特集■フィリング・トッピング事情■ / フィリングの甘さでフランスの食文化を伝える‐メゾンカイザー - ブランスリー電子版

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特集/2011年7月号

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特集■フィリング・トッピング事情■

フィリングの甘さでフランスの食文化を伝える‐メゾンカイザー
ブーランジェリーエリックカイザージャポンの木村周一郎社長
メゾンカイザー 高輪本店
店内に並ぶ菓子とパンに使われているクリームのベースはクレームパティシエールだ
あえて甘いままのクリーム
 エリックカイザー氏直伝のフランスパンが楽しめる店として、東京・港区に「メゾンカイザー」が誕生したのは2000年。それから約10年の間、本場のフランスのスタイルをそのままに、フランスパンの魅力を伝えてきた。現在、製造販売の8店舗と、百貨店内の販売専門店を全国に展開している。
 対面式のショーケースには、パンだけでなく、キッシュやタルト、ケーキなどの菓子も彩りよく並ぶ。フランスの店舗とほとんど変わらない品揃えだ。
 味も変えていない。ブーランジェリーエリックカイザージャポンの木村周一郎社長は、「レシピはフランスのエリックカイザーと同じです。日本人向けの味に変えることはしていません」と言う。
 フランスの菓子の甘さは、日本人には強く感じられるようで、実際、メゾンカイザーでも「ケーキのクリームは、もう少し甘さを抑えた方がいい」と、顧客から言われたことがあるという。
 「日本人の嗜好に合わせるとしたら、本来は、甘さを変える必要があります。日本人は、煮物にみりんや砂糖を入れたりと、料理に砂糖を使います。一方、フランス料理ではほとんど砂糖は使いません。フランス人は、おやつや食後に食べるデザートのときくらいしか、糖分を摂取するチャンスがないんです。そうすると、フランス人が好む菓子の甘さは、日本人には甘すぎるんです。でも、日本人向けに甘さを控えめにしてしまうと、フランス料理を食べて生活している在日フランス人は『菓子なのに甘くない』という風に困ってしまいます。フランスのレシピ通りに作るということは、フランスの食文化を日本のお客様に伝えることなんです」

しっかりしたベースから様々なクリームが派生
 メゾンカイザーではカスタードは、同じ意味のフランス語の「クレームパティシエール」と呼び、各店舗ごとに作る自家製だ。
 「この店にしかない味があるから、お客様はわざわざ来店してくれる。クリームを
自分たちで作れば、店の特徴を出していきやすいんです」
 クレームパティシエールは2種類のフレッシュクリームと洋菓子用の高品質なバニ
ラ香料を使った、ケーキ専門店の味わい。タルトやエクレアなどの菓子だけでなく、クロワッサンザマンドやヴィエノワズリーなどにも使っている。そのままを使うのではなく、各製品ごとに味を調えてから使うので、製品の数だけ、クリームを用意する手間がある。
 各々のクリームを自家製で用意するためには、それらのベースとなるクリームをしっかり作っておくことがポイントだ。
 「フランス人はクリームの使い方がとっ
ても合理的です。例えば、クレームパティシエールに、アーモンドの粉を入れて炊いていけば、クレームダマンド、カカオパウダーを入れればチョコクリームになりますよね。一番の基本がしっかりしていれば、いかようにも変えていけます。根源があって、そこから派生していくという考え方で、分かりやすいんです」

一つまみのトッピングを効果的に使う
 フランスのベーカリーでよく使うトッピングは、ケシの実、黒ゴマ、白ゴマ、塩、砂糖、あられ糖などだ。
 「フランスでは、やはりパンは食事なんですよね。食事として食べることが多いから、サンドする具材との組み合わせで、食感や風味はどうなるか、という感覚で考えて作るので、トッピングはシンプルなものが多いんです」
 トッピングに使う材料は、生地に練りこんでも使う。フランスで、これらケシの実
などが好んで使われてきたのは、生地の水分量に影響を与えないためでもあったようだ。基本的に、生のフルーツを使わないのも、こうした理由があるという。
 「パンの茶色、ケシの実やゴマの黒、白など、使う色に限りがあるので、ピスタチオの緑色などはきれいに見えます。一つまみでも、刻んでぱらっとトッピングするだけで、よく映えます」
 5月に発売した新製品の「さくら色のブリオッシュ」(315円)は、フランスのサヴォア地方の名物、プラリネロゼを巻き込んだブリオッシュ。
 「色合いが限られていますから、プラリネロゼの赤色が入ると、売り場がパッと明るくなります」
 木村社長がフランスでパンを作っていた10年以上前から、フランスのベーカリーでは定番だったという。
 「赤と言えばいちごですが、フランスではある季節しか手に入りません。プラリネは通年使えるので、保守派のフランス人にとっても、馴染みやすかったのでしょう」
 フランス産のプラリネロゼは、日本で取り扱うようになったばかりだ。ピスタチオと同様に、売り場に華を添えるアイテムとして、活躍していきそうだ。

SHOPDATA
店名 メゾンカイザー 高輪本店
住所 東京都港区高輪1‐4‐21
電話 03-5420-9683
営業時間 午前8時〜午後8時
定休日 不定休
品目数 約100品目
店舗面積 販売スペース10.69坪、厨房スペース約16坪
月商 1200万円



手間とコストを省いてよりおいしく改良していく‐サフラン
サフランの小川佳興社長。柏の葉店のカレーフィリングとあんを担当している
創業当初から、カレーパンのフィリングはビーフカレーが定番。5年ほど前から、揚げるのではなく、ダッチ生地で包み焼き上げるようになった
機械を導入して手間が軽減した分、作れるようになったという、牛すじ肉を入れたカレーフィリング入り「自家製カレードーナツ」(140円)
「柏の葉あんぱん」(140円)は、焼きたての状態で割ると、中のあんこがやわらかく、とろっとしている。小豆の風味が強い。新製品の「お抹茶ゼリィ」(130円)のトッピングにも使用している
サフラン柏の葉店
自家製フィリングを使った定番品
 千葉県北西部に6店舗を展開しているベーカリー「サフラン」。なかでも、敷地面積800坪という広大なスペースに店を構える柏の葉店は、土日ともなると1日130〜140万円を売り上げる繁盛ぶりだ。取材日の平日の昼間、70台の車を収容できる駐車スペースは、車の出入りが絶えない。イートインスペースでは、一人の男性客や主婦らのグループがランチを楽しんでいた。
 幅広い客層に支持される理由の一つに、200種類を越える品揃えの多さがある。
 10種類以上揃う食パンやバラエティー豊富な惣菜パン、サンドイッチのほか、ちまたで話題のパンや、流行のスイーツからヒントを得て開発されたものも数多く並んでいる。
 これだけ豊富な種類がある中でも、常に売上げ上位をしめるのは、クリームパンとあんぱん、カレーパンだという。
 「柏の葉あんぱん」(140円)は、平日は60個、土日は180個売れる。「クリームパン」(130円)は平日は40〜50個、土日は80個以上、カレーパンは2種類あり、それぞれ平日は150個、土日は300個以上売れる。
 これらの商品のフィリングは、どれも自家製で、店舗ごとに作っている。
 クリームパンのカスタードは、創業当時から毎日鍋で炊く。あんことカレーを自家製に切り替えたのは4年前で、電磁調理式の製あん機を導入してからだ。細やかな温度設定がしやすく、水分量などの調節がしやすいという。この機械では、あんことカレーの両方のフィリングを作っている。柏の葉店のフィリングは小川佳興社長が作っているが、「同じ機械を導入している北国分店では、パートさんに任せられるようになった」(小川社長)という。

いい原材料を使うために、機械で手間を省く
 あんは、前日から水に漬けておいた小豆8キロを機械で炊いて一度水をゆでこぼし、水と砂糖各8キロずつ加えて作る。こうして作る約20キロのあんは、2日ほどで使い切る。
 「あんこは自家製の方がコストは断然安くできるから、その分いい品質の小豆を使える。今使っているのは最上クラスの品種の十勝産『古代の詩』だ。小豆の質がいいと、風味の良さが全然違う」
 風味の良さを生かすため、あんの糖度は48度と控えめだ。
 「『甘さ控えめ』が流行っているけど、お客さんは、あんこの甘味が食べたくてあんぱんを買ってくれる。単に甘さを控えたのではなくて、小豆の風味を生かすために糖度を下げたんです」
 カレーフィリングは、ダッチ生地で包んで焼き上げる「ビーフカレー」(180円)のビーフカレーと、揚げて作る「自家製カレードーナツ」(140円)の牛すじカレーの2種類。機械を導入して手間が軽減したことで、2種類を自家製で作れるようになったという。
 ビーフカレーは機械を導入してからレシピはほとんど変わっていないが、それまでは試行錯誤だったという。
 「13年前に一度機械を導入したが水分量の調節が難しかった。メーカーにレシピを渡してオリジナルのフィリングを作ってもらったが、納得できる味じゃなかった。カレーは人気でよく売れるけど、お客さんは自分の家のカレーを想像して、カレーパンを手に取るんだと思う」
 サフラン全店のフィリングの味を決める小川社長は、イタリア料理店などで調理をしていたことがある。こうした経験からも、調理方法や食材の知識はすでに豊富に持っており、さらにテレビや雑誌などの料理特集にも常にアンテナをはっている。
 隠し味にコーヒーを入れたり、トマトはホールトマトにこだわるなど、探究心が旺盛だ。
 創業当初から自家製カレーフィリングにこだわるのは、具材感を大事にしているからだという。
 「昔は、異物混入の検査でメッシュに通していたから、メーカー品の具材はどうしても小さかった。具がごろごろ入っているのが、家で食べるカレーだ。味が少しでも落ちるんだったら、自分で作る。でも、手間をかけすぎてもいけないから、機械を使う」
 あんとカレーフィリングで、重視しているのは、水分量だ。
 「あんぱんもカレーパンも、食べたときのジューシー感が大事なので、包あんができて、離水しない範囲内で、できるだけ水分量を多くしている。原材料が高騰しても、今は値上げはできない。水分量を上げれば歩留まりもよくなる。技術を上げて、やわらかいフィリングを入れれば、おいしくて、安くて、たくさん売れる。カレーなら、材料の中でも安価なタマネギをたくさん入れる。原材料の高騰は、フィリングで吸収できる部分もある」

SHOPDATA
店名 サフラン 柏の葉店
住所 千葉県流山市青田93-1-1
電話 04-7156-7101
営業時間 午前6時30分〜午後8時
定休日 第1・第3木曜日
品目数 200品目以上
スタッフ 販売常時約15人、製造常時約10人
日商 平日70万円、土日130〜140万円



手間をかけたカスタードを他のクリームにも使う‐トーホーベーカリー
自家製のカスタードクリームをたっぷりと包んだクリームパンは、トーホーベーカリーの看板商品だ
カスタードクリームは、大きなタッパーに入れて、冷蔵庫で保存。1日で使い切る
自家製カレーフィリングを包んだカレーパンも看板商品のひとつ
トーホーベーカリーの松井成和オーナー
卵は卵黄だけを使う自慢のカスタード
 東京・三鷹市のトーホーベーカリーは、フィリングについては、カスタードクリームとカレーフィリングに手間を集中させ、独自の味を出すことで、商品の差別化を図っている。
 同ベーカリーの松井成和社長は「クリーム類は、最近はメーカーさんも各社力を入れていて、とてもいいものが出ています。そこをあえて自家製にしているのは、他にはない独自の味を出したかったからです。バニラビーンズを入れて、高級感を出して、なおかつ卵は卵黄だけを使っています」と話す。
 自家製のカスタードクリームには、おいしいクリームパンができる以外にも、メリットがあるという。
 「例えば、カスタードに生クリームを加えてクリームを作るときも、カスタードがしっかりしていれば、独自性のあるおいしいクリームができます。出来合いの抹茶クリームでも、カスタードと合わせれば、独自性のある抹茶クリームに変身してしまうんです。このように、様々なものにオリジナルのカスタードクリームを加えることで、手間をかけずに、オンリーワンのクリームがたくさんできてしまうんです」(松井オーナー)。

安易な自家製は禁物。おいしくなければ無意味
 カレーフィリングも、肉を炒めるところから完全に自家製で作っている。老若男女がおいしく食べられることを基準にして開発したという。
 「牛肉と牛筋を入れています。私は、自家製のカレーフィリングは口溶けがまったく違うと思っています」(松井オーナー)
 同ベーカリーはリニューアルオープンして7年になるが、リニューアル以前は、カレーフィリングは自家製ではなかった。リニューアル以前はそれほど売れなかったカレーパンが、今では平日で150個前後、土曜日は300個以上売れる看板商品に育った。
 松井オーナーは、「必ずしも自家製がおいしいかというとそうともいえない部分があると思います。おいしいものを自分で作らなくてはならないわけですから、それなりに大変さはありますね」ともいう。
 同ベーカリーでは、このほかに、たまごサラダやポテトサラダ、焼きそばなども自家製だ。たまごサラダやポテトサラダは、松井オーナーの父親の時代から自家製で、当時は、そのことが自慢だったという。

SHOPDATA
店名 トーホーベーカリー
住所 東京都三鷹市下連雀1-9-19
電話 0422-43-6311
営業時間 午前7時〜午後7時
定休日 日曜日・祭日
品目数 90品目
店舗面積 販売スペース13坪、厨房スペース17坪



原価計算女王
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