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| インタビュー/2012年6月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 小麦粉にとことんこだわってパンを作る-小倉孝樹社長に聞く ムッシュイワン/ポラリス・ポラリスよみうりランド店・東京都稲城市矢野口3302-8、電話044-966-4025 | |
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東京・立川の「ムッシュイワン」は、舌の肥えたパンのヘビーユーザーにも多くの支持者を持つ本格派ベーカリー。一方、都内に6店舗ある「ポラリス」は、幅広い客層をターゲットにしたベーカリーだ。この2つのブランドの総指揮をとるのが、両ベーカリーの運営会社、ウィルベンの小倉孝樹社長だ。同社長は、ホテルベーカリーで育ち、その最も輝いていた時代のパン作りのエッセンスを、今に伝えようと、日々パン作りに励むオーナーブーランジェだ。同社長のパンの原材料を見る目は限りなく厳しい。現在は、これまで培ってきたパン作りのエッセンスを、ビジネスというフィルターを通して、どう輝かせるかがテーマになっている。
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| 強力粉ベースのパンに使う小麦粉にこだわる | |
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―――パンの原材料、特に小麦粉についてはかなりこだわっていると聞きました。
小倉 私は、昔のホテルベーカリーで育ってきた人間で、この業界に入って37年になります。日本のホテルベーカリーの父と言われる福田元吉さん(故人)から、直接いろいろなことを教わりました。福田さんの教えのひとつに、「1粉、2種、3技術」(「パン作りでは、粉が一番大事で、次に大事なのがパン種、その次に大事なのが技術」という意味)というのがありました。 自分の求める香りや味わいを実現するには、いろんな粉の性格を考慮して、使い分ける必要があるんです。1種類の粉だとどうしても単調になってしまうんですね。これは、フランスパンに限ったことではなく、食パンやロール系のパンでも同じです。 うちは、イギリスパンについては、大手製粉会社2社の強力粉2種類と、中小製粉会社の準強力粉1種類をブレンドして使っています。その配合でないとだめなんですね。少しでも変わると、味がぜんぜん違ってきます。準強力粉の方は、品質はそれほど安定していないのですが、大手の製粉会社の粉にはない粗削りな感じがあって、とにかく旨いんですね。これを配合したパンは、焼き上げたときに独特の奥にひっかかるような味わいが出てきます。粉がわかってくると、粉から離れられなくなるんです。 フランスパンを作るときのフランスパン専用粉やフランスの粉については、「この粉がいい」「あの粉は味わいがある」などと、こだわる人が多いと思いますが、こと強力粉に関しては、あまりみんなこだわりがなく、製パン性のいい粉一本でパンを作っているケースも多いのではないでしょうか。でも私たちが作っているパンは、6〜7割はロールパンとか食パンとか、強力粉ベースのパンです。ですから、強力粉についても、フランスパン用の粉と同じように、こだわりを持たなくてはならないと思うんです。 ―――油脂や卵、牛乳などを多く配合するパンについてはどうですか? 小倉 イギリスパンのようなシンプルなものに比べたら、当然粉自体に由来する香りや味わいはわかりずらくなります。ですから、そうした高配合のパンについては、副材料の味や香りを生かしていけばいいので、1種類の粉で仕込んでもいいのかも知れませんが、うちの場合は、シンプルなパンでどうやって香りや味わいを出すかを基準に粉を選んでいるので、それらの配合を、そのまま高配合のパンにも流用しているんです。 しかし、高配合のパンでも粉から来る香りや味わいの違いは、私自身は当然わかるし、舌の肥えている人だったら同じようにわかるんじゃないかと思っているんです。例えばうちの商品の「ミルクロール」なんかも、1種類の粉で仕込んだときとは明らかに味わいが違ってきます。 製粉会社は、製パン性のいい粉だけを作っているわけではありません。製パン性よりも香りや味わいを重視して開発された粉もたくさんありますから、それらを最大限に利用したらいいと思いますね。 |


| 誰に情報発信をするかを考える | |
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―――そうした情報発信は具体的にどんなふうにやっていかれますか。
小倉 誰に向かって情報を発信するかということですね。立川のムッシュイワンの周りの大きなスーパー内に立て続けにインストアベーカリーができて、それらがなかったときは、そのスーパーから流れて来たお客様が、ぴたっと来なくなってしまいました。そうしたお客様を呼び戻そうと、ドーナツなんかを作ったりして、半年ぐらいもがいたのですが、今はもう止めました。ムッシュイワンは、価格だけでパンを選ぶ人たちではなく、パン自体に価値を見出してくれる人たちのためにあるべきだということに改めて気付きました。そういうお客様だけが来てくれればいいと思ったんですね。だから、そういう人たちに向けての情報発信をしていかなければなりません。 あとは、やはり続けることが大事だとつくづく思っています。強い店を見ていると、様々なイベントを開いたりして、お客様に興味を持ってもらう努力を、継続的にしています。また、フェイスブックやブログなんかもフル活用して、情報発信も継続的に行っているんですね。これからは、商品力があることを前提として、さらに情報を発信する力を磨いていかないと、生き残っていけません。 ベーカリーは、最初にオープンしたときは、お客様は興味本位でたくさん来てくれます。しかし、何もしなければ時間とともにお客様の数は減っていきます。だから、また来てもらえるように、さらには、1回も来たことがないお客様にも来てもらえるように、いろいろなイベントをやったりして、情報発信をし続けなくてはならないんです。興味を持ってもらえなければ来店してもらえませんから、呼び込みじゃないですけれど、興味を持ってもらうための仕掛けが、継続的に必要になってくるんです。繁盛している店は、そのことに長けているんだと思います。だから繁盛の要素はパンの味だけじゃないんですね。うちの今後の課題は、その部分をどうやってさらに追求していくかということなんです。 |

| 売員には時間的な余裕を与える | |
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―――販売についてはどうですか。
小倉 販売のエキスパート的人材を2人確保していて、そのスタッフたちを核に販売力を強化していきたいですね。当たり前のことですが、店のファンを増やさなければなりません。店舗での顧客の掘り起こしは、もう一度改めて戦略的に行っていかなくてはならないと考えています。そのためにはパンの知識が豊富で販売力のあるスタッフに定着してもらわなくてはなりません。デパートの催事にも力を入れていますが、これは、ただパンをそこで販売するだけではなく、店の宣伝をする絶好の機会なので、きちっとしたセールストークができる販売のエキスパートが必要になってきます。ポイントカードなど様々な販促のツールはありますが、やっぱり販売員が自分の言葉でお客様に語りかけるのが一番の販促だと思います。写真や文字で伝えるポップも当然大事ですが、それ以上に販売員のトークが重要なんです。 だから、能力のある販売員には、自由にお客様と接することができる時間的な余裕を与えてやらないといけないと思っています。例え1人のお客さんと20〜30分話していたとしてもいいと思うんですよ。 丁寧な接客をすることで、1日1人とは言わなくても、月に10人でもお店のファンが増えてくれれば、十分ですから。つまりは、そうやって地道にファンを増やしていくのが最善の方法だということなんです。(写真はすべて「ポラリスよみうりランド店」で撮影しました) |
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