おもちゃ箱を開けたときのような輝き‐イトキト - ブランスリー電子版

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お店拝見/2011年12月号

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おもちゃ箱を開けたときのような輝き‐イトキト
間口が狭く、売り場3坪というこぢんまりとした店構え
パンは、明るい水色のタイルで装飾されたショーケースの上に所狭しと並んでいる。販売は勝野オーナーシェフの妻、千津さんが担当
「クルミとオレンジピールの自家製あんぱん」(210円)。クルミとオレンジピール入りのライ麦パン生地で、自家製の粒あんを包んだ商品
「ボロネーゼ」(250円)。ナスのグリエに、自家製ミートソースとサワークリームをのせたタルティーヌ
一見手の込んだデザートのように見える「フレンチトースト」(120円)。バーナーで上面をキャラメリゼするひと手間かけている
約6種類揃う焼き菓子は、パティシエの経験があるスタッフが製造。「商店街には意外に、手土産に適した菓子がないようで、販売を始めたら喜ばれました」(千津さん)
 「こんな住宅街にあるんだろうかと地図を見ながら探し歩いた先に人だかりができていて、きらきらと輝いて見えたんです。こういう店を作った人と一緒に仕事がしたいと思いました」
 デザイン業界で会社勤めをし、30代でパン職人を志した勝野真一さんは、好きだった都内のベーカリーを初めて訪れたときの印象をこう話した。そのベーカリーでは3年間働くことになった。その後、料理も勉強しようと、ビストロに勤務した。そして2007年1月に東京・大田区にベーカリー「イトキト」をオープン、独立を果たした。
 東急目黒線の大岡山駅の北口を出ると、「大岡山北口商店街」の活気に包まれる。そのメインストリートを5分ほど歩き、1本曲がったところにイトキトは佇む。取材した平日の昼、次から次へと客の出入りする様子があった。商店街のメインストリートと隔てた場所に、新たな活気を生んでいた。
 間口は狭く、店内は3坪というこぢんまりとした空間。食パンやバゲット以外の約20種類のパンは、ショーケースの上にぎっしりと陳列されており、1つでも売れればぽっかりと穴ができる風だ。
 販売を担当する、勝野オーナーシェフの妻、千津さんの「『ホーレン草のピザ』追加お願いします」との声に、製造のスタッフは、厨房から1つ運び補充する。たった1つでも、その穴を埋めるかのようにその都度補充する。補充されたパンとスタッフの動きに、順番を待つ客の目線が集まっていた。
 「元気が良くて活気がある店にしたいんです」(勝野オーナーシェフ)
 人手のかかる対面販売ということもあり、本来ならば販売専属のスタッフが千津さんのほかに1人いてもおかしくない。しかし、あえて厨房と売り場を行き来する「販売もこなす製造担当のスタッフ」をおくことで、店内に動きを出している。
 「レジャーランドに行くときのような、わくわく感を持ってもらいたいんです。そのためには活気とライブ感が大事です。店内にいるとき『楽しい』と感じてもらえたら、来店するのが楽しみになると思うんです」
 パンがそれぞれ、場所取りをしているかのように見える小さめの陳列スペースも、客に「わくわく感」を持ってもらうためだという。
 「おもちゃ箱を開けたときのように、パン一つひとつが輝いて見えるように陳列したいんです」
 1つのパンの種類について、似たようなバリエーションは展開しない。例えば、あんぱんは自家製の粒あんを包んだ「クルミとオレンジピールの自家製あんぱん」(210円)、クリームパンはキャラメルソースを加えた「キャラメルカスタードクリームパン」(200円)、タルティーヌはナスのグリエとサワークリームを自家製ミートソースで合わせた「ボロネーゼ」(250円)と、それぞれ1アイテムに絞っている。「このパンはこの味しかない」と思える商品になるよう、突き詰めて商品開発をしているのだという。
 カテゴリー別に陳列しても、どの1つをとっても類似した商品がないために、隣り合う商品同士が互いを引き立て合う。おもちゃ箱の中身が子どもの目に映ったときのように、パンが並ぶ陳列台が客の目に入ってくる仕掛けだ。
 「フレンチトースト」(120円)は一見手の込んだデザートのようだ。バーナーで上面を炙り、キャラメリゼするひと手間をかけている。
 「陳列台にのったときに美しく見えて、それが例え500円でも『食べたい』と思えるようなビジュアルの良さを意識しています。食べておいしくなければいけないのは勿論ですが、まず、おいしそうに見えなければいけません。財布をポケットから出してもらえるかということです。そして実際に食べたら、見た目を上回るおいしさがあって、それが、感動となって記憶に残ります。そうするとまた来たいと思うし、友人に教えたくなると思うんです」
 「大岡山北口商店街」では、井戸端会議をする女性らの姿があちこちで見られるという。同店の客層のメインも、50〜60代を中心とした女性たちだ。
 「店をオープンして間もない頃、『おいしかったので友人にあげるんです』と言って、食パンを3斤、4斤まとめて買っていく女性客がいました。その後から客数が徐々に増えていったんです。口コミの影響力を実感しました」



旬が演出されたサンドイッチ
オーナーシェフの勝野真一さんと、製造を中心に販売も担当する鴇田朋子さん
約8種類揃うサンドイッチは全体の売上げの20〜25パーセントをしめる
「ローストポークときのこのマリネ いちじくソース」(380円)。同店の定番の具材である自家製ローストポークを、イチジクと赤ワインのソースと、きのこのマリネに合わせて秋の味わいに仕上げた
「ライブレッド」(360円)を使ったサンドイッチは2種類。「コンビーフとシャキシャキキャベツのサンド」(360円=写真奥)は、マヨネーズなどと和えたコンビーフと、千切りのキャベツの口当たりが滑らかで、上品な味わい
 「料理がおいしいパン屋にしたい」
 勝野オーナーシェフがベーカリーを経て、ビストロで働いた理由だ。
 イトキトではサンドイッチを約8種類揃え、それらの売上げは全体の20〜25パーセントをしめている。ローストポークや豚肉のパテ、マヨネーズやソースなど、サンドする具材はほとんど自家製だ。
 「パンは料理の邪魔をしてはいけないものと位置づけています」
 パンは誰が食べてもおいしいと思うラインを守った上で、具材の調理に手間隙をかける。また、勝野オーナーシェフは「粉の値上げよりも、野菜や肉などの副材料の値上げの方が心配になります」というほど、パン職人でありながら、料理人の感覚を持っている。
 サンドイッチは約2カ月おきに、2〜3種類をそのときどきの旬を意識した具材に変える。そのときしか採れない旬の野菜や果物だけでなく、通年手に入るドライイチヂクやきのこでも旬を演出する。「ローストポークときのこのマリネ いちじくソース」(380円)は、きのこのマリネとソースにイチジクを使うことで、メインのローストポークを秋の味わいに仕立てている。
 「自分が飽きっぽいこともありますが、メニューが変わるとスタッフのモチベーションも上がります」
 輝きを放つ商品と元気の良いスタッフのいる同店は、「大岡山北口商店街」の活気を支える存在となっている。

SHOP DATA
店名 イトキト
住所 東京都大田区北千束1‐54‐10
電話 03‐3725‐7115
営業時間 午前10時〜午後8時(土曜・祝日は午後7時まで)
定休日 日・月曜日
品揃え パンは30品目、菓子は約8品目
店舗面積 売り場3坪、厨房14坪
スタッフ 製造3人、販売1人
日商 平日12〜13万円、土曜・祝日18〜20万円





原価計算女王
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