特集■ITによる販促■ - ブランスリー電子版

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特集/2012年4月号

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特集■ITによる販促■

 メルマガや、ブログ、ツイッター、フェイスブックなど、インターネット上のツールを活用した販売促進を行なうベーカリーが増えてきた。埼玉県狭山市の「パン工房 サンセリテ」では、メルマガを利用した様々な告知を常連客に対して行い、大きな手応えを得ている。千葉県松戸市のツオップでは、ブログやツイッター、フェイスブックといったウェブ上のコミュニケーションツールをフル活用し、様々な形で店の運営に役立てている。



メルマガによる販促企画を次々と-パン工房 サンセリテ
スマートフォンに届いたメルマガ。配信頻度や、テキストと画像のデータ容量などは、メールを受ける側の立場に立って慎重に考える
新規登録者には、「食パン」(258円)か、「ラウンド(ハーフ)」(250円)がプレゼントされる
メルマガ会員募集のチラシは、入り口横に置き、自由に取れるようにしている。開始直後は来店客全員に配布していた
「パン工房 サンセリテ」は西武新宿線狭山市駅からバスで約6分ほどの立地。周囲には年配層の多い団地が立ち並ぶ
配信のタイミングも慎重に
 「メルマガ会員限定で、新商品の試食ができる『試食デー』を企画しています」。埼玉県狭山市の繁盛店「パン工房 サンセリテ」の高田知明社長は、同店の顧客向けに携帯電話のメールマガジン(メルマガ)の配信を行っている。開始して1年。売上げアップにメルマガはかなり効果があると手応えを感じ、メルマガを活用した販促企画を次々と考え出している。
 現在約2800人いる同店のメルマガ会員に対し、「面倒とか、しつこいとか思われない程度」(高田社長)のひと月に2〜3回程度、メルマガを配信している。内容は、イベント開催の告知などがメイン。配信するタイミングは、開催予定日の数日前。商品をPRする場合は、焼き上がり時刻が11時なら、その1時間前の10時頃。頻度だけでなくタイミングも見計らうことが重要だ。
 メルマガ配信を行う飲食店が珍しくなくなってきた中、売り出しやイベントの告知を、新聞の折り込みやポスティングなどでこれまで行ってきた高田社長は、メルマガ配信が低コストで済む点に目を付けた。
 今まで、同店の商圏範囲、狭山市内全体の約3万世帯へのポスティング広告には、1回20万円近くコストをかけていた。現在は、ある大手業者のメルマガ配信サービスを、月々5000円の費用で利用。用意した商品画像とテキストを、メルマガ配信サービスのシステムに入力すれば、会員全員に一斉に、指定した時間に配信することができる。配信頻度も多くないので、手間もそれほどかからないという。

優越感を提供できる内容
 始めて間もなく、かなりの効果を実感することとなった。そのとき配信したメルマガの内容は、節分のイベント告知。
 同イベントの内容は、2月の節分に合わせ、食パンで、だし巻き卵、ハム、キュウリ、カニサラダなどをくるみ、のりを巻いた『恵方巻き』を1日100本、2日間限定販売するというもの。イベント初日は、電話予約だけで100本が売り切れた。2日目は、当初の販売予定数に100本追加して200本を作り、すべて完売した。
 「値引きをしていた訳ではなかっただけに、ここまでの反応があるとは思いませんでした」
 こうした節分や、ヴァレンタインデーなどの大きな行事以外に、アーモンドの日や明太子の日などの記念日も利用する。
 「一度退会したら再登録はなかなかしてくれないですし、新商品の紹介だけとか、セール情報だけとかだと、面白みに欠けて読んでくれなくなってしまうと思います。例えば、『明太ふらんす』(280円)のPRに関しては、明太子の日に、商品の紹介だけでなく、明太子の効能も加えました。『面白い』と返信してくれる人もいたので、このような内容にすると反応がいいと思います」
 新商品と同じく、リニューアル商品に関しても、メルマガで伝えるためには一工夫が必要。チョコレートをふんだんに使ったデニッシュ「クアトロ・ショコラ」(220円)のバージョンアップは、ヴァレンタインデーのタイミングに合わせてメルマガを配信した。
 「メルマガの内容は、面白さだけでなく、会員だけが知っているというような、特別感を出すことも大事です。文面は、店頭で対応するときよりも、少しくだけた感じをイメージするといいと思います」
 新商品の情報を流す際なら、「お客様に新商品をご紹介します」ではなく、「お客様」の部分には客1人ひとりの名前を入れた文章にして、さらに「ご紹介します」は、「教えちゃいます」というような表現にする。「会員だけに、こっそり、教えます」という、内緒話のようなニュアンスを出すといいという。
 「会員になってくれたお客様は、ただ単に、得する情報が欲しいというよりも、当店の常連客だという認識を持ちたいという気持ちの方が大きいのだと思います。『一見様ではないんだ』と思ってもらうということです。値引き情報だけを掲載して配信したことは、これまでに1度だけあり、そのときは、安さを求めて押し寄せるように多くの方が来店してくれましたが、これを続けると店全体の印象が下がると思いました」
 常連客だからこそ知り得る情報を配信することで、一見様とは一線を画す優越感を提供することへと繋がるのだ。常連客は、その優越感によって、ますます店に親近感を抱くこととなり、結果的に店に対する印象も上がっていく。
 昨年、震災後の不測の事態にも、メルマガは機能した。材料不足や計画停電で十分な数のパンを作れず、閉店時間前に商品が売り切れてしまったときでも、「本日は午後2時に売り切れそうです」と事前に告知し、来店したときの混乱を防いだ。店としても、急な対応をしなくても済んだ。




1月10日の明太子の日にメルマガでPRした「明太ふらんす」(280円)
従来品の「トリプル・ショコラ」からバージョンアップした「クアトロ・ショコラ」(220円)。メルマガでバージョンアップの内容を伝えた
大きめのPOPによって、商品一つひとつの特徴が一目でわかる
会員数を確実に増やしていく
 現在は、会員数を増やすことを課題とし、新しい取り組みを始めた。「紹介制度」だ。既存会員が自身の知人に同店のメルマガを紹介し、紹介を受けた知人が新規会員になると、紹介した既存会員は、同店のパンの景品がもらえるという制度。
 「最初に登録してくれた方は、ファストフードなど、ほかの飲食店などでメルマガに慣れている人だと思います。ですので、始めて1カ月で一気に1000人に到達しました。それ以後の伸びは、メルマガの存在が広まっている割には少ない状態です。紹介制度は、メルマガの存在をすでに知っていて見入会のお客様に対する、入会を促すきっかけづくりです」
 また、特に年配客の中には、携帯電話での登録作業がうまくできない人も多いという。そこで、高田社長はうまくいかなかったときの対処方法を記載したメールを、携帯端末の種類別に作成した。そのメールを、登録作業で失敗した時点ですぐに送り、新規会員の取りこぼしがないよう努めている。
 メルマガは、内容だけでなく、送るタイミングまで自由自在。これらの点を武器にすれば、客一人ひとりに対してきめ細かな対応が可能になる。新しい販促ツールとして、慎重に使っていきたい。

ShopData
店名 パン工房 サンセリテ
住所 埼玉県狭山市狭山台3‐11‐2
電話番号 04‐2957‐8934
営業時間 午前7時〜午後7時
定休日 水曜日
品目数 90品目
店舗面積 売り場12坪、厨房30坪
スタッフ 製造常時6人、販売常時3人
日商 約50万円




自分で自分のことを正確に伝えたい-ツオップ
2階の厨房奥の事務所には、伊原社長と、りえさんの2台のパソコンがあり、売上げ管理からブログ更新まで、すぐに行える環境が整っている
陳列棚には様々なパンが所狭しと並ぶ
取材日は雪が積もり冷え込んだが、店内は常に賑わっていた
店内は照明を落として、パンにライトを当てて浮かび上がらせる演出
伊原靖友社長
メルマガを従業員に配信
 2000年の開業当初、電子掲示板(BBS)とホームページを自分で作成したという、ベーカリー「ツオップ」の伊原靖友社長。そして現在、ブログ、メールマガジン(メルマガ)、ツイッター、フェイスブックと、次々と登場するインターネット上のサービスを、排することなくとり入れ、店の営業に活かす。
 メルマガといえば、店から客への情報発信ツール。しかし同店では、メールの件名を「社内メルマガ」とし、従業員が情報を共有するためのツールとして活用している。主な発信主は、妻で事務など雑務に携わる伊原りえさん。
 「お客様が忘れ物をしたときや、お釣りを間違えて渡してしまったときなど、店での出来事をその都度配信します。該当するお客様が、いついらしても、困惑することなく対応できるように、その場にいない人も含め、スタッフ全員で情報を共有しておけます」(りえさん)
 スタッフはパートを合わせて総勢約40人。そのうち、常時24〜26人が交代で年中無休営業の同店を支えている。したがって、40人全員が一斉に顔を合わせることがなく、情報の共有が難しい。そのため、休みの従業員も含めて、その都度全員に伝えることのできるメルマガは、円滑な営業をしていくために、今では欠かせないツールとなっているという。
 配信頻度は多いときで1日に5〜6通になるときもある。内容は、客とのやり取りなどの連絡事項や、りえさんが、「ここは正すべき」と、営業中に気付いた注意事項など。しかし、それだけではない。
 「今日はパン屋の成功の秘訣をお話ししましょう」「2012年のZOPFの目標です」などという書き出しで始まる、文字数が1000に及ぶ長文のものもある。客に対してのメルマガが販促ツールならば、「社内メルマガ」は、従業員の志気を高めるための役割を果たしている。
 「中には、何度も読み返しているなと思わせるような成長をするスタッフもいます。『この前のメールをまた、全員に送信してください』と従業員から言われることもあります」(りえさん)
 口頭での言葉は一瞬で過ぎてしまうが、読み返すことのできるメールなら、自分なりのペースで理解に努めることができる。そのため、従業員の着実な成長を期待できる。

ツオップの公式ブログでは、季節商品などを紹介
「プチあんぱん(桜)」(70円)は、季節商品。公式ブログで「待ち遠しかった春がそこまでやって来ましたね。ワクワクしてしまう『桜あんパン』の登場です!真ん中の桜の塩漬けが きりりと利いて、香り高い春の味がいっぱいです」と紹介
2階のカフェで提供している「ゆっくり朝食」(1600円)。ツオップのカフェのメニューは、ネット上の個人のブログや、グルメサイトなどで常に話題となっている。カフェは2カ月先まで予約でいっぱい。予約はネットではなく、電話で受けている
人となりを知りたがる客が多い
 客宛てのメルマガも、5年ほど前から行っているが、先行して開始したブログの方が、客の反応はいいという。同店のメルマガとブログの読者は、北海道から沖縄まで全国にいる。仮に、イベントなどの告知をしても、遠方の客には効果が薄い。
 「読者の方は、店自体に興味を持ってくれていて、どんな風に作っているのか、作り手の側にまわって見てみたいという思いがあるようです。それだけでなく、『今日はクリームパンをこんなに焦がしてしまいました』とか、『子どもがインフルエンザになってしまいました』とか、題するなら『工場で起きた、あれこれ』というような話にも興味を持ってくれています。商品情報というよりはむしろ、店の内情の部分を知りたがっているようです」(伊原社長)
 ブログは、店としての公式なものと、りえさんが個人で行っている、店としては非公式のものの2つがあり、内容によって使い分けている。メディアに取り上げられたことや、季節商品などは公式ブログ、メディアの取材の裏話などは、りえさん個人のブログに掲載する。
 「ブログは、自分で自由に書ける点が、面白さであると同時に、最も気をつけなければいけないところだと思います。公式より自由度が高いのが非公式です。例えば、取材を受けたときなら、実際掲載になった内容のほかに、実はこんな面白い話があったというようなことや、お店の営業には直接関係ないけれど、スタッフや家族の話などは、非公式ブログに掲載します。これこそ読みたいことだと喜んでくれる読者がいる一方で、興味を持たない人もいます。また、公式ブログでは、パンという食品を扱っているので、動物や昆虫などの話は極力避けた方がいいようです」
 ブログを始めた約7年前は、前例が少なく手探り状態。さらにさかのぼると開業1年後からBBS(電子掲示板)も運営していた。BBS、ブログともに初期の頃は、批判する内容のメールが届くこともあった。しかし、公式と非公式の2つを使い分けるようになってから、そのような問題はなくなった。顧客を意識した公式ブログに対して、非公式は「私の勝手な発言です」という姿勢で書いているという。「店からの告知がメインの公式よりも、人となりが見えてくる非公式の方が、読者数は多く人気がある」(伊原社長)という。

自分からアピールする
 非公式のブログと同様の感覚で、伊原社長が行っているのが、ツイッターとフェイスブック。店名や個人名は公開しているが、店の代表としてではなく、1人のパン職人として利用している。「ツイッターは、反応を期待しないただの自己発散の場とし、フェイスブックは相手からの返信など反応を楽しむもの」(伊原社長)として使い分けているが、どちらにおいても、交流しているのは同業のプロたちだ。パン職人と限らず、世界各地のあらゆる飲食店のシェフが多いという。
 「店の営業に直接結びつくとは言えないまでも、世間並みに、話題の交流サイトと繋がっているということは大事だと思います。たくさんの情報を手にしているお客さんが、その中から自分の店を選んでくれることを考えると、こうしたサイトを通して、常に情報発信をしておくことは重要だと思っています」
 さらに、店について、事実と違った曲がった捉え方をされることを防ぐのにも有効だという。
 「これだけ情報が飛び交っている世の中で、自分からアピールしていかなければ、間違った解釈をされる可能性があります。宣伝に繋げるというよりも、まずは、自分で自店のことを正確に伝えていきたいということですね」
 日々、真面目に営業しているのに、事実がうまく伝わらず、誤解されてしまうことほど、残念に思うことはないそうだ。
 「小さい店にも、大手でいうところの販売促進部がないといけないんです。作るだけとか、売るだけとか、それだけではなくて、営業していくためには、もっと多くの歯車が必要です。メルマガも歯車の一つだと思います。そしてすべての歯車が同じ力でまわらなければ、前に進めないんです」


ShopData
店名 ツオップ
住所 千葉県松戸市小金原2-14-3
電話番号 047‐343‐3003
営業時間 販売は午前6時半から午後6時、カフェは午前7時から午後5時半(ラストオーダーは5時)
定休日 なし(カフェは水曜日)
品目数 90品目
店舗面積 敷地面積50坪、売り場6坪、厨房15坪、作業場3坪、倉庫3坪、2階はカフェ10坪、厨房6坪、事務所3坪
スタッフ 製造14人、販売7人、カフェ10人
日商 平日80万円、休日110万円

原価計算女王
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