つのパンを作る姿は客にとって馴染みの光景‐フレッシュベイク本店 - ブランスリー電子版

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お店拝見/2011年6月号

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つのパンを作る姿は客にとって馴染みの光景‐フレッシュベイク本店
焼きたてのつのパンが並べられる風景は、顧客にとって馴染みの風景となっている
 「つのパンの店」との愛称で親しまれている石川県金沢市のベーカリー「フレッシュベイク」。09年に市内の商業施設に近江町店をオープンし、現在県内で3店舗を展開している。
 大ヒット商品「つのパン」(130円)は、野々市店(石川郡野々市町)では多いときに1日約1000個を売り上げる。円を描くようにカーブした形は、牛の角をイメージさせることから、つのパンとの名前がついた。手でちぎると引きの強さを感じるが、口溶けはよい。程よく塩気を効かせ、飽きがこないことを目指した味わいは、子どもから年配者までどんな層にも好まれる商品だ。店先に備えたテーブル席で、サービスのコーヒーとともに焼きたてのつのパンを頬張ることが、来店客の楽しみとなっている。
 パン生地は仕込んでから、発酵にかける時間は36〜48時間。両サイドから巻き込むようにして角の形に成形したら、天板にのせてすぐに窯に入れる。成形後は発酵はとらない。
 大きくカーブを描いた形のつのパンは、天板1枚あたりにのる数は6つ。4枚差しの窯で、1度に焼く数は24本だ。本店では1日20回ほど、野々市店では40〜50回繰り返し、常に焼きたての状態のつのパンを提供している。同店の顧客にとって、スタッフがつのパンを成形し、焼成して仕上げていく風景は、馴染みの光景となっている。



つのパンとの出合い
フレッシュベイクの藤沢謙聖社長は農家出身。昔から「食に関わる何かを、自分の手で作りたい」との思いがあり、現在果樹園づくりに励んでいる。休耕地であった土地を、5年がかりで改良した。ブルーベリーやイチヂクなどが昨年から徐々に採れるようになってきた。「パンに少しでもいいから使っていきたい」
本店の販売担当と製造担当のスタッフは総勢20人で、16人が社員。製造チーフの河南さん(奥右から2番目)の入社のきっかけは、子どもの頃に食べた「かぼちゃパイ」(40円)。つのパンのことは記憶になかったという。かぼちゃパイは現在も販売されているロングセラー商品の一つだ
 つのパンが陳列された横には「お一人様2本まで」の文字がある。今でこそ、来店客のほとんどが購入していく人気商品だが、創業当初は売れ筋ではなかったそうだ。
 フレッシュベイクを展開するジョアン社長の藤沢謙聖さんは、「つのパンと出合っていなければ、パン屋はやっていなかった」と話す。農家出身の藤沢社長がパン作りに携わるようになったのは、「ベーカリーをオープンして職人を一人雇うのだけど、その補助をしてくれないか」と頼まれたことがきっかけだ。しばらく家業の農家とかけもちで行っていた。
 働いて2年が過ぎた頃、突然そのパン職人がいなくなった。固定客も増え、店は軌道に乗っている。職人と2人体制で営業していたので、藤沢社長が職人の代わりをやらざるを得ない状況となった。
 「最初は、職人がいたときのことを思い出しながら、見よう見まねでした。山食やデニッシュ、ドーナツなどを変わらず作り続けました。つのパンもその中の一つです。でも、つのパンは人気の品ではありませんでした。たくさんの種類を作ると、必ず半端な生地が出ますので、それをもとに作っていただけなんです」
 当時よく売れていたのはデニッシュ類で、当時の流行でもあった。一方、半端生地を使用し、フランスパン生地がベースのシンプルな味わいのつのパンは売れ筋ではなかった。しかし、藤沢社長はつのパンの魅力に気付いていた。



つのパンを売っていくと決めた
看板はつのパンのイラスト。つのパンの店として地元客に愛されている
 「つのパンをどうやったら売っていけるか」
 このことを考え、自分の店を持つに至る。現在の本店から少し離れた場所にテナントとして、5坪の売り場の店を構えた。今から20年以上前の88年12月、「フレッシュベイク」が創業した。
 「商品が残っているから、周りが真っ暗になっても、夜9時頃まで店を開ける日が続きました。1人で製造と販売をしていましたが、3カ月頃からようやく、作るのが間に合わないようになってきたんです」
 日商は7万円くらいになった。しかしそのときも、つのパンは売れ筋の商品ではなかった。
 同店の看板に描かれているのはつのパンだ。買い物袋にも、つのパンのイラストが中央に配置されている。これは売れ筋商品となってからではなく、創業当初からのことだ。
 「つのパンのイラストだと、何屋かわからないと、看板を発注したときにも言われました。だからまず、つのパンを知ってもらうことから始めようと思ったんです。食わず嫌いをなくしていきたいという思いでした」
 しかし、看板や買い物袋でアピールしていても、なかなか効果が出なかった。そこで、購入客につのパンを一つずつ、無料でサービスしていったという。
 しばらく続けていくうちに、売上げが10万円になった。つのパンが売れ出してからだった。
 日商が30万円を越えるようになったのは、創業後6年がたった頃。従業員も増え、厨房も手狭になり、現在の場所に本店を移した。さらに2006年に野々市店、2008年にフィリングなどを製造するセントラルキッチン「J・Fファクトリー」(金沢市古府)、2009年には近江町店を構えた。



2つ食べても飽きのこないパン
つのパンと同様、あんぱんなどの定番商品も創業以来変わらぬ人気。「小倉スペシャル」(130円)や「クリームパン」(130円)、「ジャムパン」(140円)など
「ひれかつ三角サンド」(250円)のカツは、カット済みのヒレ肉を仕入れ、店舗で筋を切るなどの下処理をしてから、生パン粉をまぶして揚げる
 「甘いとか辛いとか、味の濃いものは飽きてしまうんです。おいしくても2つ3つ食べたら、もう次はいらなくなる。それではベーカリーとしては困るわけで、毎日買いに来てもらえるように、飽きのこない、バランスのいい味にしなくてはいけません」
 つのパンをはじめ、あんぱんやクリームパン、カレーパンなどの定番商品を、いかに大事に育てていくかが重要だという。
 あんこは、和菓子メーカーの間でも評判の高い北海道の音更町産小豆を使用。中国産なども含めて、いろいろと試してみた結果だ。あんこやカスタード、カレーなどのフィリングだけでなく、惣菜パンに使うソースやパスタも自家製だ。
 「納得のいく味を求めると、自家製に行き着いてしまうんです。カツサンドのカツも、冷凍品や揚げ済みのものなどを試しましたが、店で生パン粉をつけて揚げたものには、やっぱりかなわない。納得がいかないんです」
 フィリングやソースをはじめ、バターロールや菓子パン、ドーナツの生地などは、セントラルキッチンで、12人の従業員が一括して製造している。店舗ごとの差異をなくすとともに、効率化を図る

毎日通っても飽きのこない店構え
どんな年齢層の人が来ても落ち着ける、ヨーロッパの田舎をイメージした店内のインテリア。飽きのこない内装を目指し、だいたい5年おきに改装している
 本店はこれまでに、リニューアルを3回している。5年に1度のペースだ。
 「ヨーロッパの田舎風というベースの部分はずっと変えていません。前回のリニューアルでは、入り口部分に扉を足しました。差し込む日の光を、少しやわらかくしたかったんです」
 店内に置かれた小物などの雑貨は、ヨーロッパから買ってきたもの。年数が経ってただ単に汚れていくのではなく、古さが良さに変わっていくようなインテリアを目指している。雰囲気を変えるだけが目的ではなく、飽きのこないデザインを目指し、改良を続けているのだ。
 「将来的には、店の入り口前に野山の自然をイメージした草花を植え、パンを買うだけでない楽しさも提供していきたいです」
 大ヒット商品、つのパンを誕生させた背景には、商品だけでなく店構えに対しても、飽きがこないということを重視する姿勢があった。
 「ケーキはおいしくても、2日続けて同じ店には行かないですよね。でも、パンは主食だから、おいしければ毎日でも通ってくれる。だから店構えも、商品と同じように、飽きがこないデザインであることが目標なんです」

SHOP DATA

店名フレッシュベイク本店
住所石川県金沢市三ツ屋町2‐3
電話076-237‐7577
営業時間午前7時〜午後7時半
定休日月曜・第3火曜
品揃え約150品目
店舗面積販売スペース10坪、厨房スペース20坪
スタッフ20人
日商58万円 

原価計算女王
原価計算女王

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