■特集■憂鬱な夏を実りの夏に変える - ブランスリー電子版

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特集/2012年6月号

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■特集■憂鬱な夏を実りの夏に変える

夏の間1回でも来店してもらえれば、秋になったときにまた来てくれるようになる-オリミネベーカーズ



夏限定商品に、存在感を求める
ジェラートを、ブリオッシュ風のリッチな菓子パン生地でサンドした「ジェラートサンド」
オリミネベーカーズのチーフ田中進一さん
奥行きのある店内。売り場は3人ほど入ればいっぱいだ
築地市場からほど近いオリミネベーカーズ。間口が引き戸2枚分の小さな店舗だ
 東京・中央区の「オリミネベーカーズ」の店頭で目に付くのは、築地市場に近い場所柄を感じさせる「イイダコ」(280円)や「鯖サンド」(480円)、「しらす」(280円)など、魚介類を使った商品。「イイダコ」は、イイダコが丸ごとフォカッチャ生地にのった大胆な製品だ。「鯖サンド」の鯖の切り身は厚く、「しらす」のしらすのトッピングはたっぷりの量。市場と同様の威勢の良さが感じられる。
 魚介類の塩気がきいたパンは、夏場の暑い時期でも比較的食欲をそそる製品だ。しかし、こうした製品が揃う同店でも、夏場の客足低下は避けられないという。
 昨年の夏は、「ジェラートサンド」なるものを売り出した。果実の割合が6〜7割を占めるジェラートを、ブリオッシュ風のリッチな菓子パン生地でサンドした商品だ。
 「ジェラートは高品質なものを選びました。フランスで製造しているものなのですが、発売当初は日本では当店以外に扱っている店がないと言われていた話題性のあるジェラートです」(チーフの田中進一さん)
 価格は400円と、同店のほかのアイテムより高めの設定だ。
 「数を多く売るつもりはありませんでした。予想通り、多いときでも1日10個くらいです。客足の減る夏場、お客様によっては1回も来店しなくなってしまうかもしれません。そんな夏でも、おいしくて話題性のある製品があることが、来店の動機になります。毎日来てくれなくても、夏の間たった1回でも2回でもいいんです。1回でも来ていただければ、当店の存在を忘れないでもらえると思うんです。秋になったとき、また戻ってきてくれますから」(田中さん)
 「ジェラートサンド」の販売は、速効性を狙うというよりも、1つ先の季節を見越して行ったのだ。
 「ジェラートサンド」に使うジェラートの種類はおよそ5種類。チョコレート、マンゴー、ピーチ、バジル、バニラなどだ。この中から2種類を小さめのディッシャーですくい、斜めに切り込みを入れたパンにサンドする。溶けるのが早いので、購入した客のほとんどが、食べながら店を後にする。土産用としては販売しない。同製品専用の包材ではなく、バーガーやサンドなどに使う包み紙を兼用した。
 「夏限定の商品のためだけにかける手間と占有するスペースを、できるだけ少なくすることも大事だと思います」(田中さん)
 田中さんは、同店のチーフを務める前は個人店と大手チェーン店に勤務していた経験がある。
 「どこの店でも夏場は売上げが落ちます。カキ氷やアイスクリームを販売して集客してもいいかもしれませんが、機材を設置するスペースがありませんし、やはりベーカリーとしてはパンを販売していきたいですね。『ジェラートサンド』は今年も販売する予定です。ジェラートは昨年使った味以外にもマスタードなど面白いものもあります。ラインナップを入れ替えて、また少しずつ販売していきたいと思っています」
 1日に売れる個数が少なく、また、客1人が1個しか買わないとしても、「ジェラートサンド」の確かな存在感が、同店の人気を支えている。



アンケート実施後スタッフの自信が生まれた
イイダコがまるごとのった「イイダコ」(280円)。イタリアンのプッタネスカ風に、ケーパー、オリーブ、アンチョビなどで味付け
白生地に厚みのある焼き鯖をサンドした「鯖サンド」(480円)は、レモンの輪切りを添える
 同店の開業は昨年の春。スタッフは現在10人で、そのほとんどが製造と販売の両方をこなしている。夏の時期は、「ジェラートサンド」のオーダーが入ると、厨房にいるスタッフが作業中の手を止め、ジェラートサンドを作った。チームワークの良さが重要だ。
 「開業してから1年以上経って、スタッフ全員が落ち着いて作業出来るようになってきました。最初は皆、それぞれ不安があったと思いますから」と田中さん。
 昨年の夏は、開業後まだ3、4カ月しか経っていなかった頃だ。そんなとき、繁忙期にはなかなかできない記入式のアンケートを実施。これがスタッフの体制が整うきっかけとなった。アンケートの内容は、好きなパンをいくつかあげてもらい、あとは自由に意見を書いてもらうという簡単なもの。
 「一番多かったのは、『おいしい』という声でした。それが、スタッフたちの、開業後間もないときの不安な気持ちを一掃してくれたと思います。それぞれが、自信を持って仕事に打ち込めるようになりました」



夏に活躍しそうな宅配サービス

 極寒と言われた今年の冬に、これから来る夏にも活躍できそうな、新たなサービスを始めた。宅配サービスだ。計画段階では200円の手間賃を考えたが、購入額が1000円以上であれば、無料で配達することとした。担当するスタッフは当番制。自転車に積んで配達する。

ShopData
店名 オリミネベーカーズ
住所 東京都中央区築地7丁目10‐11
電話 03‐6228‐4555
営業時間 午前7時〜午後7時30分
定休日 水曜日
品目数 約50品目
店舗面積 厨房約6坪、売り場約5坪
スタッフ 10人
日商 25万円



夏向けのアイテムは、「冷たい」「やわらかい」「さっぱり」の3要素が重要-マクロビーナスとパン焼き人

夏向けのアイテムこそしっかりと作り込む
「マクロビサバラン」(220円)。「豆乳ブレッド」の生地で作ったパンを、甜菜糖とラム酒、ブランデーで作ったシロップで煮た後、豆乳が原料のクリームを絞る
「キャロブ入りマクロビ蒸しパン」は、蒸気をたっぷり入れて高温短時間で焼成するのがポイント。冷やしてもふんわりとした食感を保持できる
 東京・世田谷区のベーカリーカフェ「マクロビーナスとパン焼き人」で、暑さを感じる5月頃から販売を開始するのは、冷たく冷やした蒸しパンやサバランだ。
 開発した同店の安井定義シェフは「『冷たい』『やわらかい』『さっぱり』という3つの要素が、夏のアイテムには重要です。生地は、冷やしてもかたくならないように作り、クリームは、ねっとりしたものよりも、レモンなど柑橘系の果物を合わせたあっさりとした味のものの方がいいですね」と言う。
 「キャロブ入りマクロビ蒸しパン」(160円)と「マクロビサバラン」(220円)は、カフェスペースとパン売り場の間に置かれた冷蔵ケースに並ぶ。両製品とも、ひんやりとしていて、しっとりとした口当たりで、のど越しも良い。
 「夏の売り上げは3〜4割落ちてしまうのが当たり前ですが、少なくともそれを2割くらいまでに抑えられればいいと思っています。また、夏向け商品こそ、安易に開発せず、しっかりと作り込んでいくことが大事です」(安井さん)  

原価計算女王
原価計算女王
季節ごとに体に良い食事を学べる店
「マクロビーナスとパン焼き人」のオーナーシェフ、高橋ミナさん。メニュー開発に、野菜ソムリエの知識を活かす
夏向け商品の「キャロブ入りマクロビ蒸しパン」と「マクロビサバラン」は、店内中央に設置された冷蔵ケースに入っている
 「さっき食べた人参が売ってるよ」。
 同店のパン売り場の横には、「千葉の有機野菜」と書かれた、葉付きの新鮮な人参が並ぶ。ランチメニューの「有機温野菜サラダ&パンの盛り合わせ」を食べ終えた女性客は人参を手に取り、一緒に来ていた女性の友人に見せた。女性客らはパンと一緒に葉付きの人参を購入していった。
 「キュウリでもナスでも、今は1年中手に入りますが、そういったものでもやはり旬の一番おいしい時期というのがあります」
 こう話す高橋ミナオーナーシェフは、1カ月ごとにランチメニューを変えている。野菜の旬のおいしさを提供するためだ。同店の客は女性が大半を占め、特に多いのは40〜60代の主婦。こうした客にとって同店のランチを食べることは、野菜の旬や食べ方を知るいい機会となっているようだ。
 「今の時期、新ジャガはほっくりしておいしいですね。他にも、ウドは食感がいいし、ソラマメ、インゲンなども甘味があっておいしいですね」(高橋オーナーシェフ)
 野菜ソムリエでもある高橋オーナーシェフはその知識を活用。仕入れ可能な野菜の中から旬のものだけを選び出し、それらを使ったランチメニューを毎月4パターン用意する。季節野菜のスープやサラダにパンの盛り合わせが付いたセット、そしてサンドイッチなどだ。
 「サンドイッチのレシピ開発がいつも苦戦します」(高橋オーナーシェフ)
 サンドイッチに使う野菜は、定番のキュウリやレタスに頼らず、旬のものを活用しなければならない。今回の場合はウドやインゲンなど。これらはサンドイッチの素材としては珍しい食材だ。
 「使う野菜自体が、サンドイッチの具としては珍しいものなので、野菜の味付けは、斬新過ぎず、ある程度馴染みがある味に仕上げています」
 高橋オーナーシェフが野菜の旬にこだわるのには、おいしさ以外にもう一つ理由がある。「栄養を考えてというよりも、実際に食べた後、体がどうなるかということを大事にしています。暑いときに夏野菜を食べれば、涼しく感じます。夏野菜が体の熱を冷ましてくれるからです」

ShopData
店名 マクロビーナスとパン焼き人
住所 東京都世田谷区代田1‐35‐13
電話 03‐3421‐9399
営業時間 午前10時〜午後6時30分
定休日 火曜日(月曜不定休)
品目数 約45品目
店舗面積 厨房22坪、売り場18坪
スタッフ 製造2人、販売とカフェ2人
日商 4〜10万円強



恒例の夏限定商品は「アイスパン」。薄く焼いたデニッシュでアイスをサンドし、手渡しで提供-ラ・パレット古川店

毎年夏祭りを開催。夏限定の野菜ジュースも
ラ・パレット古川店
 宮城県大崎市のベーカリー「ラ・パレット古川店」は、地域の子どもたちが夏休みに入る頃に恒例の夏祭りを2日間開催する予定だ。綿あめや焼きそばの屋台を出したり、くじ引きを行なうことなどが恒例となっている。
 焼きそばの屋台は、同店で販売している「焼きそばパン」(168円)で使用している焼きそばの地元の製造会社が協力。また、今年は地元農家が栽培した野菜の販売も行う予定だ。
 夏祭りとは別に、夏期の限定メニューとして毎年恒例なのは、自家製ジュース。地元農家が栽培したイチゴやブルーベリーなどを仕入れ、冷凍保存して夏のために用意しておく。280円と手頃な価格に設定。ついで買いを促すため、サンドイッチなどの横に、自家製ジュースのPOPを貼る。
 3年前から夏限定メニューの定番となっているのは、「アイスパン」(180円)で特に子どもに人気がある。焼成後冷凍しておいた薄めのデニッシュで、アイスをサンドし、手渡しで提供する。アイスの種類はチョコ、バニラ、キャラメル、クッキー&ナッツなど。購入客は買ったその場で、バーガーを食べるように、かぶりつくようにして食べる。多いときは1日30個ほど売れるという。

夏に限らず年4回イベントを開き、新商品を紹介

 ラ・パレット古川店では、季節ごとのイベントを年に4回行うのが恒例となっている。ゴールデンウィーク期間中は、オープン7周年を記念して「感謝祭」を開催した。
 「感謝祭などのイベントは、新規客の獲得に効果があります。一方で、常連のお客様には、当店の新商品をお知らせするいい機会となります」(高橋賢哉店長)
 昨年は震災の影響で中止したが、今年は2万部の折り込み広告をまいた。顧客に改めて知らせるためと、新規客の獲得のためだ。2日間の合計で、通常の来店客数に約250人を上乗せすることができた。
 「今年の連休は遠出される方が多かったことを考慮すると、まずまずの集客だったと思います」(高橋店長)
 感謝祭では、売上げが好調なサンドイッチを18種類用意した。18種類は、通常販売している18種類から選んだ15種類と、これから売り出しいく新商品の3種類だ。気軽に試してもらうため、10%値引きして販売。また、新サービスの紹介もした。これまでコーヒーはホットコーヒーのみを無料で提供していたが、アイスコーヒーも揃えた。アイスコーヒーは無料でなく、280円で販売。パン購入客には100円引きの180円だ。無料にしなかったのは、食べものに対する価値観が、震災後に変わったからだという。
「タダで提供してしまうと、食べ物のありがたみが薄れてしまわないかという疑問が提供する側にもされる側にも芽生えたように感じます。100円いただくのですから、上質なものにこだわっています」

ShopData
店名 ラ・パレット古川店
住所 宮城県大崎市古川李埣1‐13‐31
電話 0229‐24‐8010
営業時間 午前9時30分〜午後7時
定休日 なし
品目数 パン100品目
店舗面積 厨房27坪、売り場38坪
スタッフ 製造10人、販売9人
日商 50万円


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