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| インタビュー/2011年11月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 常に前を向いて進む‐小川佳興社長に聞く(続編) 石窯パン工房サフラン柏の葉店・千葉県流山市青田93-1、電話04-7156-7101 | |
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千葉県内に、郊外大型ベーカリーなどを7店舗展開するサフランの小川佳興社長は、「売れていないところほど、いろんな対策が打ちやすいということに気付かなくてはだめだと思いますよ」と話す。夫婦2人の小さなベーカリーを、年商15億のベーカリー企業に育て上げた小川社長が語る言葉には、ベーカリーの勝ち方のヒントがぎっしり詰まっていた。(前号に引き続き、小川社長へのインタービューの内容を掲載します)
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| 売れない店ほど対策が打てる
―――小川社長は講習会の講師をよくやられますが、業界への貢献という気持ちもあるのですか?
小川 それもありますが、どちらかというと講習会で自分のパンを判断してもらいたいという気持ちの方が強いですね。講習会に来ている人たちは私にとってお客さんなわけですが、パンのプロでもあるわけです。その人達に、自分のパンはいいのか悪いのかを判断してもらいたいんです。自分のパンに興味があるのかないのかを知りたいんです。食いつきが悪ければ、自分のパンに魅力がないということになりますからね。やっぱり講習会に来た人たちが「なるほど」と言ってくれることが正しいことだろうし、自分としては、受講者の人たちから情報をもらっているという感覚ですね。 講習会でやった製品を、受講者の人が自分の店で作って販売し、「すごく売れています」といって電話がかかってくることがあるんですが、とっても嬉しいですね。しかし、「今日50個作って午後2時で売り切れました」といってきたりすると、さっそく苦言を呈しますけどね。だって、2時で売り切れたら、そのあと買いに来る人が買えないじゃないですか。電話してくる暇があったら、追加でどんどん作れ、ということですよね。 ―――サフランさんの場合は、お客さんの動きに合わせて、こまめに焼きたての状態でパンを出し続け、しかもチャンスロスを究極にまでなくしていくというオペレーションだと思いますが、売上の低いベーカリーだとこまめに焼きたてを出すのも難しいと思います。その辺についてアドバイスはありますか? 小川 卵が先か、鶏が先かということですよね。売れるからこまめに作れる、こまめに作るから売れる、という循環ですから、売れないんだったら、一度に10個焼いていたのを、もっと手間をかけて、5個ずつ2回に分けて焼けばいいんですよ。 売れないということは暇なんですから、手間はいくらでもかけられるじゃないですか。5個ずつ2回焼いてみて、それが3回、4回になってきたら、今度は1回に焼く数も増やしていけばいいわけです。売れていないところほど、いろんな対策が打ちやすいということに気付かなくてはだめだと思いますよ。それを、当たり前のように、午後2時になったら、工場を閉めて真っ暗にしてしまっているようでは、いい方向に向かうはずがありません。せめて電気ぐらいつけておいてほしいですよ。 |

| 店長の仕事は野球の監督と同じ
―――いい方向に回りだして、売上がどんどん増えてきたときはどんな対応が必要ですか?
小川 チャンスロスを出さないために、計画性をもって回していかないとだめですよね。基本は売れるときに売るということです。売れないときにいくら頑張っても仕方ないわけですから。私は、閉店後に店に残っているパンには文句は言いませんが、チャンスロスに関しては、かなり厳しく言います。 ―――すべての商品についてこまめに焼いてお客さんに焼きたてを出していくのは大変ですよね。 小川 100品目以上あるわけですから、すべての商品については出来ません。でも大体30〜40品目は、焼きたて追求で、チャンスロスゼロを目指し、しっかりと追っかけて(お客さんの来店具合に合わせてタイミングよくパンを出して)いきます。 特に土日はかなりお客さんが多いので、それぞれの商品が、残り数個になってから、次に出す準備を始めても間に合わないので、準備にとりかかるタイミングが難しくなります。一度に作り過ぎないように、しかも切らさないようにしていくのはかなり大変なのですが、そこが腕の見せ所なんですよ。 うちは、工場の作業はすべて売り場を向いてするように、麺台や機械が配置されていますから、どの商品がどれくらい売れて、どれくらい売り場に残っているかが一目でわかります。製造スタッフ全員が常に売り場の商品とお客さんの動きを見ながら仕事をしているわけです。 石窯で焼く部門や、揚げものの部門など、持ち場ごとに自分の担当の商品の動きを常に把握しながら、こまめにチャンスロスが出ないように製造作業を進めていくわけです。 滞っている部門があったら、店長が気付いて、指示して助け舟を出さなくてはなりません。そういう意味では店長は、自分の作業に没頭してしまったらだめなんですね。 全体を見ながら、店がうまく回るように指揮を取っていかなくてはならないんです。それが店長の仕事なんですよ。野球の監督といっしょで、勝敗は店長次第で決まってしまうんです。 |

| 自分の仕事にプライドを持つ
―――サフランさんは現在、7店舗で年商15億円ということですが、従業員はどれくらいいるのですか?
小川 7店合計で正社員が70人ぐらいで、パートさんも含めたら300人ぐらいいますね。店によって、正社員が多い店もあり、パートさんの比率が高い店もあります。正社員とパートさんの比率はどれくらいが理想かとか、人件費はどれくらいが理想かとかいろいろあって、税理士さんからも言われます。でも、人件費を抑えたところで、それはそれだけのことなんです。売上を上げることにはつながらないんですね。人件費を下げる最もいい方法は、売上を上げることです。最終目的は売上を上げることであって、人件費を下げることでも、材料費を下げることでもないんです。無駄なことに関しては、きつく怒りますけど、リストラとかそういうことは一切言いません。そんなことを考えている暇があったら、売上を上げるために何をしたらいいかを考えなさいといいたいですね。それはつまりはお客さんに喜んでもらうことですよね。 ―――小川社長は奥さんと夫婦2人の小さなパン店のオーナーだった時代が長く、そのときに培ったノウハウが、今に生きているとのことですが、その辺のところを具体的に聞かせてください。 小川 やっぱり、私は今でもとっちゃんかっちゃんのパン屋が一番強いと思っています。労働条件は考えなくてもいいし、原材料だっていいものを使えるじゃないですか。原材料費4割というのはすごいことなんですよ。パンがおいしくなり、大きくなる、という簡単な理屈なんですけど。 それと、「とっちゃんかっちゃん」でも、ちゃんとやってきて、息子が継いでくれる店を作れたら、それは素晴らしいですよ。「朝も早いし、きついし、汚いし」と愚痴ばかり言っていたら、誰も継いでくれませんよ。商売がきついのは当たり前ですが、ちゃんとやったら、やった分だけお客さんがその価値を認めてくれるんです。その辺だと思います。やっぱり自分の仕事にプライドを持たなくてはいけないと思います。小さい店だけれど、2人で一生懸命やって、家も建てて、家族もちゃんと養ってきたというプライドを持たないとだめですよね。借金も払い終わったし、もうこんなもんでいいかと思ったときに、商売は一気にしぼんでいきますよ。前を見て進もうという気持ちがあって、実際に前を向いて進んでいたら、興味を持ってくれる味方、支持者が必ず出てくるもんですよ。 ―――でも、大型店も多くなり、小規模のベーカリーは苦戦を強いられているとも聞きます。 小川 私は、パン屋どうしでシェアの奪い合いをするのではなく、いっしょにパンの需要の掘り起こしをやっていかなくてはだめだと思うんです。パン人口を増やしていくことだと思いますよ。材料メーカーさんにしたって、既存のシェアの取り合いばかりしていないで、新たな需要の掘り起こしをやって欲しいですよね。シェアを取るための価格競争ほどむなしいものはありませんよ。価格競争は、ゼロまで行ったらもう行くところがありません。つまり底があるということです。でも上を向いていたら、道は無限に広がっているわけですよ。 |

| 祭事は客と従業員の両方に変化を与える | |
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―――今回、洋菓子の店を初めて出されましたが、洋菓子店をやってみて気付いたことはありますか?
小川 バレンタイン、クリスマスなどの祭事についての考え方を学びましたね。ケーキ屋の場合は、何もしなくてもバレンタインやクリスマス、ハロウィン、ひな祭りなど、祭事がたくさんあるんですね。どうしてパン屋は蚊帳の外なんだということです。こうした祭事をパンで演出するにはどうしたらいいのかを考えなくてはならないですね。ケーキ屋をやってわかったことは、例えばハロウィンだったら、その一カ月以上前から、店にハロウィンの雰囲気を出して、ハロウィン用の商品を並べていなかったら、ハロウィンの時に売れない、ということです。ケーキ屋の場合は、お客さんの来店頻度が低いので、ある程度前から準備万端に告知をしていかなくてはならないということなんですよ。パン屋の場合は、お客さんの来店頻度が高いので、単純に比較は出来ませんが、でも準備は万端にしないと売れないですよね。 ―――パン屋さんで販売できるハロウィン用の商品は具体的にどんな感じになりますか? 小川 例えば、いつものクッキーでも、包材がかぼちゃの形をしていれば、それでハロウィンの商品じゃないですか。だから、かぼちゃの形の包材に入れたパンの詰め合わせでもいいわけです。もっといえば、店の飾り付けの中にハロウィンの雰囲気を盛り込むだけだっていいわけです。かぼちゃ、かぼちゃといったって、かぼちゃが嫌いな人もいるわけですからね。かぼちゃパンやかぼちゃのプリンなんかもありますが、難しく考えると腰が引けてしまう人もいるでしょうから、できることからやっていけばいいんですよ。 こういった祭事をその時々で演出していけば、お客さんに変化を感じてもらえます。それでなくてもパンは日常の商品なので、飽きが来やすいのですから、メリハリをつけていく必要があるわけですね。それは、お客さんにとってのメリハリであると同時に、従業員にとってのメリハリにもなるんですね。従業員も毎日同じ仕事の繰り返しでは面白くないのは当たり前ですよ。そんな中で、レジの人にハロウィンの飾り付けをやってもらえば、メリハリがつくわけですよ。だから祭事は、お客さんにとっても従業員にとっても変化を楽しむ絶好の機会なんですね。さらには、従業員の目標にもなります。「次はクリスマスだよ」といえば、皆それに向かうわけですね。1年とか2年の長いスパンだけではなくて、もっと短いスパンの目標も必要なんですよ。そのためにもイベントごとは大事なんです。ケーキ屋にはそれがたくさんあるわけです。だからパン屋も祭事をどんどん導入すべきだと思いますよ。 |
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