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| インタビュー/2012年10月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 職人家業を守りながら、企業として成り立たせる - プロローグ山本敬三社長に聞く | |
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1999年に畑に囲まれた小さな道沿いに静かにオープンした「パンステージ プロローグ」は、オープン当初の日商7万円から、日商80万円を売り上げる有名ベーカリーに成長した。オーナーの山本敬三社長は、現在では、東京・町田市や神奈川県横浜市などに、「パンステージ プロローグ」を含めて、ベーカリーなど4店舗を展開する。人が育てば、楽しい店になって、楽しい店になれば、客がたくさん来て、客がたくさん来れば、店が繁盛して、店が繁盛すれば、人がまた育つ ―― こうした理想的な好循環が、同ベーカリーでは実際に起こっている。(掲載写真はすべて今年4月にオープンした4号店の「プロローグ プレジール」で撮影)
プロローグ 神奈川県横浜市青葉区美しが丘西1-3-10、電話045-902-7879 |

| 客の要望にはすべて応えてきた | |
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―――山本さんがこの世界に入ったのはいつですか。
山本 1986年に18歳で新宿の中村屋に入社しました。入社した当初は無我夢中というか、将来何をやっていくかとか、何で生計をたてていくかとか、そういうことはわからないまま、与えられた仕事をがむしゃらにこなすだけでした。でも、とりあえず食べ物を作る仕事をしたいという思いは漠然とあったような気がします。最初は、パン、洋菓子、和菓子と一通りやらされて、最終的にパン部門に配属されました。一緒に130人ぐらい入社しましたが、パン部門に配属されたのはみんな体が大きくて、体育会系の人が多かったですね。 ―――自分の店を持ったのはいつですか。 山本 1999年に、神奈川県横浜市青葉区に「パンステージ プロローグ」という名前でベーカリーをオープンしました。最初は日商7万円でした。周りは畑ばかりという立地で、13年前にあの場所に店を出すというのは相当勇気が要りましたね。駅から歩いたら30分以上かかる場所でした。 しかし、修行時代の中村屋では、店の立地は、駅ビルの中とか、デパートの中とか、そういう場所ばっかりだったので、実は自分で店を出すときは、そういう好立地ではない場所に出したいと思っていたんです。好立地だと、僕がやらなくてもお客さんは来ると思ったし、どうせやるなら「わざわざ買いに来てくれる店」をやりたかったんです。 初めての自分の店だったので、もうがむしゃらにやるしかありませんでした。最初は、スタッフも製造は僕を含めて2人でスタートしました。あとはすべてアルバイトとパートさんでした。 全員がほぼ素人の状態だったので、宣伝しても絶対に商品を作り切れないと考え、できる範囲でやるしかないということでスタートしました。 ―――「ひょっとしたらずっと7万円のままかもしれない」と思ったことはありますか? 山本 それはなかったです。やはり、中村屋での経験は大きかったと思います。特に最後に5年間店長をやらせてもらった経験は大きかったと思います。当たり前のことをきちっとやっていればお客さんは必ず増えていくという確信はありました。おいしいものを作って、いい接客サービスと共に提供し続けていれば、絶対に売上げは伸びると確信していました。 ―――いい接客サービスとは具体的にはどんなことですか? 山本 お客さんが求めてきたものについては、絶対に断らなかったですね。お客さんが「こういうパンを作ってほしい」といってくれば、必ず作ってさしあげました。そうすれば、「あそこに行けばこういうこともやってくれる」といって喜んでもらえるじゃないですか。そういうことをやっているうちに品数がいつのまにか250種類にまで増えたんですね。中村屋では、ABC分析をやって、あまり売れないCランクの商品は廃止することになっていたのですが、自分の店では、1日2〜3個しか売れないものでもやめずに作ってきました。 「うちはこういうコンセプトだから、それはやらないんですよ」ということは絶対に言いません。やっぱり、わざわざ買いに来てもらうためには、小さいお子さんから、若い方々、中年の方々、年配者にいたるあらゆる年齢層の人たちが求めるものが揃っているべきだと思います。この考えは今でもまったく変わっていません。特定の年齢層の人たちにも、特定の所得レベルの人たちにも、絞り込むことは絶対にしません。うちのお客様はすべての人たちなんです。 |

| 店を軌道に乗せるのと同時に、人材を育てる | |
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―――現在の「パンステージ プロローグ」の日商はどれくらいですか。
山本 今は、日商ベースでいうと80万円を超えますね。年商が3億円です。 ―――日商40万円ぐらいの時に一度取材させていただいたことがありますが、それほど広くない売り場で、いかに効率よく陳列して、回転を速くするかを追及されていましたよね。同じ店であれからさらに倍に増えたのはすごいですね。 山本 さらに回転を速くしたということと、駐車場を30台収容に拡張したことが大きかったですね。それ以前は、9台収容でした。駐車場を広くしても、特に土日はまだ入りきれないので、警備員をつけています。満車の場合は、「すみません。今いっぱいなので、もう少したってからお願いします」といって一回りしてきてもらうしかありません。土日は1日1000人以上来ますから。 ―――その後、東京の町田市に2店舗目の「パンステージ エピソード」を出され、さらに3店舗目の「エピソード カフェ」を同じく町田市に出されて、4店舗目が今年4月に出店したこのお店「プロローグ プレジール」ということですよね。13年で4店舗を順次出店されてきたわけですが、今振り返ってみていかがですか。 山本 結局は人が育つかどうかということで、おかげさまで4店舗展開するだけの人材が育ったということだと思います。資金調達については、既存の店でしっかりと利益が出せているかどうかがカギです。この2つがきちんとできたから、店を新たに出店できたのだと思います。 新店舗を出すのは、既存の店の借金の返済のめどが立ってからになりますから、5年返済で借りれば、出店のペースは5年ごとということになります。だからその5年の間に、新しい店の店長になれる人材を育てなければならないということです。 ―――山本さんのところはスタッフが、厳しさの中でも生き生きと働いている様子が印象的だと思います。従業員教育はどのように行っておられますか。 山本 創業当時は、僕と各スタッフが1対1で向き合っていられたので、多少仕事がきつくてもきちっとフォローできていたのですが、今は、正社員30人、パート、アルバイトまで入れたら100人の規模になっているので、昔の根性論ではやっていけなくなりましたね。創業時からいっしょにやっているスタッフは、僕と一緒に毎日働いてきたので、改めて教育しなくても、自分の考え方が十分に伝わっています。現在の4店舗の各店長は、そうしたスタフたちです。だから、彼らとは昔の職人の世界じゃないですが、根性論が通用するんですよ。 ―――でも、会社全体のことを考えると根性論だけでは今の時代やっていけないということですか。 山本 そうですね。これからの時代の従業員教育は、「職人としてやるときはやらなくてはならない」という厳しい世界も教えつつ、その一方では、やっぱり世の中週休2日制なわけで、法人でやっていく以上、「うちは労働基準法なんか関係ない」などといっていたら、立ち行かなくなってしまいます。職人家業でありながら、法人としてもきちんとやっていかないと、成長していくことは難しくなってきますよね。 ―――でも今の時代、企業の従業員ばかりになってしまったら、リテールベーカリーの魅力がなくなってしまうし、やはり、気概のある職人を育てなければならないと思います。しかも、ブランドになり得る職人を育てる必要があるのでは。 山本 専門学校で講師をやっているのですが、まずそこでパン職人はこういうもので、こんなに素晴らしいんだよ、ということを伝えています。あとは、ホームページに僕の職人としてのメッセージをどんどん載せるようにしています。今の若い人は冷めた人が多いので、「なにこのおやじ、熱くなっているんだ」みたいに思う人も多いと思うのですが、そうだからこそ、「お前らもっと熱くなれよ!」みたいなメッセージを発信したいんです。こんな時代でも、そういうメッセージに反応してくれる若者はちゃんといるんですよね。どんな時代でもやるやつはやるんですよね。 教える方が諦めてしまったらだめだと思うんですね。いまは、礼儀を家でも学校でも教えないことが多いので、基本的な挨拶やお礼がいえない人がいっぱいいます。だから、うちに入ってきてから教えなくてはならないことがいっぱいあるんですね。もし挨拶ができない場面に出くわしたら、その場ですぐに言わなければだめです。注意するのはエネルギーが必要だし、嫌われるのを恐れて言わない上司も多いのですが、諦めたら絶対にだめだと思います。 ―――山本さんは、今でも現場に入るのですか。 山本 もちろん入っています。特に新しい店を立ち上げるときは、毎日朝から晩まで張り付きます。3か月は店長と付きっ切りで仕事をして、ある程度オペレーションが出来上がって、シフトが回るようになって、スタッフがきちんと休みをとれるようになった時点で、店長にすべてを一旦任せます。店長がやっているのをみていると、気に入らないこともいっぱい出で来るのですが、そこは口を出さずにじっと我慢して任せます。かなりストレスは溜まりますが、それが人を育てるということなんだと思いますね。 |

| 「必要とされている」という感覚を全員に与える | |
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―――お店が理想的な形で発展して、人も育って、新しい店を出して、その新しい店がまた発展する、というような理想的な展開をしていくための秘訣はありますか。
山本 一言で言うのは難しいのですが、売上が足りないから出店するというのは危険だと思いますね。既存の店がうまくいって、人も育ってくれば、次のことを目指したくなりますよね。従業員の能力が向上してくれば、その能力を生かす場が必要になってきます。そのための出店なんですね。 あとは、適材適所ということだと思いますね。例えば、店長というのは監督ですから、技術が優れている人がそのまま店長というわけにはいきません。チーフの時はすごくよかったけれど、店長になったらだめになってしまったというケースは多々あります。それはつまり向いていないということなんですね。この人は作るのが好きだから作ることに専念させてあげた方がいいとか、この人は技術はそれほどでもないけれど、人をまとめる力がすごいから、店長にした方がいいとか、それぞれの能力に適した場所はどこかを考えてやることが必要なんです。 それぞれの個性を生かせるポジションをみんなに与えて、やりがいをもって働いてもらえる環境を作ることが、社長の仕事だと思います。従業員全員が、「自分は必要とされている」と感じられたら、その店は絶対にいい店になります。逆に、従業員が、やらされている感覚を持っていたら、つまらない店になると思います。楽しければきつい仕事も苦にならないんですよね。 ―――ここ「プロローグ プレジール」は、パンと洋菓子とイタリアンの3本柱のお店になっ ていますが、それはどういう理由からですか。 山本 「パン職人の洋菓子」と「パン職人のイタリアン」というのがコンセプトなんです。洋菓子を作っているのも、イタリアンの料理を作っているのも、たたき上げのうちのスタッフで、この店を出すために、洋菓子の製造を習い、イタリアンの料理を覚えるための勉強をしてきました。外部から洋菓子職人とイタリアンのシェフを呼んできていたら、まとまらなかったと思いますね。 「パン職人の洋菓子」は、シンプルなことが売り物ですね。シンプルでおいしい洋菓子です。パン職人は当然焼き物は得意なわけで、焼き菓子や、イタリアンのナポリピッツァなんかも、本来は得意分野なんですよね。あとは、パン職人の洋菓子もイタリアンも、価格が比較的安いという魅力があります。 |

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