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| 特集/2012年9月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| ニッポンドイツパン事情
ドイツパンというと、一昔前は、「硬くて酸っぱくて食べづらいもの」というのが、日本での定評だったが、最近は事情が変わってきている。大小を問わず、本格的なドイツパンを製造販売するベーカリーが増え、食べ方の提案を熱心に行なうブーランジェも多くなってきている。本場のドイツパンをそのまま再現することに熱心なベーカリーもあれば、ドイツパンのエッセンスは残しながらも、日本人の好みに合うように独自にアレンジすることに熱心なベーカリーもある。いずれにしても、ドイツパンの文化が、日本の風土を取り込みながら、進化しつつあることは確かなようだ。
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また、手引書の用意もある。「ドイツパンの美味しい食べ方」と題した2枚のリーフレットには、ドイツパンの歴史や作り方、食べ方などが記載されている。食べ方については、定番のサンドイッチメニューについて、ポイントを押さえた上でかなり詳細に書かれている。 例えばプレッツェルについては「肉との相性が良い。上質なバターとハムだけでもおいしいが、ハムの代わりにサラミ、生ハム、ローストビーフもお勧め。豪快に食べたいときはチキンソテー(骨なしフライドチキン)を大胆にサンドし、たっぷりの野菜と一緒にどうぞ。味のアクセントにはマスタードとピクルスを」などと書かれている。プレッツェルのほかに、ロッゲンブロート、トライコーン、コサッケンブロートについても書かれており、それぞれ魚、チーズ、野菜との相性が良いという。誰もが自分の好みを見つけられるよう、幅を持たせたメニュー提案がされている。 さらに同手引書には、同店のパンと菓子約80品目の一つひとつについて、写真、原材料、価格、味の特徴、食べ方の提案、エネルギー量が記載されている。ドイツパンについて、どんなものがあるのか簡単に知りたいという人から、さらに知識を深めたいという人までが便利に使えるアイテムだ。 好きな具が入ったサンドイッチを選ぶ 木村店長は大学で設計学を専攻していたが、縁あって7年前に同店に就職した。ドイツパンは同店で初めて食べた。 「パンは、菓子パンややわらかいパンが自分の定番でした。当店に勤め出した頃はライ麦パンが苦手で食べられなかったんです。でも、好きな鴨肉が入っているライ麦パンのサンドイッチを食べ続けていたら、いつの間にかライ麦パンが好物になっていたんです。米好きの自分にとって、パンがおいしいと思ったのは初めてです」 こうした経験を持つ木村店長は、初来店の客の気持ちがわかるのだ。現在の主な担当はサンドイッチの調理とサンドイッチのメニュー開発。サンドイッチは、ライ麦パンを使用したものをメインに約15種類を揃える。定番のハムとチーズ以外に、和風総菜をサンドしたものまでバラエティーに富んでいる。 「自分がライ麦パンを克服できたときのように具の中に好きなものがあれば、手に取ってもらえると思うんです。また、ドイツパンだからといって和風のものが合わないわけではなくて、ポイントさえ押さえれば、あらゆる具を使っていけるということを提案していきたいです」 ライ麦パンを使ってサンドイッチを作る際は、パン自体の味が濃いということにまず気を付けるといいという。 「食パンなら、具の味がそのままサンドイッチのおいしさになりますが、ライ麦パンは味、食感ともに主張が強いので、具は味のしっかりしたものを選び、ハムは枚数を増やすなど、量を多めに使うといいと思います。やはりパンがおいしいので、パンの味と食感を無視せずに、具を組み立ててもらえれば、相乗効果によって、パンをよりおいしく召し上がっていただけると思います。逆にそれができないと、ライ麦パンは、そのおいしさが引き出せないどころか、食べにくいと感じてしまうんだと思います」 同店のライ麦パンはライ麦の配合率だけをとっても、20%の少ないものから100%のものまで、5〜10%刻みに揃う。この豊富な品揃えの中からなら、自分の好物の具をさらにおいしくさせるベストマッチングのパンを見つけることができるだろう。 現在揃う約15種類のサンドイッチも、それぞれパンと具がベストの組み合わせなので、新商品を入れ込む隙がなかなかないという。 「今あるサンドイッチは長年かけて洗練し、勝ち抜いてきたメニューです。そこに、新しい商品を加えるのは難しいことですが、お客様との会話やカフェチェーン店からヒントをもらって、その時々の流行を取り入れたメニューを開発できたらと思っています」 現在考案中なのは、サンドイッチの具として人気のエビ、アボカド、サーモンを使ったサンドイッチ。さらに、クリームチーズとキウイを、酸味のあるタイプのライ麦パンに合わせたものも考えている。 ベッカライカフェ リンデ 吉祥寺店 住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1‐11‐27 電話:0422‐23‐1412 営業時間:午前10時〜午後8時 定休日:なし 品揃え:パン70品目、菓子10品目 スタッフ:サンドイッチ3人、パン・菓子6人、販売・カフェ12人 店舗面積:1階厨房8坪・売り場14坪、2階厨房5坪・カフェ17坪 | |||||||||||||

| ドイツパンに特化せず、ドイツパンを地道に提案する - ヒンメル | ||||||||||
東京・大田区の「ヒンメル」のパンは、ドイツパンだけではなく、フランスパンやチャバタ、さらにはあんぱんまであり、多彩だ。店名こそドイツ語だが、パンの品揃えと同じように、店内のインテリアや、スカイブルーと白を基調とした外観などは、ドイツと一括りできない雰囲気を放っている。「ドイツとも地中海とも北欧とも言い切れない、それらすべてが混ざったようなお店ですね」と、よく言われるという。 オーナーシェフの金長暢之さん は店づくりについて、「ドイツやドイツパンだけに絞りたくはないんです」と話す。「ドイツパン専門の店ではありません」とわざわざ言い続けてきたほどだという。 「ドイツパンに限らず、専門店にはしたくなかったんです。それはなぜかというと、例えば問屋さんがおいしいあんこの扱いを新規で始めたとしても、当店がドイツパン専門店でドイツパンだけしか作っていなかったとしたら、必要ないと思われて紹介してもらえないでしょう。それは、おいしい食材と出合えるチャンスを自ら放棄してしまうことになると思ったんです」 同店のドイツパンは約20種類で、ライ麦パン、カイザーゼンメル、プレッツェル、クラプフェンなどのほか、ドイツの焼き菓子も揃う。これらは全体の3割強を占め、ほかの製品と分け隔てなく陳列されている。しかし、プライスカードにドイツ国旗のマークが貼られていたり、製品名がドイツ語で付けられていたりするので、客はドイツパンだという認識を持って購入できるようになっている。 焼き菓子のコーナーには、シナモンなどの香辛料がたっぷり入ったクッキー「シュペクラティウス」(120円)が並ぶ。これはドイツの伝統菓子の一つで、ドイツで金長さんが購入してきた木型を用いてクッキー生地を型抜きして焼き上げた製品だ。 「ドイツやベルギーで、クリスマス前になると店頭に並ぶクッキーなのですが、おいしいので当店では通年販売しています」 ドイツで感動したおいしさを再構築 金長さんは20代後半でサラリーマンからパン職人に転向した。日本のベーカリーで修行後、30歳でドイツに渡り、ドイツの都市デュッセルドルフの中心地にある人気ベーカリーで働いた。そのときに修得した「クラプフェン」(100円)は、現在同店の看板商品となっている。「クラプフェン」は、見た目は揚げドーナツのようだが、中がとろっとしてとろけるような食感になっている。 「クラプフェン」も、「シュペクラティウス」と同様、金長さんがドイツで食べて「おいしい」と感動した製品の一つ。 金長さんは、4年半前に同店をオープンしてから3回、ドイツに行っている。 「いつも、ドイツに行ったらはじめに、クラプフェンを食べるんです。好物だからというのはもちろんですが、現地の味を再確認するためでもあります。店で毎日作っていますが、どうしても少しずつ味が変わってきてしまうんですね。そして、前回食べたときには気付けなかったおいしさに気付くこともあります。『これは違う』という発見が食べる度に必ずあるので、その発見を店に持ち帰るんです。クラプフェンは、ドイツに行く度に改良を重ねているので、これまでに3回、使用する粉を変えるなどして、レシピを変更しました」 クラプフェンが置かれているのは、レジのすぐ横だ。数あるドイツパンの中でも、金長さんが最も気に入っている製品で、どんな客層にも自信を持って勧められる製品だという。 一方、ドイツで食べて金長さんの口には合わなかったものもあったという。それはプレッツェルだ。 「おいしいというよりも、『思っていたよりもかたいな』という印象の方が強かったと思います。そこで帰国後、ソフトな生地を、プレッツェル形に成形してラウゲン液に浸けて焼き上げたら、自分が納得いくオリジナルのプレッツェルができたんです。ドイツのものとは味が違うので、ドイツ人のお客様は、『プレッツェルの形をしているのに、味はプレッツェルじゃない』と否定的に言う人と、そういったことにこだわらず、『おいしい』と喜んでくれる人とに分かれます」 同店のドイツパンは、クラプフェンのように現地の味を再現したものだけでなく、プレッツェルのようにアレンジをきかせたものもある。クラプフェンの味の再現も、金長さんが現地で感じ取ったおいしさをもとにしたのだとすれば、どちらも、レシピありきではなく、一度金長さんの味覚フィルターを通して再構築されたものだと言える。本場ドイツの味にこだわる客には、ドイツパンを専門とする他店を紹介するそうだ。 少しずつファンを増やす 「最近、ライ麦パンが美容にいいということがテレビで話 題になっていたようで、女性のお客様の購入が増えました」(販売担当の前田さん) 金長さんは、「ブームで終ることなく、少しずつ買ってくれる人が増えてくればいいと思っています」と話す。開業当時と比べ、全体のアイテム数は増えており、ライ麦パンも種類が多くなっている。着実にライ麦パンのファンは増えてきている。 同店のライ麦パンは、ライ麦の配合比率が100%と60%の2パターンある。食べ慣れていない人向きの、30%程度の少ない配合のものはない。さらにイーストを使わず自家製のサワー種だけで仕込んでいるため、「修行したドイツの店より、重く、濃厚な味になっている」(金長さん)。しかし、ピスタチオなどのナッツを練りこんだ「エルゼザーブロート」(720円)や、レーズン、クルミ、白ごまを練りこんだ「ゼザミブロート」(980円)は、ライ麦60%の生地を使用しているが「食べ慣れていない人にも勧めやすい」(前田さん)製品だ。 サラリーマン時代、営業を得意としていた金長さんだが、ライ麦パンの販売方法に関しては、はっきりとした答えが見つからないという。ライ麦パンは好き嫌いがはっきり分かれる味なので、「おいしいから食べて」という風に単純に勧められない製品なのだそうだ。 「最初に、お客様がどのような嗜好を持っているのかを伺うのが重要ですね。酸味が嫌いじゃなくて、大丈夫そうだと分かったら、自分が気に入っている食べ方を紹介します。好みでないのに勧めたら、押し付けるようになってしまいますが、一度は、食べてもらう機会づくりが必要だと思います」 「多く作り過ぎちゃったんで」と言って、試食用に渡すこともあるという。 ヒンメル 住所:東京都大田区北千束3‐28‐4 電話:03‐6431‐0970 営業時間:午前7時半〜午後7時半 定休日:火曜日 品揃え:約70品目 スタッフ:製造4人、販売2人 店舗面積:厨房11坪、売り場8坪 日商:平日15万円、休日20万円 | ||||||||||

| 決まった曜日に訪れる常連客もかなり増えてきた - アム・フルス | |
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オーブンとミキサーを最優先で決めた
昨年9月に開業した神奈川県横浜市のドイツパン専門店「アム・フルス」。同店のオーナーシェフ、山本毅さんは、東京製菓学校を卒業後、日本のベーカリーに4年間勤務。その後ドイツに渡り、製パンマイスターの認定を受けた。さらにドイツでは、農場に併設されたパン工房で働いて腕を磨いた。現在製造しているドイツパンと焼き菓子合わせて約20種類の製品は、同工房で製造していたものと、ドイツの学校で学んだものだ。自家製のサワー種と、石臼で自家製粉したオーガニックのライ麦全粒粉を使ったハード系のパンがメインとなっている。 ライ麦の配合は最も少ないものが15%で、約10%刻みに100%まで揃う。 使用している機械はほとんどがドイツ製の新品だ。店舗の内装費用を含めて初期投資額は3000万円以上。特に重視したのは「パン作りにおいて、入り口と出口に当たるミキサーとオーブン」(山本さん)で、開業の計画を立てる際、何よりも優先して決めた。ミキサーのフックはL字形で、生地を非常に優しく扱うことができるという。 オーブンはドイツで通っていた学校で使用していたものと全く同じもので、幅が狭く奥行きがあるため、ドアの開閉による温度低下が少なくて済むという。 食べ方や保存方法の提案はパートに任せる 製造は山本さんが1人で行っており、販売はパート1人が担当している。パートとして登録しているのは4人で、全員が主婦だ。「お客様に対しての食べ方や保存方法の提案は、パートの方に任せています」(山本さん) カイザーゼンメルにバターを塗ってハムをサンドする定番の食べ方が好きだという山本さんにとって、パートスタッフの提案は新鮮味があるという。 「ライ麦パンにクリームチーズをぬって、その上にサワーチェリーのジャムをのせるという食べ方は、これまでやったことがありませんでした」(山本さん) 保存方法に関しても、消費者の目線から細かくアドバイスできるのだという。 「冷凍保存した場合、食べる予定の前日の夜に冷蔵庫に移しておき、翌朝アルミホイルに包んでトースターで温めると、しっとりとしておいしく食べられるんですよ」(販売担当のパート) 開業して1年が経とうとしている現在、決まった曜日に訪れる常連客もかなり増えてきた。目立つのは、年配客と男性客だ。また、アレルギーで悩む人や糖尿病を患っている人など食生活を改善する目的を持って来店する人も多いという。 アム・フルス 住所:神奈川県横浜市港北区綱島西2‐5‐10 コーリン綱島1F 電話:045‐716‐8361 営業時間:午前10時〜午後6時 定休日:月曜日、第3火曜日 品揃え:約20品目 スタッフ:製造1人、販売常時1人 店舗面積:厨房26坪、売り場6坪 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


















