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| 連載/2012年9月号 |
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| ポルトガルの食文化を訪ねる 日本にパンを伝えたポルトガル | |
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一粒の麦から(9) - 本行恵子
日本にパンを伝えたポルトガルは、西ヨーロッパのイベリア半島に位置し人口1064万人(2009年)、国土は日本の4分の1の小さな国です。しかしユーラシア大陸の最西端の国家で、かつては大航海時代の先駆者として活躍しました。ポルトガルがヨーロッパで最初に日本との接触を持ったお蔭で、パンだけでなくカステラ、金平糖、てんぷら、卵そうめんなど身近な食べ物も伝わってきました。 初夏に咲くジャカランダの花が美しい季節に、ポルトガルの食文化を訪ねてきました。 |

| 自然と共生するスローフードの世界
首都リスボンを起点に、世界遺産のジェロニモス修道院、エヴォラ、ポルト、モンサントの山間にある村の共同パン焼き小屋と養蜂家、セイアのパン博物館、チーズ生産者などを回りました。中には日本人があまり訪れることのない場所もあり、有意義な時間を過ごすことができました。今回の旅で一番心に残ったことは、先祖代々伝わっている食の伝統が、今の時代に生き続けていることです。料理、パン、菓子、チーズ、そしてワインなどを、全部ではありませんが、昔ながらの製法で手間暇かけて作るまさにスローフードの世界でした。
ポルトガルで最も美しい村といわれるモンサラーシュは、エヴォラからバスで1時間半の城壁に囲まれた小高い丘の上にあります。紺碧の空に映える白壁の家が続き、時の流れが止まったような静かな村です。レストランが数軒あり、羊や豚肉を使った家庭的な郷土料理を楽しむことができます。人々の生活は見た目には慎ましやかですが、四季折々の自然を楽しみながら心豊かに生きているような気がしました。ポルトガルの内陸部、マルカータ自然保護地区にある100年近く続く養蜂家のオルガンさん夫妻は、自然との共生を実践しています。家も工場もない広大な自然保護地区に咲く花からミツバチが集めた蜜を巣箱の中でじっくり熟成させ、濃厚で美味しい蜂蜜になるまで待ちます。そしてミツバチが働きやすい環境を整えるため、人間がミツバチに合わせた生活を営んでいます。 また中部地方に位置するモンサント近くのペーニャ・ガルシア村には、250年前から使われている共同パン焼き小屋があります。便利な都会から村に戻り、長老たちからパンの製法を受け継ぐアンナさん親子は、昔ながらのスタイルで地元の人々のためにパンを焼いています。ミキサーもホイロもなく、あるのは生地を捏ねる木の桶と石窯のみ。小屋の前にある共同井戸から水を汲み、木桶の中で粉(タイプ65の小麦粉)と水と種を入れて捏ね、常温で生地が発酵するのを待ちます。成形は目分量で分割した生地を丸め直し、紙の上に置いて自然発酵。石窯の炉床の温度が十分上がった頃を見計らって燠(おき)をかき出し、パン生地を入れ焼成。 焼き上がったばかりのパンを口に含むと、素朴で懐かしい味がしました。生産性や効率優先の社会に生きる私たちが忘れ去ってしまった大切なことを、改めて思い起こさせてくれる貴重な経験でした。 |

| お菓子とパンと料理にも伝統が残る
ポルトガルの首都リスボンには歴史のあるパン・菓子店が多く、1829年創業の「コンフェイタリア・ナシオナル」は、クリスマスから年始に食べる伝統菓子「ボーロレイ」を広めた店として有名です。店舗も老舗の貫録があり、一つ一つの商品が丁寧に作られています。またベレン地区にある「パスティス・デ・ベレン」は、ポルトガルで一番ポピュラーなお菓子「パステル・デ・ナタ」(日本では別名エッグ・タルト)が人気商品。世界遺産のジェロニモス修道院から伝えられた配合と作り方を、今もかたくなに守っている店です。1920年に開業した老舗のパン店「カネサス」はあいにく定休日で閉まっていましたが、ウインドーディスプレイにも力を入れ、品質の高い伝統的なパンが有名です。その他のパン店やスーパーでは、小麦、とうもろこし、ライ麦を使った古典的なパンが多く、バゲットやクロワッサンなどはあまり見かけませんでした。比較的大きい「アレンテージョ風のパン」(像の足のパンとも言われている)と、小型の「カルカッサ」と呼ばれる軽い食感のテーブルパンが中心です。調理パンや菓子パンは、日本では見かけないようなイワシを丸ごとのせたものや、メロンパンに似たパンもありました。
料理は新鮮な魚介類のタコ、イカ、アサリ、アンコウ、タラ、イワシなど日本人に馴染みのある素材が多く使われています。肉類は牛や羊の他、アレンテージョのコルク樫のドングリを食べて育った豚が有名で、いろいろな伝統料理に使われています。有名な「バカリャウ(干しタラ)のコロッケ」やカタプラーナ鍋(球形の銅鍋)で作るブイヤベース風の「カルディラーダ」などは、ポルトガルのおふくろの味として国民的な支持を得ています。 今回の旅は、ポルトガルの伝統的な食文化が日本に与えた影響と、伝統的な食文化を次世代へ伝えることの大切さを改めて学ぶ機会になりました。 |

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