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| 「ハード系は売れる」と確信できたスタート - タグチ ベーカリー |
| | 入り口正面のショーケース。欧風パンの雰囲気に良く合うシックな内装 | | | | 田口幹雄店長。販売経験も豊富で、人当たりがよく丁寧な接客をしてくれる | | | | 人気商品の「バタール」(250円)、低温長時間発酵した「レトロバゲット」(270円)など | | | | 人気商品の「ヴァイツェンミッシュブロート」(400円、ハーフ200円)。独特のくせのあるドイツパンだが、フィリング提案で売上上位の人気商品にした | | 「理想と現実の間で、考えることは多いですね。私の理想はハード系のパンのおいしさをお客様に知ってもらうことです。しかし一方で、定番品であり多くのお客様に馴染み深い調理パンや菓子パンも現実的な需要があります。ハード系で勝負したい気持ちは強いですが、店の方向をどう舵取りしていくかは模索中ですね」と語るのは、この8月に西荻窪にオープンした「タグチベーカリー」の店長、田口幹雄さん。学生時代から出身地、京都のベーカリーに勤務し、そのままパン職人の道に入った。京都で10年間製造、販売の修業を積み、東京へ出て以降もいくつかの店に勤務、店長を3年、工場長を4年勤め、経験を積んだ。東京・三鷹市などに店舗展開するベーカリー、ポラリスでさらに4年間修業し、ベーカリー業の様々な業務を習得した後、43歳で独立を果たした。 同店はJR西荻窪駅から徒歩約10分、東京女子大学のすぐそばの閑静な住宅街に佇むベーカリーだ。白壁にモダンな焦げ茶色の格子扉が品が良く、洒落た印象を与える外観。扉を開けると正面には30種類程度のパンを並べたショーケースが現れる。販売スペースは3坪程で3人も客が入れば一杯になる。販売方法は対面販売だ。 ショーケースに並ぶのは過半数がハード系のパン。バケット、バタール、カンパーニュ、そしてドイツパン。 「実は人気商品はハード系なんです」と田口さん。店の商品構成は、現在ハード系6割、調理パン3割、菓子パン1割となっている。その中で、開店以降「レトロバケット」やライ麦45%使用の「ヴァイツェンミッシュブロート」が順調に売れ、売上上位を占めていることは、田口さんにとって予想以上の成功だったという。 「西荻窪は地代の安さと、凝った個人商店が活躍している街という点で出店候補に上がりましたが、ベーカリーの激戦区でもあります。半年から1年は準備期間と考えて試行錯誤にあてるのがいいと、先輩達から助言をもらいました。そして開業してみて、実際に食についての好奇心が旺盛なお客様が多いとわかりました。例えば、ドイツパンのフィリングに、珍しくて少し高価な樹木系のハチミツやオリーブオイルを提案すると、それを本当に購入して楽しむ方々なのです」と田口さん。 さらに「西荻窪はハード系を扱うベーカリーが少なく、しかも中心客層のシニア世代にも実はハード系のファンが多かったということだと思っています。ただ、その流れのままにハード系の比率を上げていくかは、まだ決めてはいません」とも。あくまで慎重な姿勢だ。 現在、ハード系の価格は「レトロバゲット」が270円(小サイズ150円)、「カンパーニュ」が330円(ハーフ170円)、「ヴァイツェンミッシュブロート」が400円(ハーフ200円)など。味わいはホテルの高級ベーカリーに比肩する品質だが、価格は抑えている。それも試行錯誤の一環で、まずは手に取りやすい価格でハード系を試してもらい、味わいの良さやフィリングでの食べ方の楽しみを知ってほしいという考え方だ。利益率を考えると厳しい売り出し方だが、「ハード系を日常的に食べるパンと認識してもらうことに成功すれば、継続可能」と踏んだ。 「オープン前も広告宣伝は打ちませんでした。口コミが基本です。お客様はおいしいと広めてくれるので、口コミ客は珍しくありません。まずは地元に支持される店になることが最重要と考えています。先輩達の助言の通り、焦らずに腰を据えてやっていくつもりです」と田口さん。
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| パン職人の理想と客の需要 |
| | 人気商品の「カンパーニュ」(330円、ハーフ170円)。低温長時間発酵を採用 | | | | 実験的に、「フォカッチャ」(180円)、「野菜入りのピゼッタ」(230円)、「ウインナーロール」(180円)などの調理パンも販売 | | | | 客の需要に合わせて販売中の菓子パン。「ミルクフランス」(170円)は注文を受けたあとに練乳を詰めて提供 | | | | アップルサイダー(右)、グレープフルーツサイダー(右から2番目)なども販売。「スーパーやコンビニにはない商品を紹介していきたい」と田口さん | | ハード系普及に加えて、田口さんのもう一つの理想は「朝のパンを、その日の朝に買いに来てもらうこと」だ。田口さんの地元の京都では、早朝の開店前のベーカリーを馴染み客が訪ね、焼きたてのパンを購入していく習慣があるという。「関東では前日に焼いたパンを食べていると知って、これはぜひ、朝食べる焼きたてのおいしさを味わってもらいたいと思いました」と田口さん。そのために、ベーカリーの開店は朝8時に設定している。 サワー種やルヴァン種をつくり、生地も10種類程用意し、積極的に新作を出していくこともしている。「オーソドックスなハード系だけでなく、遊びが感じられる楽しいフレーバーも、幅広く提案したいと思っています」と田口さんは語る。 また、田口さんは、地元客の声を取り入れることを重視している。「対面販売形式を活かし、お客様のお話は積極的に伺っています。話を楽しみに来店する方もいて、地域の状況も聞けます。実は開店後に営業時間を1時間延ばしました。それも要望を取り入れてのことです。また、この地域は月曜定休の店が多いとわかり、差別化のために定休日を変えることも検討しています」。出店に当たり近隣の競合店調査はあまり熱心に行わなかった。それよりも、客の声を直に聞き、確実なニーズを掴んでいくことを優先している。 現在、同店の日商は平均5万円。従業員は製造販売の田口さんと販売の田口夫人の2人体制。悪い数字ではないが、理想と比べるとやはりこの夏の売上は厳しかったという。それについて田口さんは「苦しい夏場を最初に体験できたので良かった」と話す。 リピーターも順調に増えているという。今後は、近隣の大学の夏休みが明けるため、学生の需要も視野に入ってくる。 厨房は9坪の広さを取っており、最終的には製造をもう1人増やして3人体制で運営していくことを考えている。 「お客様の需要に応えたい気持ちも強いんです。調理パンや菓子パンの需要はありますし、それがハード系に対してどういう比率になるかまだわかりません。だからこそ、ご要望に応えられる様に設備のポテンシャルは高めに設計しています」(田口さん) 新作の試作を継続しているため、現在厨房の仕事は多く、徹夜も少なくない。しかし田口さんは「何事も『まずはやってみる』という意識で挑戦しています」と話す。 「製パンのアイデアは色々ありますが、ベーカリーの基本は毎日食べるシンプルなパンを同じクオリティーで作り続けることです。そういった心掛けを忘れずに、お客様に喜んでもらえるパンをつくっていきたいですね。例えば、バラエティー性は取り入れても、奇をてらうようなことがないような。私の理想と地域のお客様の需要の折り合いを、よく見極めていきます」と田口さんは笑顔を見せた。 SHOP DATA店名:タグチ ベーカリー 住所:東京都杉並区西荻北4‐26‐10 三愛コーポラス102 電話:03‐6913‐9853 営業時間:午前8時〜午後7時 定休日:月曜日(暫定) 品揃え:35品目 店舗面積:厨房9坪、売り場3坪 スタッフ:製造1人、販売1人 日商:平均5万円
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