4・5坪の小店舗。初期費用150万円‐ベッカーフジワラ - ブランスリー電子版

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お店拝見/2011年9月号

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4・5坪の小店舗。初期費用150万円‐ベッカーフジワラ
パン作り18年の藤原敏夫さん。4年間のパティシエ修業もしてきたので、本格的なクリスマスケーキや、誕生日ケーキなども作る
大人1人が入るともう満員のベッカーフジワラの外観
小さなこの台の上からおいしいパンやケーキが生み出される
 東武東上線・下板橋駅の改札を出てすぐ左の踏切を渡り、池袋本町通り商店会を歩くことおよそ10分。T字路の手前の右側に小さなベーカリーがある。チラッと見ただけではベーカリーとは分からないほどの小さな店。今回訪れたベッカーフジワラだ。
 経営するのは、今年36歳の藤原敏夫さん。18年前に、広島県内の高校を卒業し、「ポールボキューズ」に就職するために上京した。以来、ベーカーとして修業を重ね、2004年9月、現在地にベーカリーをオープンした。今は、夫人とともに近隣の人々のためにパンを焼く毎日だ。
 開店して7年。縦型ミキサーとコンべクションオーブン(ツジ・キカイ)の2台の機械だけでパンを焼き続ける藤原さんに4・5坪の店舗でベーカリーを始めた経緯を尋ねたところ、返ってきた言葉は「資金が足らなかったんですよ」
 最初から「小店舗」を考えたわけではなく、通常の店舗を念頭に、自宅に近い場所を探していたが、資金が十分ではなかったため、結果として小さなお店になったのだという。オープン当初にかかった費用は、店舗確保の費用と機械代金などで150万円。翌年にはほぼ同額をかけて店を改装したり、また、後にミキサーを買い換えるなどしてきたが、取りあえずは150万円の初期投資で納まった。
 少ない投資で始めた店だが、2008年に日本も影響を受けたいわゆるリーマンショックまでは、仕事をするのが楽しくて仕方がないほどパンは売れたという。
 しかし、リーマンショック以降、現在にいたるまで顧客の財布のヒモは固く、現在の年商は約1000万円だという。



小さいからこそ必要な職人の自覚
小さな店内を有効に使う。朝5時からパンを焼き上げるが、「売り切れごめん」が原則
 初期投資を小さくして、後に大きく育てるというのは、理想的に思えるが、藤原さんはこんなふうに話してくれた。
 「4・5坪の小店舗なので、少ない資金で簡単に仕事が始められると思う人もいるかも知れませんが、ベーカリーの場合は単純な脱サラ気分では難しいのではないでしょうか。何故なら、職人としてきちんと修業を積んでいるからこそ、パン作りといったある意味単調な繰り返しの作業に耐えられると思うからです。修業をした上で、ベーカーとして生きていくのだといった明確な自覚が無ければ、肉体的、精神的な厳しさに見舞われたとき自分を保てないですから」
 ベーカーとして18年間精進を重ねてきた藤原さんだからこそ言える言葉であろう。
 では、同氏が日々作るパンとはどのような製品だろう。



販売中の製品こそが商圏内の売れ筋
今、客から熱い視線を浴びるベーグル。「ベリーベリークリームチーズベーグル」
「イチジクとクリームチーズベーグル」
クロワッサンは、生地の折り方に秘密がある
デニッシュ生地の「豆クロワッサンブレッド」。生地と3種の豆のハーモニーが楽しめる
不動の定番商品の焼きカレーパン
 敢えて売れ筋の製品をあげるとベーグルだという。イチゴとブルーベリーにクランベリーそれにクリームチーズを合わせた「ベリーベリークリームチーズベーグル」(250円)は、ほどよい甘さと歯ごたえが食欲を誘う。「イチジクとクリームチーズのベーグル」(230円)も試したくなる。
 「クロワッサン」(150円)は、皆の口に合うように若干の甘味を加えた。また、この製品の旨さの秘密は生地の折り方にもありそうだ。「豆クロワッサンブレッド」(400円)は、デニッシュ食パンの中に、うぐいす豆、大納言、金時豆を入れたもの。サックリした食感の中に、3種類の豆の甘さが、口の中で混じり合う。食事にもおやつにもなりそうだ。
 食事パンとも調理パンともいえそうな「パン・オ・レギュウム」(150円)は、人参、コーン、グリンピースが生地に練り込まれたパン。具材がパンの食感を邪魔しないので、パン自体も味わえる。肉や野菜を挟んでサンドイッチにしてもOK。自家製の具を使った「焼きカレーパン」(160円)は、不動のレギュラー商品だ。
 イーストの替わりに天然酵母を使うベーカリーも随分と増えた。ベッカーフジワラでも自家製の天然酵母が健在だ。同店の天然酵母はライ麦から起こしたもの。オープン当初から使用している。藤原さんは天然酵母をハード系のパンにしか使わない。ハード系にこそふさわしいと考えるからだ。「田舎パン」(130円)では、ライ麦から取った酵母の特徴がしっかりと味わえる。他のハード系のパンとして、フランスパンをベースにした製品が2種類。「チーズコッペ」(230円)と「エビグラタン」(同)
 菓子パンの中で人気なのは「メロンパン」(110円)と「究極メロンパン」(210円)。究極メロンパンにはカスタードクリームが入っていて、冷やしても美味しい。今、店頭に並ぶ約30種類の製品は「客様が求めた結果」だ。
 ライ麦パンとバゲットは、予約販売で対応している。これらの製品は、ベーカーとしては、日常的に販売したいが、時間をかける割には実績が伴わない。十分に腕を振るいたいがままならない現実がある。
 しかし、冷静に商人として割り切れば、今売れている製品こそが、地域の嗜好といえなくもない。そう考えると、現在ある製品により手をかけることこそ、商売繁盛の基礎となるのは、自明の理であろう。  



地域との結びつきが店の発展に
小学生が書いてくれたチラシ。客とのコミュニケーション作りを大切にしてきた結果のひとつだ
 藤原さんは「まだリーマンショック以前の状態に戻りきれていません」と語るが、取材当日も、大人が一人入ればもう満員のお店に、何人もの客がパンを求めて来店した。開店以来、ベーカーとしてまたベーカリーとして、客とのコミュニケーションを大切にしてきた。店の片隅に「お店は小さいけど話しやすい」「とてもおいしいパン屋さん」と書かれたちらしが張ってある。パン好きの小学生が書いてくれたのだという。人と人との関係を大事に築いていこうと実践してきた一つの結果といえる。小さな店の小さい常連客。将来の店の発展を支えてくれるかもしれない。(W)

SHOP DATA
店名 ベッカーフジワラ
住所 東京都豊島区池袋本町3−1−1
電話 03−3981−6540
営業時間 午前8時30分〜午後8時(但し、売り切れ次第閉店)
定休日 火曜日
品揃え 約30品目
店舗面積 販売・厨房合わせて4.5坪 
スタッフ 1人
年商 約1000万円




原価計算女王
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