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特集/2011年12月号

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特集■コンテストの受賞製品を販促に活かす■


パン業界では、毎年様々な製パンコンテストが開かれ、多くの参加者が腕を競っている。パン職人にとっては自分の腕を試すいい機会であり、いっしょに参加したほかのベーカリーの製パンの仕事を間近で見るいい機会でもある。商売の観点からは、コンテストで賞を獲得すれば、それが販売促進の貴重な材料になる。今回はコンテストに積極的に参加し、受賞製品を販促にうまく活かしているベーカリーを取材した。



コンテスト商品は店で使用している材料で開発する‐ブーランジュリーKヨコヤマ 埼玉県川口市
横山杏奈さんは今年、カリフォルニア・レーズンベーカリー新製品開発コンテストのインストア・リテールベーカリー製品部門で金賞を受賞
金賞を受賞した「ルナ・ロッサ」(200円)。中にクリームチーズとアーモンドクリームを混ぜたものと、レーズン、アプリコットが入っている
「ルナ・ロッサ」の販売開始によって好調な売れ行きとなったブリオッシュ。「ラ・フランス」(200円=写真左手前)と「ボー・ヴィラージュ」(180円=写真右奥)
「ルナ・ロッサ」のデザインを考えるもととなった型
コンテストで受賞したときにもらった賞状などは店内の一角にまとめて飾られている
普段使いの材料で迫力と斬新さを出す
 埼玉県川口市のベーカリー「ブーランジュリーKヨコヤマ」はカリフォルニア・レーズンベーカリー新製品開発コンテストで、2008年から毎年受賞者を出している。
 横山暁之介オーナーシェフの娘で同店で5年間勤務している横山杏奈さんは今年、同コンテストのインストア・リテールベーカリー製品部門で金賞を受賞した。受賞作品はレーズンの月を意味する「ルナ・ロッサ」という名前のヴィエノワズリーで、現在同店で200円で販売している。同店は、これまで様々なコンテストで合計12製品が賞を受けており、そのうち横山オーナーシェフが出したのが4製品、従業員が出品したのが8製品となっている。そのうち6製品を店舗で販売している。
 ころころと転がる球体の形が特徴的な「ルナ・ロッサ」は、刻んだピスタチオのトッピングなど、細かな細工も施され、見た目にも豪華な一品と言える。しかし、そんな見た目に反して「常食のパンとして開発しました」と杏奈さん。店頭でも、受賞の文句はポップにさりげなく記載されているだけだ。「受賞後、店頭に初めて並べたときは一番目立つ場所に並べましたが、今はほかのヴィエノワズリーと一緒に並べています。特別に宣伝して売っていこうというよりは、いつもお店に並んでいる製品が受賞したという意識を持っています」
 コンテスト用のパンではなく、普段店頭に並べるパンで勝負する。この姿勢は、自身も数々のコンテストの受賞暦がある横山オーナーシェフの考え方に基づいている。「ムッシュ(横山オーナーシェフ)は、コンテストに応募する製品について『パン職人は芸術家ではないのだから、お客様が手に取りやすくておいしいものでなくてはならない』という考え方を持っています。特別に凝ったもので賞を狙うのではないということです」(杏奈さん)
 凝ったものでなくとも、金賞受賞となった「ルナ・ロッサ」について、安奈さんはこう話す。
 「工程を合理的にして、作りやすいようにしました。凝らないと言ってもコンテストなので印象に残るものでなくてはいけません。そこで重視したのは迫力と斬新さです」
 迫力と斬新さを与えているのは、なんと言っても球体の形状。「面白いと思った型があったんです。作品のイメージはその型から膨らんでいきました」(杏奈さん)。型は日頃親しくしている菓子道具店から紹介された。
 「ルナ・ロッサ」の生地とフィリングのクリームは、普段製造しているものと同じ。それらを組み合わせることで、迫力と斬新さのある作品を開発したのた。

コンテストの製品で店の課題を解決する
 同店のパンの土台とも言えるのは、フランスパン、食パン、クロワッサンの3つの基本生地。杏奈さんをはじめコンテストに応募するスタッフは、この基本生地をもとに、応募作品を開発しているという。「毎日おいしいと思って作っている生地ですし、ムッシュも基本生地を使うように勧めます」(杏奈さん)
 今回、「ルナ・ロッサ」に使用した生地はブリオッシュ生地。3つの基本生地の一つではないが、同店で以前から販売している「ラ・フランス」(200円)などのブリオッシュと同じ生地だ。
 「フランスでは必ずお店にある定番商品なのですが、当店のお客様にはまだ浸透していないんです。ブリオッシュをもっと食べてもらいたくて、そのために、ブリオッシュ生地で新製品を作り出そうと思ったんです。コンテストがいい機会でした」
 目立つ見た目の「ルナ・ロッサ」は、ブリオッシュを普段食べない客も手に取る。
 「ルナ・ロッサ」はブリオッシュを体感してもらうための、最初のきっかけになればと思っています」
 「ルナ・ロッサ」の発売以後、「ラ・フランス」などのほかのブリオッシュ製品も好調な売れ行きを見せている。
 トッピングとして使用しているパートブリゼは、「レモンパイ」(180円)などを作るときの余り生地。通常はほかの余り生地と合わせて練り直して使うが、成形後に余ったそのままの状態からカットして使う。作業性を考えてのことだ
 「ルナ・ロッサ」は、普段の仕事における課題を集結した製品だと言える。

受賞を狙うだけでないコンテストの目的
 横山オーナーシェフは、コンテストは、受賞することよりも、技術の高い人と勝負をし、経験を積むことに重きを置いている。
 杏奈さんも、「ほかの会社の方と一緒に作業ができるので、見ていて勉強になります。パンを作るという共通の仕事を持った、異なる会社の人たちで集まれるのは、講習会とコンテストくらいしかありません。パン業界における自分の位置を、改めて確認することができます」と話す。
 コンテストでは、手際の良さや作業中の手の動かし方など、個人単位の細かいことだけでなく、店ごとに異なる材料の管理や製品の管理、ロスの管理の仕方なども見ることができる。「うちは個人店なのでチェーン店のやり方に刺激を受けます。それと同時に自分のやり方を見直すことができます」(杏奈さん)
 同店のスタッフ13人は、窯、調理、仕込み、販売など部門別に配属されている。普段仕込みを担当していて窯を扱ったことがないスタッフも、コンテストに応募する作品については仕込みから焼きまでひと通りをマスターしなくてはならない。
 「応募作品だけしか焼くことができないスタッフもいます。でも、たった1つでも完璧に焼くことができるようになることは、現場で窯にまわったときに役に立ちます」(杏奈さん)
 応募作品の試作は、業務終了後に行う。そのとき、先輩後輩の壁を意識せず話し合えるという。
 「同じコンテストに社員3人が出るときもあります。そういうときでも、相談したりアドバイスをすることはあっても、競い合うようなことはありません。また、コンテストに出ない社員も、周りで見たり一緒に手伝ったりしています」


ShopData
店名 ブーランジュリーKヨコヤマ
住所 埼玉県川口市小谷場455‐1
電話番号 048‐263‐0222
営業時間 午前7時〜午後7時
定休日 なし
品目数 120〜150
スタッフ 製造常時6人、販売常時3人
店舗面積 売り場12坪、厨房18坪
年商 1億6000万円
日商 平日30万円、土曜日50万円



「第1回日清製粉パンレシピコンテス」で準グランプリを受賞した「ソレイユ」(大は180円、小は100円)
「第19回カリフォルニア・レーズン新製品開発コンテスト」で特別賞を受賞した「デュンケル・ブロート」(2切れ125円=写真左)、「2007年カリフォルニアフィグコンテスト」のパン部門で優勝した「ヴェネチア風いちじくパン」(1000円=写真右)



コンテスト入賞を販売促進に最大限に活用する‐ママン・ラトーナ
2003年の「カリフォルニア・レーズン新製品開発コンテスト」に、「サンフラワーレーズン」を出品し、レーズン大賞を受賞した佐藤哲哉ベーカリー・ケーキ製造部長。同製品をロングセラー商品に育て上げた
「サンフラワーレーズン」は、4分の1カットを1センチ厚程度にスライスしてパッケージングし、「レーズン大賞受賞」のシールを貼った状態で販売。
様々な商品が並ぶママン・ラトゥーナの店内
コンテストでは審査員を客と考える
 東京・町田市のママン・ラトーナでは、2003年の「第12回カリフォルニア・レーズン新製品開発コンテスト」で、レーズン大賞を受賞した「サンフラワーレーズン」が、今も店頭に並ぶロングセラー商品になっている。4分の1カットを1センチ厚程度にスライスしてパッケージングした状態で220円で販売。1日に50個前後売れる底堅い商品になっているという。
 「レーズンのコンテストにどうしても出たくて、2001年から作品を出し始めて、3回目でやっと決勝まで進むことができ、しかも大賞まで頂いたんです」
 「サンフラワーレーズン」をレーズンコンテストに出品したママン・ラトーナの佐藤哲哉ベーカリー・ケーキ製造部長は、当時のことをこう振り返る。
 ひまわりの種、オートミール、亜麻仁などを入れて、レーズンとカレンズを対粉で50%ずつ配合。2種類のレーズンを配合することで、甘みと酸味が絡み合って、奥行きのある味に仕上がっている。
 「コンテストでいい成績を収めようと思ったら、そのコンテストが何のために開催されているのかをきちんと理解しないとだめですね。レーズンコンテストだったら、レーズンの消費拡大のためにやるのですから、レーズンの配合量が多い方がいいのは当然です。あとは、審査員の方々がどんな価値観で評価してくるのかを自分なりに調べておいた方がいいですよね。このことは、つまりはマーケティングなんです。店で販売するときにお客さんのことを考えるように、コンテストでは審査員のことを考えなくてはならないんです。当時は、『健康』とか『安心・安全』などが叫ばれていた時代で、栄養価の高いシリアル系でいった方がいいと考えました」(佐藤さん)
 「サンフラワーレーズン」を店で売り出すに当たっては、配合や工程を少し変更した。例えば、ルバンリキッドは管理が難しいので、誰でも管理しやすいものに変えたという。
 「店で販売する場合は私がすべて作るわけではないので、みんながやりやすいように変えました。普段お店で使っていない材料も多少コンテスト用に使ったので、それらを店で無理なく使える材料に置き換えました」(佐藤さん)
 販促も積極的に行った。まず、「レーズンコンテスト入賞」と書いた金色のシールを作った。また、売り場に「サンフラワーレーズン」の特設コーナーを作り、賞状や盾を飾って雰囲気を盛り上げた。さらに、その年の秋に行なった年に1回のフェアで、大々的にアピールした。フェア期間中は、1日100本以上売れたという。当時はスライスしてのパッケージングはしていなかったので、今のパッケージ商品に換算すると400個以上ということになる。これを機に、「サンフラワーレーズン」は、一気に顧客に浸透していった。
 「『サンフラワーレーズン』がロングセラーになったのは、コンテストで入賞したからというよりは、コンテスト入賞を販促に最大限活かしたからだと思います。販促のネタというのはあるようでそんなにないので、その意味でコンテストは貴重だと思いますね」(佐藤さん)


ShopData
店名 ママン・ラトーナ
住所 東京都町田市南つくし野4‐17-16
電話番号 042‐799‐5470
営業時間 午前9時〜午後8時
定休日 不定休
品目数 パン、洋菓子合わせて約180
スタッフ 製造常時7人、販売常時4人
店舗面積 売り場50坪(パン25坪、洋菓子25坪)、厨房50坪
日商 約70万円

原価計算女王
原価計算女王

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