特集■販促の秘訣教えてください■ - ブランスリー電子版

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特集/2012年3月号

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特集■販促の秘訣教えてください■




POP作りから組み立てる‐トツゼン・ベーカーズキッチン
3人グループの女性客らは、入店してすぐにPOPの文字を見て、パンを手に取った
 筆文字で書かれた「文句ナシのONLY1」。神奈川県横浜市のベーカリー「トツゼン ベーカーズ キッチン」で売れ筋の「明太フランス」のPOPだ。「他店とは違う」「更においしくなりました」など、買わずにいられなくなるようなコピーが踊る。同店を経営するわらうかど社長の岸本拓也氏は「POPはパンを買うときに必ず目を通します。お客様とPOPは対話をしています」とPOPの重要性を説く。同店は、店の個性を生かした販売方法を、POPづくりから組み立てていく。



客と対話するPOPが購入か否かを決める
「朝月間」と筆文字で書かれた立て看板。遠くからでも目に留まる
「明太フランス」(315円)のPOPは、店内で最も大きいA3サイズ
 東急東横線・大倉山駅を降りて同店を目指すと、「朝月間」と書かれた立て看板が目に入ってきた。黒地に白色の筆文字で大きく書かれており、通行人がふと足を止めたくなるようなインパクトがある。
 さらに、駅からすぐの立地を活かし、朝7時から10時の通勤時間には、スタッフが駅前で「朝営業モーニングパン有マス」と書かれた幅1メートル以上の巨大な看板でPRする。
 「パン好きの方だけでなく、最寄り駅を通勤で利用するすべての方をターゲットにしています。朝、通勤前の利用を習慣にしてもらおうと、『焼きたてのパンと、無料のコーヒーで朝食はいかがですか』という風に打ち出しています」(岸本社長)
 店内に入ると、パンとPOPが一体感を持った状態で視界に入ってくる。まるで、焼きたてのパンがPOPという衣装をまとっているかのようだ。
 「お客様はPOPの価格とコメントを必ず見ます。お客様とPOPは対話しているんですよね。その対話しているときが、買うか買わないかの分岐点となるんです」(岸本社長)
 POPは、黄色がベースの色となっており、赤色、ピンク色もある。大きさは葉書きサイズが基本だ。中には3点ほど、A3サイズの大きなものもある。これらにはさらに、手書きのイラストが用紙からはみ出すように貼り付けられており、店の一押し商品だと一目でわかる。そしてすべてのPOPはパウチ加工されていて、汚れにくくなっている。
 同店で製造、販売を経て現在POP作りを担当している小柳出(おやいず)光さんは、POPの担当になった当初、岸本社長から何度も駄目出しをされたという。
 「注意していることは、POP自体を作品として作り上げないことです。伝えることはしっかり伝えるということが大事で、そのために、文字は読みやすい範囲で、インパクトを与えるように書いています」(小柳出さん)
 店内の壁面は白く、すっきりとした印象で、POPと商品を目立たせるのを手伝っている。



店の「色」をスタッフ全員で共有する
同店を経営するわらうかど社長の岸本拓也氏(右)と、同店の内山芳雄シェフ
同店で製造、販売を経て、現在POP作り、ブログの更新などを担当している小柳出光さん。大学で書道を専門としていた経験を生かしている
「いちごあんぱん」のPOP。どのPOPを使えば売れるかは、店によって違うという
 同店は6年前にオープン。その間、シェフの交代があった。はじめは、ホテルのベーカリーで腕を磨いてきた内山芳雄さん、次にイタリアン出身の関根共生さん、そして3カ月前、内山さんが再度務めることとなった。コンセプトもその都度変わる。最初は「ホテルクオリティ」。次は、「パン屋は戦場」で、本や雑貨も一緒に売り出し、関根シェフが得意な惣菜系を強化した。商品とPOPを主役として、常に店全体でコンセプトを表現している。
 このように、シェフが交代したときは、シェフの顔を見なくても店に入った時点で一目瞭然だ。岸本社長は、時代の変化と、それに伴う顧客のニーズの変化を汲み取った上で、シェフの個性を引き出す商品展開をする。ホテルの食品部門でブランディングやマーケティング部門を担当した経験などを生かし、同店をプロデュースしていく。
 近頃の消費の冷え込みによって、商品価格を安くするか、商品の質をさらに高めるかの選択肢に迫られた。
 「こだわりを強化し、その分価格はある程度高くしていこうと決めました。コンセプトは『本物を気軽に』です。デフレ下で逆行しているようだけど、変化を生むことが大事で、その変化をお客様に伝えるためには、商品だけでなく、お客様との対話役であるPOPでも表現していかなければなりません。そのためには、スタッフ全員で、店のコンセプトを共有する必要があります。そのコンセプトは、『色』と表現しています」
 現在POPの作成は、他店からの依頼も受けている。サンプルとして小柳出さんが作成した「いちごあんぱん」のPOPは6種類以上。一見すると、どのPOPも読みやすくて存在感があって模範的に作られている。しかし仮に、それぞれに同じパンを並べると、売り上げは変わる。それは、POPの良し悪しというよりも、その店の色にあったPOPか否かということの方が重要だからだ、と岸本社長は言う。
 「売れるノウハウを知っただけでは作れません。POPは、店の『コンセプト』を具現化させた結晶のようなものです」
 岸本社長は、ベーカリーだけでなく、ラーメン店や花屋などからもPOP作りをはじめとしたプロデュースの依頼を次々と受けている。同店に来店したオーナーが、同店を気に入って依頼してくるケースが多い。
 「売り上げが伸び悩んでいて、どこから踏み出していけばいいかというときは、POP作りから始めます。目に見えるところから踏み出すという、そのきっかけが大事です。もちろん、POP作りをする上で、店の『色』を引き出していく作業があります。依頼主のオーナーが何をこだわりとしているのかなど、話をとことん聞き出します。こうして店の『色』が表現され、オーナーのやりたいことが具現化された店となっていくんです」 

店の個性を出すため、マニュアル化はしない


 岸本社長が接客に求めることは、ひたむきさと謙虚さ。コンセプトが変わっても、オープン当初から通していることだ。
 「あくまでも、商品が主役です。お客様に提案するときに、でしゃばるようにしてはいけません。また、内山シェフから関根シェフに変わったときは、ひたむきさと謙虚さを基本とした上で、かしこまった感じから、少しフレンドリーさを出すという変化をつけました」
 また、接客をマニュアル化すると、個人店の良さがなくなるという。
 「このパンはこうすすめるという風に決めてしまうのではなく、『私が好きなパンは』といったように、各自、自分の好きなパンをすすめるようにしています。自分の好きなパンなら、誰よりもうまく表現できるはずなんです。このように、一人ひとりのやり方を尊重した接客で、店としての面白みを持たせています」
 スタッフには、店のコンセプトの理解を深めるため、自店のパンをどんどん食べるように言っている。それと同時に、「常に外を向いているように」とも注意する。
 「うちのシェフの作るパンはおいしい、というだけではいけないんです。例えばランチで、お客様がパスタを400円で食べて喜んでいるという事実を知らなくてはいけないんです。そこで仮に800円を出しても、パンを食べて満足していただけるように、コスト以上の価値を見出さなければなりません。そのために、外を見る目というのは大事なんです」

ShopData
店名トツゼン ベーカーズ キッチン
住所神奈川県横浜市港北区大倉山2‐1‐11
電話045‐548‐0568
営業時間午前7時半〜午後7時
定休日月曜日
品目数50品目
店舗面積売り場8坪、厨房16坪、倉庫・事務所6坪
スタッフ製造5人、販売4人
日商平日25万円、土日33万円


「売りたい商品」は平台に並べる‐サフラン柏の葉店
入り口からすぐの平台に並ぶパンは、スタッフらが「売りたい」と思うアイテムが6種類ほど
 「サフラン柏の葉店」は、千葉県内に複数の店舗を展開するベーカリー「サフラン」(小川佳興社長)の中で、最も大型の店舗。売り場と厨房をあわせると、150坪という広さだ。駐車場は70台分完備し、平日は750人、土日は1200人ほどが訪れ、多いときは140万円ほどの売上げを誇る。
 同店で販売を担当して4年目となる山根弘嗣さんは、「昨年まではよく売れていましたが、年明け後、珍しく売上げが伸び悩んでいます」と話す。

原価計算女王
原価計算女王
時間帯別に施策夕方の客足を増やす
夕方5時過ぎには、入り口からすぐのところにある平台にパンを集結。「お客様が探しまわらなくていいように、ある程度まとめています」(山根さん)。冷蔵ケースの商品も、デザート類とサンドイッチが一つの冷蔵ケースにまとめられていた
 昨年の東日本大震災の後から、季節ごとの売上げの動きが、例年と少し変わってきているのだという。年明け後の目立った変化は、夕方以降の客数低下。
 「原因の解明はまだできていませんが、おそらく、このところ続く厳しい寒さが影響しているんだと思います」(山根さん)
 客数は、昼の時間帯はほぼ変化ないが、日が暮れて寒さが増してくる夕方以降は、例年と比べ1割ほど減っているという。
 売上げアップを常に意識している同店としては、こうした天候による影響も見逃さない。客の反応がいいというイベントの回数を増やしていこうとしている。
 同店の加藤直人店長は、「今はまず、足を運んでもらうためにはどうしたら良いかを考えています。先週実施した『創作パンフェア』が好評だったので、今度は、そのときに出した創作パンを夕方限定で販売し、夕方以降もお客様が『行ってみたい』と思ってくれるきっかけを作ろうと考えています」と話す。
 「創作パンフェア」では、材料メーカーや問屋などの協力も得た。高級ソーセージなども使用し、原価50%を超えるだろうと思われるアイテムまで登場した。また、普段販売している石窯ピザを約半額で提供した。
 「いろいろな材料を使えたこともあり、これまでベーカリーに携わってきた中で、一度も見たことのないパンまで登場しました。フルーツミックスとマシュマロを混ぜてロールケーキ風にしたパンなどです。フェアをやることが、従業員のやる気を引き出すことにも繋がればと思っています」(加藤店長)
 新製品開発は、担当は設けていないが、今回のフェアではスタッフ全員が1品ずつ考えるようにした。
 「これまで1度も新製品を出したことのなかったスタッフにとって、開発する喜びを実感してもらういい機会になりました」(加藤店長)
 同店のスタッフは、パートと社員合わせて総勢60人。販売はパートが40人ほどおり、その多くが主婦だ。今回の「創作パンフェア」は、パートスタッフらから発案があった。続いて「いちごフェア」の要望もすでに上がっており、加藤店長はすでに、その内容を練っているところだ。日常買い物をよくする主婦の目線を活かすことで、客の立場に寄り添う。
 夕方以降の売上げアップに関しては、現在最も力を入れている課題だが、ほぼ例年通りの調子である、朝と昼に関しても施策を考えている。売上げアップは、時間帯別に作戦を練るのだ。
 定年退職した団塊世代が多いという朝の時間帯は、「焼き芋サービス」を実施。先着200本限定でプレゼントし、毎日のように来店する客に喜んでもらいたいという。
 昼の時間帯は、パンだけでなく、デザートの追加購入による客単価アップを目指す。
 「『デザートもついでに買っていこう』と思ってくれるように、デザート類の種類を増やしました」
 これまではプリンなど2〜3種類だったが、現在はそれらに加えて「モンブラン」(170円)、「ティラミス」(190円)など10種類以上が並ぶ。デザート担当のスタッフの人数も、1人から3人に増やした。

売りたいアイテムで客を出迎える
節分の鬼をかたどったクリームパン「鬼パン」(140円)。購入した商品は、イートインスペース専用のトレイに載せて食べられる
 店に入ってまず目に飛び込んでくるのは、平台に並んだ季節を感じさせるアイテムなど、6品目ほどのパン。1月末の取材日は、節分に因み、クリームパンを鬼の形にした「鬼パン」(140円)が並んでいた。
 「入ってすぐの平台に並んでいるのは、『売りたいパン』です」(加藤店長)
 従来の人気を意識するというよりも、今スタッフらが「売っていきたい」と思う商品を並べているのだという。しっとりした食感の生地にラム酒とシナモンに漬けたリンゴを練りこんだ「リンGO!!」(180円)などがそうだ。「鬼パン」など、季節商品も、この平台に並ぶ。
 一方、1日に200〜400個売れる人気の「自家製カレードーナツ」(140円)、「柏の葉あんぱん」(140円)、「黄金メロンパン」(160円)、「クリームパン」(130円)などの人気商品はそれぞれ、カテゴリーごとに陳列されている。
 「人気商品の陳列位置は、ずっと変えていません。お客様が覚えていてくれるので、変えるとかえって混乱してしまうからです」
 食パン類も、中央にある陳列棚から動かさず、定位置を守っている。店内を見渡すと、これらの人気商品は、食パンを中央にして、そのまわりに分散するように配置されている。

店内の雰囲気を変えて新規客を呼び込む
車で通りがかりの人にも目立つ看板が設置されているサフラン柏の葉店
加藤直人店長は同店の店長になる前は、サフラン新松戸店で7年間店長を務めた
フェアなどの情報は、入り口の扉に掲示するほか、メールでも配信している
 年明け後の調子が例年と違うこともあり、店内のリニューアルを図ろうとしている。陳列時にパンをのせるトレイや、平台などを変え、店内の雰囲気を変えようという試みだ。
 予算は10万円。トレイなどはこの予算とは別に購入するが、10万円でスタッフ自らホームセンターなどで資材を購入し、平台などの陳列スペースを飾る。「木目調でまとめたい」という意見にまとまったため、木材を多用していく予定だ。
 加藤店長は、新松戸店の店長を7年間務めた後、同店の店長を務めてもうすぐ1年になるが、「こうしたリニューアルは初めてだと思います」と話す。
 年に4回ほど出していた新聞の折り込み広告を、昨年をもってやめた。フェアの開催など、その季節ごとの予定を告知する目的で出していたが、それに代わるようにして、今年で6年ほどになるメール配信が大分浸透してきた。現在会員数は2000人に達している。月4回配信し、そのうち2回はセール情報を流す。
 「店内の雰囲気が変わったら、それをお客様同士で話題にしてくれると思うんです。こうした口コミによって、新規のお客様が増えることを期待しています」
 定番の人気商品は、20円引きなどの割引セールを実施。
 「定番の人気商品でも、『最近買わなくなった』というお客様もいるはずなので、そうしたお客様に、再度購入してもらえる機会をつくるようにしています」

ShopData
店名サフラン 柏の葉店
住所千葉県流山市青田93‐1
電話番号04‐7156‐7101
営業時間午前6時半〜午後8時
定休日<第1・第3木曜日
品目数200品目以上
店舗面積売り場と厨房合わせて150坪
スタッフ販売常時約15人、製造常時約10人
日商平均70万円、土日130〜140万円


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