ホールセールや名店との住み分け
食パン「山」(1斤500円)。練りこまれた柑橘の皮の粒が見える
甘さを控えめにした食パン「海」(1斤280円)
「大納言」(140円)。あずき粒が浮き出たユニークな見た目。あずきの存在感とうまみがポイント。あんぱんの甘く懐かしい風味がほんのりと漂う。高齢者に好評
「湯河原あんぱん」(120円)。あんの種類によっていくつかのバラエティーがあり、写真はかぼちゃあんを使った商品。なめらかなかぼちゃが舌触りよく、ほんのりした自然な甘み
「オレンジブリオッシュ ア・テート」(100円)。パリッとした皮と、中身のしっとり感の対比がポイント。甘すぎないさわやかな甘みが食欲をそそる
 開店後、立地に思わぬ難しさがあると実感した高橋さん。
 「近くにスーパーのマックスバリューが建っています。最初は、『買物帰りの来店が見込める』と好条件と考えていたのですが、開店後マックスバリューの買物袋を持ったお客様がほとんどいないとわかったんです」
 マックスバリューで売られているホールセールのパンは安価で、菓子パンや調理パンは90円を切ることもある。
 こうした状況の中で、「価格で勝負する必要はない」と気付かされる出来事があったという。
「もう少し離れた場所に価格帯が高めのスーパーがあるのですが、そこの買物袋を持ったお客様はときどき来店されるのです。地域のお客様に何を期待されているのかわかって来ました。初めから、マックスバリューとは客層が
分かれていると考えていいようです」(上野さん)
 現在、「TAKU」の客層の主流は年配の女性と、小さな子供を連れた女性だ。その需要に対応するために、年配の女性に人気の「大納言」(140円)や「湯河原あんぱん」(120円)のほか、母親に連れられた子供に人気があるデニッシュ類、クリーム系の菓子パン類、焼き菓子、プリンなども揃え、需要に合わせた展開を進めている。中学校が近くにあり、部活前後に女子中学生の来店も目立つという。こうした女子中学生の需要も菓子パン類だ。
 「『中学生割引』を始めました。中学生客には全品10円引きにするんです。告知も宣伝もせず、来店して初めてわかるサービスですが、女の子なので口コミで自然に広がるみたいですね」と上野さんは話す。
 しかし、菓子パンの需要はあくまでも「おやつ」であり、毎日必要とされるような日常性がない。やはり目標は食パンやハード系のパン、そして調理パンのファンを増やすことだという。
 近隣には名店とされるベーカリーが1軒あり、「TAKU」にとっての手ごわい競争相手になっている。ハード系を扱うのは「TAKU」と同競合店の2店にほぼ絞られる状況で、競合店の価格帯はかなり高いが、品質への信頼とブランド力で固定客を掴んでいる。
 こうした状況について上野さんは「高い値段で買わなくても、おいしいハード系は楽しめると地域の方々に知ってもらいたい」と語る。上野さんはホテルでの10年の修業歴があり、高級パンの製造は得意だ。
 高橋さんも「長らくバターの品薄が続く中でも、徹底してバターの使用にこだわってきました。いいコンパウンドは出ていますが、まだバターの風味にはかないません。デニッシュは「100%フレッシュバター使用」を売りにしていますし、それが出来ている店は珍しいと思います」と語る。
 バターの確保は前月や前年度の取引実績を基準にされることなどもあり、新店には厳しい条件が揃っているが、仕入業者に総当りで連絡し、確保に努めているという。
 加えて、定休日や製造キャパの違いなどで、2店のハード系同士の間でも「TAKU」の独自性を打ち立てていこうと研究中だ。



タウン誌に広告を出し、効果的に集客
ハロウィンカラーに彩られた店内は、楽しげな雰囲気だ
 開店半年の来客を観察し、地域の中での同店の独自性が何かは見えつつあるという。現在取り組んでいるのが集客を伸ばすことだ。
「ここにベーカリーがある、と認知されるのが難しい」と高橋さん。同店のPRポイントの「石窯パン」「天然酵母」は、複数の高品質志向の客に好評を得ている。しかし一方で一見の地元客もまだまだ多い。
 「タウン誌に宣伝を出したり、ポスティングしたりしてみて、一番効果があったのは配布範囲の広いタウンニュースという新聞折込広告でした。隣町からの来店もありました」(上野さん)。
 10月上旬に2日間のドーナツフェアを開き、折込広告で告知したところ2倍の来店客を記録したという。11月は第2弾の菓子パンフェアを計画中だ。
「年配のお客様は客単価が高いですね。何人分も買っていって配布してくれるようです。お子さんにねだられて、当店のパンを購入し、ファンになってくれるお母さんやお父さんも多いようです。まずは、今の当店のファンの方を中心に当店の良さをもっと知ってもらって、パン食の楽しさを知ってくれる人を増やしていきたいですね」と上野さんは語った。

SHOP DATA
店名:石窯パン工房 TAKU
住所:神奈川県足柄下郡湯河原町中央1−20−7
電話:0465−63−3377
営業時間:午前9時〜午後6時
定休日:日曜、第2第4月曜
品揃え:パン30品目、菓子パン20品目
店舗面積:厨房12坪、売場8坪
スタッフ:製造2人、販売3人



原価計算女王
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