繁盛を呼び込んだ商品があった‐パネッテリア アリエッタ - ブランスリー電子版

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お店拝見/2011年11月号

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繁盛を呼び込んだ商品があった‐パネッテリア アリエッタ
店主の柳沼保広さん(前列左)と従業員ら
「パン・オ・ミエーレ」(大630円=左、小230円=右)。蜂蜜がたっぷりと練り込まれた生地は甘みがあり、口溶けもいい。松の実の適度な食感がアクセントになっている。一番人気の商品
 JR山手線と東急池上線、都営浅草線の3路線が乗り入れる五反田駅の東口から八ツ山通り、通称ソニー通りを歩くことおよそ8分。ビジネス街の中でちょっと目を引く赤いテントの下に、目指すベーカリー「パネッテリアアリエッタ」はある。2003年11月のオープン以来、近隣の住民を始め、ビジネスマンやOLなど老若男女の胃袋においしい刺激を与え続けている。しかし、最初から客を満足させられた訳ではない。
 初めは売れなかった。そこに登場した商品が「パン・オ・ミエーレ」(大630円、小230円)だ。現在の店頭販売の日商約15万円と、通信販売の月商150万円の切っ掛けをつくった、まさに繁盛を呼び込んだ「救いの神」とでもいうべき商品だ。
 「パン・オ・ミエーレ」とはどんな商品だろう。このパンの誕生の切っ掛けは、店主の柳沼保広さん(39歳)が、蜂蜜入りのパンを作りたいと思ったことにある。最初に柳沼さんが取り組んだことは、蜂蜜に相応しい生地作りであった。まず、生地に1%ずつ蜂蜜を加え、バランスを考えながら観察を繰り返した。その結果、生地がまとまる限界まで蜂蜜を練り込むことに成功した。ただ限界まで入れたことで、扱いにくい生地となったが、松の実をアクセントに加えることで、生地の旨さと、食感の良さを生み出すことができた自信作だ。
 確かに食べてみると生地の程好い甘みと国産小麦のもちもち感に加えて、松の実の口当たりが、適度な食感を呼び込んでいる。腹持ちがよいので食事パンとしてはもちろんのこと、おやつとしても楽しめる。今では一番の人気商品だ。



生産者の思いを形にする仕事
材当日も客が途絶えることはなかった。ケース内のサンドイッチもよく売れる
狭い売り場を囲むようにして配置された陳列棚には、様々な商品が並ぶ
全粒粉とカレンズ、クルミの相性がいい「メスコラータ」(大790円=右、小270円=左)。独特の旨みがあって、のど越しもいい。「パン・オ・ミエーレ」に次ぐ2番人気の商品
落ち着いた雰囲気の店舗外観
 同ベーカリーのパン作りの特徴は、内麦とオーガニック素材の利用にある。内麦は北海道産の「ハルヨコイ」に、製パン適性を上げるために、他の内麦を自分でブレンドして使用している。また、カナダ産のオーガニック小麦も大事な戦力だ。具材として使うドライフルーツはアメリカのオーガニック農家が栽培したもの。それに、あんパンに使用するあんは、あん一筋の都内の業者から仕入れる。
 柳沼さんは「北海道やアメリカ、カナダの農家、それにあん業者は、必死に物作りに打ち込んでいます。良いものを作りたいと願う生産者の思いを無駄には出来ません」と語る。
 そして「ベーカーの仕事は素材を形にすることだと思います。一生懸命に作っていただいた小麦の味をどう生かすのか、ドライフルーツやあんを生地にどのように調和させるのか、などを考え、真剣に生産者と向き合うことが、ベーカーの仕事ではないでしょうか。だから常に素材の旨みを生かすことを考えています」とも。
 初めてオーガニック素材で作られたパンを食べた柳沼さんは「本当においしい。このパン作りならやりがいがある」と思ったそうだ。
 その柳沼さん。サラリーマン時代はまったくパンに興味がなかったというから不思議だ。知人に誘われていなければ、この世界に足を踏み入れることはなかった。だからベーカリーでの修業経験はゼロ。知り合いのベーカーに教わりながらの出発だった。それに経営の方法も手探り状態。無い無い尽くしの中での開業だった。今では、成分が不安定な内麦と向き合いながら、自分が食べておいしくないと感じた商品は店には出さないという姿勢で、パン作りを行なう毎日。



真摯な姿勢が口コミで客を呼ぶ
「フェニックス」(大630円=右、小230円=左)。果実と内麦生地の一体感が特徴
「パン・ド・ミー」(1斤490円)。かみ続けるとかすかな塩気が出てくる。のどごしのよさは抜群
丹波の黒豆が入った「黒豆久在エ門ミニ」(250円)。黒豆のほどよい塩気がしっとりしたパンと心地よいハーモニーを醸し出す
オリジナルのタンドリーペーストに漬け込んだチキンが味わい深い「タンドリーチキンのピタサンド」(460円)
 同ベーカリーの仕込みは毎朝5時から始まる。出社するのは社員3人、アルバイト7人の計10人のうち5人だ。同店では全員が製造・販売を兼ねる。現在採用されている人のほとんどが製パン経験なし。しかし、多くの従業員が将来の開業を目指している。それだけに、柳沼さんは店主として内麦とオーガニック素材、レーズン種から起こした自家製天然酵母を使ったパン作りをきちんと身につけてもらいたいと考えている。自分自身が、パン作りはおろか、経営の方法すら分からず、最初のころは大いに困った経験がある。従業員には、パン作りを踏まえた上で、ベーカリー経営の総合的なスキルをしっかりと手に入れる努力をしてほしいと願っている。
 その願いは花開きつつある。自分でおいしいと思わない商品は売らないという姿勢が従業員に浸透しているからだ。毎日の生地の変化を身体で感じながら、丁寧なパン作りを積み重ねている。
 人気商品の一つである「メスコラー夕」(大790円、小270円)は、全粒粉の中にクルミとカレンズを混ぜ込む。カレンズの自然な甘みと全粒粉の香ばしさが味わえる商品。クルミを入れる難しさを技術力でカバーしている。もう一つ、「フェニックス」(大630円、小230円)には、ナツメヤシとオレンジピールを練りこんだ。噛み締めると、生地のもちもち感もさることながら、まるで果物を食べているような甘みが出てくる。
 「パン・ド・ミー」(1斤490円)は、噛み締めていると、いつの間にか生地がのどを通過する。これだけを買うファンもいる。
 おいしさを追求しているとはいえ、原材料の高さを反映して、高価格なこれらのパンが客に受け入れられているのは、ベーカーたちのパン作りへの情熱を客が理解しているからではないか。口コミで、北海道や沖縄からも購入希望者が店を訪れるという。「パン作りに正解はありません。毎日が勉強です」(柳沼さん)。このスタンスが、パン好きをこの店に引きつけるのだろう。

SHOP DATA
店名 パネッテリア アリエッタ
住所 東京都品川区東五反田2-5-1ルネッサンスビル1F
電話 03‐3444‐1345
営業時間 午前8時〜午後9時
定休日 年末年始のみ
品揃え 50品目
店舗面積 販売スペースと厨房あわせて14坪
スタッフ 社員3人、アルバイト7人
日商 約15万円(このほかに通販の月商が150万円)





原価計算女王
原価計算女王

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