ベーカリー店舗の販売促進、そのヒントは? - 高橋秀尚 - ブランスリー電子版

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海外情報(26)/2003年3月号

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ベーカリー店舗の販売促進、そのヒントは? - 高橋秀尚

高橋秀尚 (株)パンワールド代表取締役
海外情報研究会主宰

ローカルベーカリーチェーンが好調、販売促進は、遠大なテーマ

 今月は趣向を変えて、いささかハードな内容に触れてみたい。
 どのような商品を売るにせよ、店作りの重要性は当然である。
 昔は商品の出来がよければ苦労することなく売れたのだろうが、最近は様子が変化してきた。
 ある統計によると「お客がその店で買いたいのは何か?」という質問に対する答えは、商品が65%、そこで買い物ができるという利便性が25%、そしてその店で買い物をした時に得られた満足度が10%であった。
これらを最近の用語でまとめれば「顧客満足」と言うが、その満足度の内容が変化してきている事に注目したい。

CVSの効果的な店内レイアウト
パン作りの名人、必ずしも商売上手とはいえないのは、よく聞く話である。それではマーケティングという研究分野の先駆であるアメリカでは、いったいどのようにして繁盛店を作ろうとしているのだろうか?
筆者がここ十数年間に現地で見てきた数多くのスーパーマーケット店舗を例にとると、その変化には驚くばかりである。多くの独創的なアイデアを取り入れ、店の販売促進と、買い物客に楽しいショッピングのチャンスを与える両面効果をあげている。
それでは最も効果的な店舗開発は、どのように行われているのだろうか? 一例としてコンビニエンス・ストア(CVS)の場合を簡単に紹介しよう。図1のレイアウトを見ると、まず最初に店舗スペースのどこに、どのような商品群を配置するかを考えていることがわかる。つまりCVSといえども商圏や顧客層によって異なる商品開発・構成が必要となることがわかる。
この設計例の場合は、ベーカリー商品群の売り場を店舗の奥手中央部に配置する客導線を考えていることがわかる。さらに、この売り場の商品棚を垂直に見た場合の商品配置を図2により見てみよう。商品は大別して、ブレッド類、ロール・ベーグル・スィートスナック類などであるが、陳列棚の上下、左右を考えて商品を置く。ほとんどの場合は、最下の棚にはPL(プライベート・レーベル)、自社ブランドのブレッド類を置く。アメリカのロール形ブレッドは、ほとんどが1・5ポンド(680グラム)であるが、サイド面を前に揃えて陳列される。
セルフサービス方式をとるCVSの場合でも最近は店作りに一工夫する事が求められている。新しい変化として例えば50代以上の年齢層(シニア)には価格表示の文字を大きくして読みやすくするとか、女性の顧客層には栄養表示の商品説明を加えるなどの試みがされるようになった。ちなみにアメリカのCVSにおける顧客層で伸びてきているものを調べてみた。
(1)既婚女性・子持ち150%
(2)独身女性…………147%
(3)50代以上の男性141%
(4)ブルー・カラー……140%
この調査資料では今までCVSでの買い物にあまり縁のなかった人達が新しい客層として増えていることがわかる。

ベーカリー・カフェなど複合業態の台頭
さてリテールベーカリーに目を転じてみよう。まず店作りを考える前に重要なのは複合業態の台頭である。最も著しく伸びているのはBCと略称されるベーカリー・カフェである。日本でもお馴染みの「スターバックス」はアメリカ本国では今なお元気で、全米に展開している。最近さらに注目されるのはローカル市場で頑張っているチェーンで、パンは店頭でスクラッチ製造しているものもある。例えば最近になって大手ドーナツ・チェーンである「クリスピー・クレーム」にブレッド類の商品開発力を買われて買収された「モンタナ・ミルズ」の場合は、ユニークなブレッド類の商品開発力が評価されたのであろう。その内容を示す。
クラシック ブレッド
▼アップル・レーズン
▼シナモン・レーズン
▼カントリー・イタリアン
▼マルチグレイン・ホールホイート
▼ハニー・ホールホイート
▼ニューヨーク・ライ
▼サンフランシスコ・サワドー
▼サンフラワー・ミレー
スペシャルティ ブレッド
▼アナダマ
▼ババリアン・ライ
▼アップル・レーズン・ハラ
▼アプリコット・アーモンド
▼ブルーベリー・コブラー
▼ブルーベリー・コーン
▼チェリー・チーズ
▼クランベリー・オレンジ
▼フォッカチア
▼ガーリック・チェダー
▼シュトーレン
▼ホット・クロス
▼アイリッシュ・ソーダ
▼ホリデイ・フルーツ
▼ハラペーニョ・チェダーコーン
▼メープル・レーズン
▼ポテト・チェダー・カイヴ
▼ソィ・バースト
▼フルーツ・ハラ
▼モンタナ・ハーベスト
▼プンパーニッケル
▼スピナーチ・フェタ
▼サンドライ・トマト・バジル
▼ベネチアン・ピザ
▼ペパロニ・チーズ
▼ローズマリー・オリーブ・サワドー
▼ワイルドオート・ポピーシード
なお前述の「クリスピー・クレーム」チェーンの日本市場進出は間近と見られるが、マクドナルド社との提携もあり得るとされている。このような外資系チェーンの日本進出も加速されると思われる。

ブロイチェン・ベレクテで利益率が向上
さてヨーロッパの食市場を見ると、EU統合後、さらに各国間の交流が激しい。ドイツではインビスという立食が出来るベーカリー店舗が数多く作られている。その設計例を図3で紹介するが、作者は筆者の親しいドイツの店舗デザイナーである。日本のリテールベーカリーとは、商品を入れるショーケースをはさんで、お客と販売員が会話と商品の受け渡しを行う、いわゆる「対面会話販売」方式の採用、カーブを描いてデザインされたショーケース、そして前述のインビス・テーブルの採用などが異なる。インビス・テーブルは通常は丸形で直径は90センチ、高さは140センチが標準である。
ドイツにおける代表的な朝食用のパンは、ブロイチェンと呼ばれる小型ロールパンであるが、朝の7時に開店するベーカリーは10時頃にはブロイチェンの売れ残りが出ることも多い。本来は捨てるしかなかった売れ残りの商品にハム・チーズ・サーモンなどをフィリングしたものがブロイチェン・ベレクテ(サンドイッチ)で、ここ数年は昼食アイテムとして人気である。ブロイチェン自体はどの店でも大きさや価格がほぼ一定しているので価格差をつけることができない。ところがいったんサンドイッチにすれば、フィリングの違いで価格や商品価値に差をつけられるので利益率も上げることが出来る。ブロイチェンの価値を1、フィリングの価値を1として合計で2になるところが、附加価値の1が加わって合計で3になる、という論法である。

商品を斜めに陳列する新しい陳列棚
最後に最も新しいベーカリー商品の陳列棚(図4)を紹介する。これはアメリカで設計されたもので、スーパーマーケットのインストアベーカリーで多用されている。しかし店舗が比較的大きいリテールベーカリーでも使っている店が多い。その特徴は、商品を斜めに陳列することで、顧客の視線を多く集めることが出来る、垂直、または水平陳列と比較して、斜めであるために柔らかい雰囲気が出ると言われている。木目を生かした上品な作りも魅力である。
販売促進とは遠大なテーマであり、たやすく達成できるものではない。ここで述べたのは筆者が現場で見聞したごく一部の紹介に過ぎないが、すこしでも参考になればと思う。









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