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| ここにもパンの現場/2011年12月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 製パンフリークの情熱がパン業界を変える? | |
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パン教室の盛況に象徴されるように、自分でパンを焼いてみたいという“製パンフリーク”が増えている。少し前にブームとなったホームベーカリーがさらに発展、最近では手作りのオリジナルパンにこだわる本格派が急増中だ。そんな製パンフリークたちは、パン業界にどんな影響をもたらすだろうか?
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| 激戦区・銀座に登場したプロ御用達材料の小売店 | |
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ようやく秋らしさが感じられるようなった10月の末。ウィークデーの昼下がりだというのに、東京・銀座の一角は、大勢の買い物客でごった返していた。数日前にオープンしたばかりの商業施設「ルミネ有楽町」だ。「ルミネ」といえば、駅ビルにある若者向けファッションビル、というイメージが強いが、今回、大人の街・銀座に初の「駅外」店をオープンした。
百貨店が立ち並び、激戦区であるこの地で勝ち残るために「ルミネ有楽町」が打ち出した特徴のひとつが、「食の充実」。107あるテナントの中には、食材・食品を扱う店も比較的多く名を連ねている。そんなテナントのひとつ、「富澤商店」(ルミネ1・地下1階)は、プロ御用達の製菓製パン材料・調理器具などを小売する店。近年、生地づくりから手がけ自分オリジナルのパンを焼こうという「製パンフリーク」たちを中心に人気を博している小売店だ。取材当日も、年配の買い物客を中心に、多くの人がこの店を訪れていた。 「週末は若い客が多く、平日はやや年配の客が多く来店する」(「富澤商店」ルミネ有楽町店・横山崇店長)というから、老若男女に支持されているのだろう。事実、同店は「ルミネ北千住」にも出店していて実績を残している。「ルミネ有楽町」が激戦区での大勝負に打って出るにあたり、「富澤商店」をテナントとして招き入れたのは、確実な集客力を見込んでのことにほかならない。 |

| 90年超の歴史と実績を持つ材料・器具の小分け販売業 | |
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「まあ、かわいい」「いろんな材料があるね」
店内では、まるで小物アクセサリーショップをのぞいているかのように客たちが店内をめぐっている。ルミネ有楽町店の売り場面積は36坪。関東で展開する「富澤商店」の中でもトップクラスの広さだ。 「銀座という土地柄を考慮して、店内の内装もかなりおしゃれなつくりにしました」(横山店長) 富澤商店は、製菓製パン材料の卸業者として、1919年に創業した。本社は東京都町田市。創業後まもなく、製菓店やパン店に材料を卸売りする一方で、地元の一般消費者向けに小分け販売をはじめた。小麦粉を中心とした種類豊富な材料、そして調達から販売まで一貫した確かな商売が評判になり、現在では国内に22店舗を展開するようになった。今後も拡大路線はしばらく続く見込みのようだ。 「プロ御用達の材料・器具を使ってパンをつくりたいというお客様は以前からいらっしゃいましたが、最近ではとくに、数種類の小麦粉を自家配合して、オンリーワンのパンをつくりたいという『製パンフリーク』の方が増えてきました。よりプロに近づきたい、というのが最近のお客様の傾向のようです。弊社では、そんなお客様のニーズにお応えするよう、国産・外国産あわせ60種類以上の小麦粉を揃えています。この種類の多さが、弊社の一番の売りだと自負していますが、さらにお店には、和食の食材や、中華、アジア料理などの食材、さらに関連する調理器具など、食に関するものはなんでもご購入いただけるような品揃えをしています」と語るのは、同社営業本部長の羽根秀敏氏だ。 |

| 酵母から自分流を求める製パンマニアも出現
自宅でパンをつくろうという消費者がにわかに増えたのは、1980年代後半のこと。家で手軽にパンが焼ける製パン機「ホームベーカリー」が登場したのがきっかけだった。その後、製パンブームは浮き沈みを繰り返したものの、近年、米粉でパンを焼く「GOPAN」(三洋電機)など性能が著しく向上したホームベーカリーが開発され、本格的な製パンフリークが急増した。某オーブン・メーカーの営業マンは、「最近では小型の業務用のオーブンをクルマ感覚で購入し、自宅に設置して製パンを楽しむ一般消費者も増えている」と話す。
前出の羽根氏も、次のように語る。 「安全・安心志向の高まりもあって、自分だけのオンリーワンのパンをつくりたいという意識は確実に広まっています。これは一過性のブームではなく、製パンフリーク市場はいまやひとつのマーケットして確立したものととらえていいのではないでしょうか。中には、いろんなフルーツから自ら酵母を作って自分だけのパンを生み出そうというマニアの方もいらっしゃるほどです」 |

| プロとアマの切磋琢磨が業界の発展につながる
だとすれば、リテールベーカリーを取り巻く環境はさらに厳しさを増すことになるのだろうか。
そうではない、と羽根氏はいう。 「製パンフリークがリテールベーカリーでパンを買わなくなるかというと、決してそんなことはないとわたしは思います。わたしたちがときどきレストランなどの外食を利用するように、製パンフリークの方々もやはりプロのパン屋さんのパンを買って楽しむこともあるはずです。実際、わたしどもがお取引させていただいているリテールベーカリーさんのなかにも、日々勉強し努力されているところは発展されています」 製パンフリークが増えることは、一般消費者の舌が肥え、味にこだわりを持つアマチュアが増えることを意味する。プロフェッショナルにとって、このことは腕の見せ所が増えたということでもある。消費者が、地域がリテールベーカリーに何を求め、どんなパンを欲しているのか、的確に把握し、それに応えていくことができれば、消費者は確実に評価してくれるはずなのだ。アマチュアとプロフェッショナルが、いわば切磋琢磨していくことで、パン業界全体が成長していくことができるはずだ。 実際、いい相乗効果は出始めている。「富澤商店」で製菓製パン材料を小売することで、消費者の商品知識が広がりをみせた。その知識は、リテールベーカリーの店頭に並ぶパンへの理解を深めることにつながっているのだ。 「ああ、このパンはカナダ産1CWを使っているのか。ならばこんな味がするはずだ。買ってみよう」「この材料を使っているのね。じゃあこのお値段でもしょうがないわね」「このトッピングはおもしろい。自分でも試してみよう」 そんな思いでパン屋さんに立ち寄る消費者が増えているのだ。あとは、プロが目や舌の肥えた消費者に、どう応えるか。製パンフリークの増加は、プロにとって大きなチャンスなのだ。 (K) |
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