特集■看板商品■ / バラエティー化で固定客を維持し、新規客も開拓‐ブランジェ浅野屋 - ブランスリー電子版

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特集/2011年9月号

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特集■看板商品■

バラエティー化で固定客を維持し、新規客も開拓‐ブランジェ浅野屋
「軽井沢レザン」(右)と「軽井沢ブルーベリー」(左)
客が見える場所で焼きたての「軽井沢 Green Tea」が切り分けられる。大量の湯気と1本70センチという大きさは迫力がある
ブランジェ浅野屋 自由が丘店には、ベビーカー連れの客もよく来店する
「フルーツライ」は、発想のもとになったパンはドイツパンだが、ドイツパンの複雑な名前を使わずに、分かりやすい名前にした
長さ70センチもの看板商品
 長野県と都内に7店舗展開するブランジェ浅野屋の看板商品の一つに「軽井沢レザン」(1グラム1・68円)がある。商品名の中の「軽井沢」は、1940年開業の軽井沢旧道本店がある「軽井沢」の地名からとったものだ。
 軽井沢レザンは、1グラム単位の量り売りで提供。一切れから気軽に購入できる。この販売方法は、単身者が多い都内の客に合わせて導入したのではなく、軽井沢旧道本店で昔から行ってきたやり方だ。
 「軽井沢旧道本店は、日本で初めてスペイン製の石窯を設置した店です。石窯の熱は生地の中心部から通るので、大きく成形して焼くと、外はさっくり、中はしっとりと仕上げることができます。軽井沢レザンは1本あたり、重さ1・8キロ、長さ70センチ、幅20センチという大きさなので、切り分けて販売していく必要があったんですね」(ブランジェ浅野屋直販営業部・堀江ゆみさん)
 東京・目黒区の自由が丘店には朝、同社板橋工場で焼き上げた軽井沢レザンが運ばれる。
 出来たての軽井沢レザンは、客から見える位置に設置された大きなまな板の上に運ばれ、約3センチの厚みにスライスされる。
 「出来たてをただ並べるだけでなく、お客様の前でスライスしてお見せすることができます。出来たてであることを効果的にアピールできる、パフォーマンス性の高い商品です」(堀江さん)
 量り売りの販売方法や、店頭でのパフォーマンスには、1本70センチという大きな軽井沢レザンの特徴がよく反映されている。

年配者と若者のニーズを満たす2層構造
 軽井沢レザンが誕生したのは、20年以上前。誕生してからこれまで、長野と都内の全店で不動の人気をキープしている。各店の客層は違っているが、軽井沢レザンの人気は変わらないのだ。最大の理由は、「外はさっくり、中はしっとり」という食感にあるのだろう。
 生地は2層構造。卵を多用したソフトな生地をフランスパン生地でくるむ。ふわふわ、しっとりとした部分と、さっくり香ばしい部分の両方が楽しめる。そのため、ハード系の好きな人と、やわらかい食感を好む人の、両方のニーズに応えられる製品となっている。
 さらに、スライスした断面が幅約20センチと大きく、製品をアピールするのに好都合だ。
 軽井沢レザンは、季節ごとに具材を変えての姉妹品を数多く展開している。断面が大きいために、姉妹品に使う具材の色が引き立つ。春は「桜と若桃の春風スイート」(1グラム1・89円)、桜の時期が終わると「軽井沢 Green Tea」(1グラム1・89円)、秋は「軽井沢キャラメル」(1グラム1・89円)、冬は「軽井沢ホワイトストロベリー」(1グラム1・89円)。そして4年前から通年商品として「軽井沢ブルーベリー」(1グラム1・89円)を販売している。
 「お客様がブログに、断面の写真を『抹
茶のレザンが発売になっていました』などと言ってのせてくれるんです」
 話題性のある季節品を展開することで、見た目も味も変わらない軽井沢レザンをサポートする。固定客を飽きさせず、さらに新しいファンをつかむきっかけを与えている。
 軽井沢レザンとともに長年看板商品として愛されてきたのは「フルーツライ」(1155円、ハーフは578円)。ライ麦パンのヴァイツェン生地に、オレンジピール、レーズン、ナッツ類を混ぜてじっくり焼きこんだパンだ。
 「開発当時ドイツでは、ヴァイツェン生地にフルーツを合わせたパンは存在しませんでしたが、より多くの人にライ麦パンを食べてもらいたいという思いから、柔軟な発想で開発しました。さらに表面のフルーツが焦げ付かないように、薄くのばしたパン生地で包んでいます」
 「フルーツライ」と「軽井沢レザン」は、ヨーロッパの食事パンにアレンジを加えたものだ。「お客様への思いと、新たなアイデアがあれば、その店のスペシャリテとなるのだと私たちに教えてくれている商品でもあると思います」

ShopData
店名 ブランジェ浅野屋 自由が丘店
住所 東京都目黒区自由が丘2‐13‐1 TrainchiD棟
電話 03‐5731‐6950
営業時間 午前8時30分〜午後9時
定休日 なし
品目数 100品目
スタッフ 製造約7人、販売約10人
店舗面積 厨房6.5坪、売り場18坪



商品に2つの関門を設けて不要な商品を除外‐ペッパーズパントリー
オーナーの松井修さん
ペッパーズパントリーの外観
食パンを1辺3センチのキューブ状にカットして作るキューブラスク
「キューブラスク」(小280円、大580円)は、店内で最も目立つ中央の棚に、ポスターと共に陳列されている。ポスターには、「油で揚げておらず、ヘルシー」「人気の食パンが生まれ変わった」などと書いてある
キューブラスクに使用する「食パン」(220円)。1日約180斤が出る人気商品だ
「クロワッサン」(140円)は、ポスターと共に陳列
自信のある商品しか並べない
 葉県木更津市のJR木更津駅から徒歩7分ほどのベーカリー「ペッパーズパントリー」。来店客を出迎えるのは、円を描くように配置された陳列棚に、所狭しと並んだ160品目ものパン。来店客は、好みのパンを見落とさないよう、ゆっくりとしたペースで回遊している。
 「『どれがお勧めですか?』と聞かれたら、『どれもお勧めですよ』と答えます。自信を持っている商品しか並べていませんから、聞かれても困るくらいです」と、同店オーナー松井修さんは話す。
 新しく開発した商品には、2つの関門を設けている。客が求めていない商品を、店頭に並べ続けないためだ。関門の1つめは、客に知ってもらい、食べてもらった上で、好評を得られるかどうかだ。
 「自分がおいしいと思っても、お客様には受けない商品というのは、意外にあります。おいしいと思い込んで作り続けてはいけないので、まずはお客様に食べてもらって、味の判断をしてもらう必要があります」
おいしさについて、客の判定結果を早いうちに回収する。反応のよくない商品についてはすぐに作るのをやめる。
 新商品は、レジ横または、同店の最も目立つ位置にある中央の陳列棚に並べる。160品目もの商品群に埋もれてしまうことを防ぐためだ。特にレジ横では、会計の間に試食をしてもらって反応を見ることができる。
 2つ目の関門は、天板1枚分を売り切れるか否か。天板1枚分、大体24個を出して、しばらく様子を見る。
「天板1枚分を売り切ることができれば、焼く回数を増やしていけます。こうして焼く回数を増やしていけば、その分焼きたてのおいしさを提供することができます」
 店頭に並ぶ商品は、こうして2つの関門を通過しているからこそ、松井さんは自信を持って「どれもお勧めですよ」と答えるのだ。

看板商品はポスターを作る
 どれもお勧め」という商品の中でも、松井さんが特に自信を持っている商品の1つが「キューブラスク」(小280円、大580円)。食パンを、3センチ角にカットして砂糖とバターを染み込ませて、コンベクションオーブンで焼き上げた商品だ。発売開始は5年前。その2年後にポスターを作った。
 「売り始めからお客様の反応もよくて、自分でも『これは売っていきたい』と思っていました。付き合いのあったタウン誌の製作の方に、ポスター作りをお願いしました。ポスターを作るとなると、スタッフの商品に対する思いが一層強まりますね」
 同店はバゲットも販売しているが、松井さんは「バゲットは、ラスク専用に焼き上げたものでないとおいしいラスクにはならない」と言う。
 食パンは1日約180斤出る。数が出るから、焼く回数も1日5回。焼きたてを提供できる。しかし、多く焼く分、客足が伸びなかったときのリスクは高い。
 そこで開発に至ったのが人気商品の食パンを使った「キューブラスク」だ。同商品が看板商品として売れるようになれば、人気商品の食パンと共に売上げを伸ばしていくことができる。2つの商品が互いの相乗効果で伸びていくシステムだ。
 現在キューブラスクは1日に、大きいパックで24袋分が売れている。食パン6本分に相当する量だ。味はシュガーバター味の1種類で、顧客には定番の味となっている。土産としてだけでなく、結婚式などのギフトにも利用されている。
 ポスターを製作した商品は他にもある。定番であり、看板商品である「クロワッサン」(140円)だ。
「長く売れ続けている商品には、その理由が必ずあります。当店のクロワッサンが他店と違うのは、焦がしバターを使っているところです。ポスターでアピールするということは、ひと手間かけていることを自信を持って言えるということなんだと思います」
 もう一つ、最近誕生した同店の看板商品が「チャバタサンド」。これまでの「フォカッチャサンド」のパンを、フォカッチャからチャバタに変えた。3〜4カ月前から販売している。
「サンドイッチの売れ行きを見ていると最近、お客様の嗜好が少し変わったなと思います。当店に来るお客様には、食パンで作った三角サンドはあまり人気がありません。パン屋としても、サンドイッチは食パンよりハード系のパンで作りたいという気持ちもあります。でも、バゲットだとかたくて食べにくい。それでフォカッチャで作っていたのですが、さらに改良を重ねて、チャバタで作るようにしました」
 サンドイッチを求める客と一口に言っても、コンビニで買う人と、ベーカリーで買う人の客層が全く違うという。
 サンドイッチ用に開発したチャバタは、ポテトとライ麦を配合。ひきがなくしっとりとした食感で、具と馴染みがよく食べやすい。
 サンドイッチは40種類揃えており、特に強化している商品群で、全体の売上げの約3割を占めている。
 松井さんは、「ベーカリーが作るサンドイッチ」として、専門店ならではのおいしさにこだわり、日々改良を続けている。


ShopData
店名 ペッパーズ パントリー
住所 千葉県木更津市東中央3‐6‐3
電話 0438‐23‐0061
営業時間 午前7時半〜午後8時半
定休日 水曜日
品目数 160品目
スタッフ 製造8人、販売10〜12人(常時3〜4人)
店舗面積 売り場15坪 厨房17坪
日商 40〜50万円  



様々なパンがところ狭しと並ぶ店内



「どこにでもある商品で、どこにもない味」が条件‐ダイユー 星野良信社長の話
ダイユー 星野良信社長
誰もが知っている商品が看板商品になりやすい
 看板商品の一番大切な条件は、今までパン屋さんで長く続いてきた誰もが知っている商品であることです。具体的に言うと「クリームパン」「カレーパン」「コロッケパン」「焼きそばパン」といったものです。馴染みがない斬新な商品は、一時ブレークしたとしても、長く売れ続ける看板商品にはなりにくいですね。 
 もうひとつ重要なことは、どこにもあるような馴染みの深いアイテムを差別化するということです。どこにでもあるような商品だけど、味はどこにもないおいしさでなければならない、ということです。 それを実現するための手段としては、フィリングを手作りにすることが有効です。「クリームパン」などの、ベーカリーの定番商品には、メーカーから仕入れた出来合いのフィリングが使われることが多かったので、フィリングを手作りにすれば、味の差別化が比較的簡単にできます。
 フィリングを手作りにすることの意味は、味の差別化以外にもあります。近くの競合店が真似しようとしてもできないのです。なぜかと言うと、フィリングを手作りにしようとすると手間が掛かるので、1日300個とか400個とか、ある程度の数が売れないと、採算が取れないからです。
 さらに、1から自分で作るわけですから、どんどん味を変えて、進化させることができます。私たちがプロデュースさせていただくパン屋さんでは、最初は私たちが提供するレシピでフィリングを作るケースが多いのですが、多くの場合、時間がたつにつれてどんどん変わっていきますね。それぞれの店で味を独自に追求して、どんどん進化して、その店の個性が強くなっていくわけです。それも、手作りだからできることですね。

看板商品は店の中で一番売れる場所に置く
 地域性もあります。都内だけで考えても下町と山の手では味の好みは違うし、ましてや日本全体で考えたら味の嗜好はかなり違ってきます。例えば、醤油にしても九州に行くとどろっとしていて、関東に比べると少し甘いんですね。
 新店のオープンのときはチラシをまきます。その中でメインとなる看板商品5〜6アイテムをアピールします。次にそれらの看板商品のポップに工夫を凝らします。例えばカレーパンの場合は、カレーフィリングの作り方とか、中に何が入っているかなどを、できたら鍋でカレーを炊いている写真などを使って紹介します。
 そして、看板商品は売り場の中で一番売れる場所に置きます。一番売れる場所とは、お客さんが入ってきたときに、お客さんから見て一番目立つところです。
 看板商品を最もおいしい状態でお客さんに食べていただくことも大事になってきます。その意味で、焼きたての状態でパンを食べていただけるカフェやイートインは効果的なんです。もちろん、試食も積極的に提供します。
 看板商品を仕掛けたときの結果の出方は、新規オープンの場合と、すでに営業している場合とでは、事情が違ってきます。新規オープンの場合は、チラシを大量にまくので、一度にたくさんのお客さんが来ますから、看板商品として仕掛ける商品も当然多く売れます。一度にたくさんの人に食べてもらって、そのうちの多くの人にリピーターになってもらえれば、看板商品として育っていくスピードも当然速くなります。ですから新規オープンのときは、仕掛ける商品は大量に作れる体制にしておかなくてはなりません。これが、意外とできていないケーが多いようです。
 一方で、すでに営業していて、看板商品を仕掛ける場合は、チラシをまいても新規オープンのときほど多くのお客さんは来ませんので、看板商品として育っていくスピードも当然遅くなり、長期戦になってきます。
 
ダイユー
 ベーカリーの新規出店やリニューアルなどの総合プロデュースを行なう。大型ベーカリーの総合プロデュースに大きな実績を持ち、最近ではコンビニの跡地を利用した「5000万円の投資で年商1億円のベーカリー」を提案している。全国におよそ800店舗の繁盛ベーカリーをプロデュースした実績を持つ。住所は、東京都杉並区下高井戸2-14-9。電話番号は、03-3325-5171。

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