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| 食のトレンドを追う/2011年4月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

| 「シャッター街の復活を」市の要望で始まった学生カフェ | |
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東京・国立市にある「Cafeここたの」は、NPO法人「くにたち富士見台人間環境キーステーション」(略称KF)の活動の一環として、一橋大学のサークル「Pro‐K(プロック)」が中心となって運営している。同サークルは、他にも、地元・国立産の野菜と食材を扱う店や、市民のための多目的ホールの運営、国立市富士見台にある3つの商店街を活性化させるフリーペーパー発行など、多岐にわたる活動を行っている。
現在、「ここたの」は、約10名の学生スタッフと3名の市民スタッフが切り盛りをする。店長を務めるのは商学部2年生の大塚達哉さん。店長を務めて1年ほどになる。社会人になったときに学生時代の経験が生かせることがしたいと、Pro‐Kに入った。 「ここたの」がオープンしたのは2003年。当時、「ここたの」が入る商店街「むっさ21(富士見台名店街)」は、空き店舗が目立ち、商店主たちは頭を悩ませていた。そこで、国立市が大学側に協力を要請し、カフェを開業させることとなった。最初はゼミの一環として始まり、次第に学生たちが自主的に活動を広げ、現在はサークルとして国立市の町づくりに参加している。 カフェオープンの資金は、都・市・商店街などから出たKFへの補助金の一部を活用。商店街理事長による援助もあった。オープン後のテナント料はしばらく無料で、現在も通常の半額で借りている。店内に温かみを演出している木材は、大学のつてを頼りに長野県朝日村から不要となった間伐材を無料で譲ってもらった。 オープン当初はお客さんが定着しないなどの苦労もあったが、運営面の工夫と改良を経て、現在は軌道に乗り、商店街の賑わいも復活した。「ここたの」以外にも、KFが行うさまざまなイベントが商店街に人を引きつける。 「子どもたちが足を運びやすくなるなど、学生が関わるからこその効果もあるのかな、と励みになりますね。やりがいも達成感もありますよ」(大塚さん) |

| 非営利でも、工夫とシビアな経営戦略は欠かせない | ||||||||||
おいしいカフェ飯やスイーツなど、充実のメニューは、季節感を重視してスタッフ全員で考え、市民スタッフやお客さんの意見も取り入れて試食会を経て決定される。最近は、おいしいスコーンの研究に余念がない。新入生は、カフェのウリである有機栽培のブレンドコーヒーの淹れ方を、お客さんに出せるまで何十回となく練習する。 地域密着へのこだわりとして、食材は、大部分を商店街の店から仕入れる。 「お客様に『このパンおいしいわね、どこの?』と聞かれたら、『商店街のベーカリー清水さんです』と、各店の魅力を紹介できます。また、買い物でお店の方と対話することで、スタッフが一緒に商店街を活性化させよう、という思いを強くするんです」(大塚さん) 営業努力も欠かさない。毎週水曜日の経営会議に加え、店長がメンバーを決めて流動的にいくつかのチームを組み、1年に2回、合同の戦略会議を開く。そこで、改めて店作りの方向性を確認。「顧客満足度が下がっている」という意見が出たら、チームごとに話し合う。 また、「人と人との対話」をコンセプトに、数多くのイベントやフェアを企画。イベントは、「おりがみ教室」や「キャンドル作り教室」、「ケーキ教室」、「マジック教室」など、バラエティ豊か。現在、全国的な広がりを見せているコミュニティビジネスについて対話する「コミュニティビジネストーキングカフェ」には社会人も訪れる。 最近はドリンクのテイクアウトと、フリーペーパーの発行も開始した。 利益は、KF主催のイベントや、安くておいしいメニューの提供、スタンプカードの割引などで還元している。 ひらめいたアイデアを実際の行動に移すことができる点が、非営利カフェならではの強み。各種イベントは開店前後や定休日などに行い、空いている時間を積極的に活用している。 市民スタッフは、ボランティア目的ということもあり、親しみやすく会話も弾み、常連さんも多いよう。「地域の居場所としてのカフェ」ならではの暖かみを感じた。 | ||||||||||

| 店長の苦労と醍醐味
「ここたの」は、市や商店主など地域の力を借りている非営利目的のカフェだが、店を開く以上は赤字を出さずに運営しなくてはいけない。その点で、やはり店長の責任は大きい。常に店内を客観的に見て、どう動くかをスタッフに指示する。カフェの代表として定例会に出席したり、講演を行うこともある。スタッフそれぞれの得意不得意を把握しつつも、成長してもらわなくてはいけない部分は指導をする。一般企業での管理職や社長の立場と変わらず、人を使う難しさもある。
「ただの仕事場ではなくサークルという一面もありますので、この活動にどれくらい力を注げるのか、他にどんなことをしているのかなど、スタッフのことをよく知り、楽しみながら取り組んでもらえる工夫をしています」(大塚さん) 一方で、店長だけが感じられる醍醐味もある。大塚さんが最も充実感を感じた仕事は、内部環境の充実だ。 「店長になってから半年後にアンケートを取ったら、『カフェ業務が忙しくてサークルを楽しめていない』という人が多かったんです。そこで、ご飯を食べたり飲み会をしたりと、カフェの業務以外で集まる機会を増やしました。そうしたら、お互い普段は話せないことや相談などをしやすくなって。今では、スタッフの誕生会もやるほどです。仕事を離れた場所で話をすることって重要ですね」(大塚さん) スタッフ同士の絆とお互いに対する信頼と思いやりが強まり、報告・連絡・相談もスムーズになった。「スタッフが楽しみながらカフェに関わってくれるのが嬉しい」と大塚さんは話す。 「商学部でビジネスを学び、『ここたの』では実社会での『行動する力』が養われていると実感しています。社会に出たら、大学と『ここたの』で学んだ両方をうまく生かして、行動できる社会人になりたいです」(大塚さん) 地域の市民同士の交流と活性化のために、真剣に経営に取り組む学生たちのカフェ。そこには、一般の商業施設にはない居心地のよさがあった。地域社会の絆を取り戻そういう動きが盛り上がっているなかで、興味深い挑戦であることはもちろんだが、「ここたの」を卒業した学生たちが、今度は社会でどんな新しい活動をしていくのか楽しみだ。(U) |

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