ブリオッシュ生地で大福にもお洒落をさせる‐K.K ヨーロッパン キムラヤ - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
お店拝見/2011年7月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


ブリオッシュ生地で大福にもお洒落をさせる‐K.K ヨーロッパン キムラヤ
「大福あんぱん」(189円)
2代目が大福好きの友人を驚かそうと、大福をパンの中に入れた
 福井県鯖江市のベーカリー「K.K ヨーロッパン キムラヤ」は、東京・銀座の木村屋で修行した初代が1927年に創業した。現在は古谷香住氏が3代目社長を務める。
 今から35年前に誕生した「大福あんぱん」は、2004年のテレビ放映が火付け役となり、インターネット上の食のショッピングサイト「うまいもんドットコム」で1日1600個を売り上げたという話題の商品。
 あんぱんだと思って食べると、もちもちとした求肥の食感に驚く。大福あんぱんが誕生したのは2代目欽一氏のときで、今から約35年前。欽一氏が、パリに住む日本人の友人を驚かそうと、パン生地の中に大福を入れて持っていったことがはじまりだ。このユニークな発想を持つ欽一氏は、パン職人として以外にも、多彩な顔を見せていたという。落語家の林家三平氏のものまねでテレビ出演をしたり、映画「座頭市」に友情出演するなど、「町の有名人だった」(香住さん)そうだ。
 3代目の香住さんは、そんな2代目のことを「人を驚かせるのが好きで、芸術肌。好奇心も旺盛で、海外にしょっちゅう行っていました」と話す。
 海外に行くときには自身のファッションにこだわっていたという。正装の意味で、必ずタキシード姿だったそうだ。
 「タキシードを着た自分と同じように、大福にもおしゃれをさせたい」
 この思いが、大福あんぱんのレシピを決める発想のもととなった。
 「『和』の大福を、『洋』のパンの生地で包もう。それも、いつもよりおしゃれに、パン生地は、ブリオッシュ生地にしよう」
 現在も大福あんぱんは1日400個を売り上げ、すっかり人気商品として定着した。食べた人を驚かす、遊び心があることも受けて、ギフトやイベントの記念品用として、大口の注文が多い。日本全国に冷凍で発送している。



新しいもの好きな性格で独自の製法を開発
取材日の土曜日は、老若男女を問わない客層で賑わっていた。ほとんどの客が車で来店するという
 2代目は約20年前、パリの製パン製菓の展示会に行き、天然液体培養機を土産に帰国した。この機械は現在の「フェルメント・ルヴァン」の初代のモデルにあたる。
 こうして新しいものを取り入れていくのが好きだった2代目は、「パンがあるところにはどこにでも行く」と言って海外を回った。欧米をはじめ各国の製法を取り入れて、独自の製パン法をあみ出していった。
 その象徴的な品と言えるのが、現在も定番人気商品である「ハーフタイプ食パン」。ストレート法でオートリーズをとり、手分割し、ガスのリールオーブンで焼く。製品名の「ハーフ」には、初代が銀座木村屋で習得した製法を礎として、欧米の製法を取り入れているという意味が含まれている。



新しいもの好き」で話題性を掴む
3代目の古谷香住さんと妻の聖津子さん
香住さんの母、豊子さんは販売担当。客の質問に、即座に客の横まで移動し、パンの説明をしていた
 ドイツパンを始めたのも1975年といち早い。当時は「昨日焼いたパンですか」などと言われてほとんど売れなかった。しかし、国内の9割以上のシェアを占める眼鏡の産地である鯖江市には、眼鏡の本場ドイツから帰国した職人が多かった。彼らのほか、ドイツ在住経験のある医者などから、決まった量の需要があった。
 同店のドイツパンは本場の味のドイツパンとして支持され続け、その評判はクチコミで広がっていった。さらに2代目の交友関係から、俳優など著名人の利用も多かったという。
 「2年くらい前から、ドイツパンが美容や健康にいいとして注目されるようになって、今では一般のお客様の購入も増えています。おいしい召し上がり方もお伝えしているので、リピーターになってくれる方も多いです」(香住さんの妻、聖津子さん)
 聖津子さんが同店に嫁いだ約20年前から、食卓にドイツパンが並んでいたという。2代目が「パンだけでは売れない」と、ザワークラウトやソーセージ、ハムなどと合わせた本場のドイツさながらの食事をとっていたそうだ。「ヨーロッパのパンを提供したい」という思いが、客側の視点に立つ姿勢に繋がっていたのだ。ドイツなどヨーロッパから取り寄せたザワークラウトやピクルス、マスタード、オリーブオイルは店頭で販売している。



大福あんぱんの魅力をフランス人に伝える
ドイツパンをおいしく食べてもらえるように、ザワークラウトなどパンのつけ合わせの商品を豊富に揃える
販売担当のスタッフ
通りから中がよく見えるガラス張りの店舗。重厚感のある建物で、老舗の雰囲気が漂っている
 香住さんから「2代目の跡を継ぐユニークさを持っている」として同店のPRを任されているのは、聖津子さん。
 フランス・パリで2010年に開かれた「国際農業見本市」では、聖津子さんが大福あんぱんをPRした。同展示会は、農業大国フランスにおいて、数ある中でも有名で盛り上がる展示会の一つ。 
 フランス人のほとんどが、あんぱんも大福も知らない。その中で、日本人にとっても珍しい存在である大福あんぱんは、どう説明すれば理解してもらえるのだろうか。
 「フランスで誰でも知っていることわざに『幸せは裏の牧場、いわゆる身近なところにある』という意味の『Le Bonheur est dans le pre』があります。このことわざに似せた表現で、『Le Grand Bonheur est dans le pain』と説明しました。意味は『パンの中の大きな幸せ』です」
 大きな幸せとは大きな福、すなわち大福のことだ。「外からは見えないが、パンを割ってみれば、その中に大きな幸せが詰まっていることに気がつく」ということわざのメッセージを、大福あんぱんに込めた。
 「2代目も、友人に大福あんぱんを渡すとき、幸せを食べてもらいたいという気持ちだったんだと思います」
 あんこを食べたことのないフランス人にも、大福あんぱんの味は好評で、おいしくないと言った人は一人もいなかったという。同展示会の出展がきっかけとなって、大福あんぱんは日本とフランスを繋ぐアイテムとなった。パリのベーカリー「エリックカイザー」のスタッフが大福あんぱんを作ったり、パリで開催されるファッションショー「パリコレ」のスタッフの差し入れに大福あんぱんが使われたこともある。
 大福あんぱんは、ユニークな誕生の経緯を持っている。しかしそれだけが語り継がれるのではない。現在も聖津子さんによって、新たなストーリーが生み出され、人々の交流を生み出しているのだ。



SHOP DATA

店名 K.K ヨーロッパン キムラヤ
住所 福井県鯖江市朝日町2丁目3‐20
電話 0778-51‐0502
営業時間 午前9時〜午後6時半
定休日 日曜・祝日
品目数 約80品目
店舗面積 販売約18坪、工場約280坪
スタッフ 製造28人(パート含む)、販売6人
年商 2億4000万円

原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら