一粒の麦から[2]‐本行恵子 / いつかプロのようなパンを作りたい - ブランスリー電子版

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連載/2011年7月号

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一粒の麦から[2]‐本行恵子
いつかプロのようなパンを作りたい


本行 恵子(ほんぎょう けいこ) パンと食のライター。家庭製パン教室を10年間主宰した後、パン業界専門誌『B&C』の編集記者、編集長として勤務。16年間の在職中、日本各地のリテイルベーカリーや欧米、アジア諸国を訪問し、パンと食文化を取材。現在はフリーの立場で、業界専門誌や企業ホームページの執筆活動、関連団体の支援、企画提案、アドバイザーを行っている。ライフワークは、パンのある食卓の提案。



優勝はシンプルな山型食パン
ふっくらパンコンテストの全国大会入選作品集
ある日のJPB講習会
 日本製粉主催のアマチュアを対象にした「ふっくらパンコンテスト」の実技決勝戦は、日本製粉本社(東京・渋谷区)にあるキッチンスタジオで行われました。規定の8時間内に、仕込みから焼成、後片付けのすべてを終えるというもの。選手2名で一つのテーブルとコンベクションオーブンを使って、時間差をつけて作業のスタートで
す。もっと緊張するかと思っていたら、コンクールだということも忘れるほどリラックスして楽しくパンを作りました。
 全国から集まった決勝に進出した30人の作品は、家庭製パンならではのアイデアや工夫を凝らしたパンが多く、審査員の先生方から高い評価を受けました。審査発表の会場となった新宿の京王プラザホテルの宴会場に作品が展示公開され、いよいよ結果発表です。私の作品は胚芽、レ
ーズン、くるみ入りの生地をプレーンヨーグルトと水で仕込んだ「我が家の健康食パン」。今改めて配合を見ると、副材料のバランスが気になります。残念ながら優勝は逃しましたが、優秀賞で名前が呼ばれた時の喜びは今でも忘れられません。優勝したのは、当時埼玉県新座市から出場した小黒祥子さんのシンプルな山型食パンでした。試食させていただきましたが生地をしっかり熟成発酵した旨味があり、ゴールデンヨットの特徴を生かした素晴らしい作品でした。他にも見た目も配合も魅力的な作品がたくさんありましたが、最優秀賞に選ばれたのは、粉と水と塩とイーストだけで作るごまかしのきかない食パンでした。
 そこで出会った仲間たちとは自主的に勉強会を開き、ご指導いただいた先生方から多くのことを学んできました。中でも「『パン作りは慈しみ育てる』という製パンの基本姿勢を忘れないこと」は、パン作りに携わるすべての人が心にとめてほしい言葉だと思っています。



パン業界へ導かれて

 コンテストでクッキングアドバイザーのライセンスをいただき本格的に自宅でパン教室を10年続ける中で、家庭製パンの限界を感じ始めていました。今なら専門学校もアマチュアにも門戸を開いていますが、当時は主婦が専門学校の生徒になるには少々無理がありました。
 そこで少しでもプロの世界を知りたいと思い、当時購読していたパンの業界専門誌「B&C」に登場するパン屋さんを訪ねては食べ歩き、パンの感想やお店の様子を記録しました。今の時代ならさしずめネットの「食べログ」の世界ですね。
 パン職人が作るパンはどうしてこんなに美味しいのだろう。いつかプロのようなパンを作りたい。そんな気持ちがどんどん膨らみはじめ、知り合いのパン職人さんの推薦を受け、ホテルベーカリーを中心としたプロのパン職人が集まって結成されたJPB(ジャパンプロフェッショナルベーカーズ友の会)に入会しました。講習会では見るもの聞くものすべてが新鮮で、最前列に座り熱心に受講していました。そこで学んだことは、後に記者として取材するときに活かされ大変役に立ちました。
 1991年の秋、私はパン業界の専門新聞を発行するパンニュース社の応接間にいました。同社の製パン・製菓専門誌「B&C」に、家庭製パンの教室主宰者が提案する「ホームベーキングのアイデアパン」というコーナーがあり、それに登場してほしいという依頼を受けて、打ち合わせをしていました。その会議には当時の西川多紀子社長が同席され、「B&C」の編集方針や読者であるプロの技術者や家庭でパンを作る人に役立つ情報提供について、またプロとアマチュアが作るパンの違いやそれぞれの役割や意義を話してくださいました。その時私が提案したパンは、マロン風味のピーナッツの甘露煮をペースト状にし、それをナッペして三つ編みにした「マロン風ピーハニー」、キャラメリゼしたピーナッツをトッピングした「ピーナッツクーヘン」、ピーナッツクランチが入ったビス生地をトッピングした「ピームーン」の3品。落花生で有名な千葉のパン屋さんのために、地産地消を提案した製品です。
 その翌年「パンを知っているスタッフが編集に欲しいので社員になりませんか」という社長のお誘いを受け、パンニュース社に入社し、『B&C』編集部で16年間働くことになります。アマチュアなりではありましたが、パンの製法を理解していたおかげでパン職人の方々やお店の取材はとても楽しくスムーズにいきました。
 好きで始めたパンづくりが、業界専門誌記者の仕事に活かされるとは思ってもみませんでした。人生の最も充実した時期にこの仕事に出合えたことは、本当に幸せでした。





原価計算女王
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