父が無言で伝えた真摯なパン作り-ブレーメン - ブランスリー電子版

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お店拝見/2011年3月号

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父が無言で伝えた真摯なパン作り-ブレーメン
店主の長嶌大輔さん(中)、経験7年の斉藤さん(左)、昨年10月に初めてベーカリー勤務を始めた富永さん。他に経験3年の技術者がいる
黄色い外壁が人を呼ぶブレーメン。出窓のバレンタイン用飾り付けを中年の夫婦が見つめていた
約10坪の店内。上の棚には食パンの3斤棒が並ぶ
取材中の午後2時から3時の間にも、途切れることなくお客が来店した
 京浜急行線金沢八景駅からシーサイドラインに乗り換えて、海の公園柴口駅で下車、海沿いを本牧方面まで続く産業道路を八景方向へ5分ほど歩くと黄色の建物が目に飛び込んでくる。これから訪れるブレーメンだ。数年前まで薄いブルーの外壁だったが、大家さん好みに塗り替えたのだという。今では、目立つので、パンを求める人々に、「ここだよ」と明るく位置を示す、まるで灯台のように見える。
 ブレーメンがオープンしたのは1990年12月。現在二代目の社長である長嶌大輔さん(38)の父・圀好さんが設立した。漁港のある現在地にオープンを決めたのは、これから発展する港町だと考えたからだという。そして、店名の由来は、貿易港として知られるドイツの港町、ブレーメン。同じ「港」を意識してのことだ。加えて、働き者のロバ、犬、猫、ニワトリが集まり、仲良く暮らしたというグリム童話の物語「ブレーメンの音楽隊」のように、皆が気軽に来店できる場所を提供したいとの思いもあった。
 13年の経験を持つ長嶌さんがブレーメンに入って10年になる。大学卒業後百貨店内のベーカリーで3年間修業。その後しばらくして同店へ。今ではこの本店のほか金沢店(電話045‐786‐0708)とカフェの関内店(電話045‐662‐8345)の3店舗を社長として束ねる。
 長嶌さんが本格的にベーカーを目指したのは大学生のころ。高校生のとき、父親の圀好さんが、初めてのリテールベーカリーとして現本店をオープン。学給パン中心のそれまでとは異なる大転換であった。一からベーカリーを作り上げていくことに魅力を感じるとともに、父親のパンに向き合う真摯な姿勢を見続けたことが、今の長嶌さんのパン作りを支えているという。



お客との共同作業が生む人気商品
あんがたっぷり入った「八景あんぱん」
ルバン種を使ったイギリス食パン
トースト用のブレーメンブレッド(右)と、サンドイッチ用の「上食パン」
 ブレーメンには朝7時の開店と同時にお客が来店する。9時までが最初の売り上げのピークだ。4時から菓子パン類を焼き始め、開店の7時までには全アイテムの65〜70%を揃える。一段落する間もなく、次のピークである正午から午後2時に備える。出来るだけ多くの品数を揃えるのが常であるだけに忙しい。
 いつでも商品を切らさないように心がけているのには理由がある。開店当初、今ほど人家や工場があるわけではなかった。にもかかわらず、来店するお客が絶えなかった。そのため、品揃えに気を配ったのだ。その経験が現在も生きている。
 長嶌さんは、パンの奥深さを感じつつ「楽しみながら何でも作るのだという気持ちでパン作りに取り組んでいます。それに毎日が勉強なんです。お客様が商品を買ってくださることが『勉強』の結果なのだと思うと、もっと私たちの成果をお客様に味わってほしいです」と話す。
 ブレーメンのパンを味わってくれる多くが主婦。でも、会社員や中高年の人々も同店の味を支える。団地もあり工場地帯でもあるので、特に朝は通勤途中に購入する人も数多い。客単価は、平日が600円以上、土・日は700〜800円だ。月間の売り上げは、本店、金沢店のパン部門で約800万円。
 食パン・ハード系、菓子パン・デニッシュ、調理パン、サンドイッチなど120種類の中で一番の売れ筋は食パン。「ブレーメンブレッド」は、原料のミルクにこだわったコクのあるバターと蜂蜜を使ったトーストに合う商品(1斤250円、1・5斤375円、3斤750円)。「上食パン」はリーンな配合でサンドイッチ用(同210円、315円、630円)、そして自家製のルバン種を使用したトースト向きの「イギリス食パン」(同280円、420円、840円)。これらは3斤棒もよく売れるという。
 人気商品は、卵黄やバターをふんだんに使いリッチな生地に仕上げた「八景あんぱん」(170円)。和菓子のように、あんがたくさん入っている。「カレーパン」(150円)は、ルーから手作りする。多い日には1日に100個売り上げる。食パン生地で仕上げた「田舎パン」(110円)や1日1度の焼き上げが、お客の求めで2度焼くことになった「アルザスロール」(150円)も捨てがたい。レーズン種の天然酵母を使った「ノアレーズン」(350?440円、130?170円)も隠れた人気商品だ。



お客様第一を貫く経営姿勢
お客の要望で1日に2度焼くようになったアルザスロール
食パン生地で作った田舎パン
天酵酵母が生きたノアレーズン
 ブレーメンは、価格の安さにもこだわりを見せる。「パンは毎日買ってもらうものですから、より多くのお客様の手に届く価格であるべきだと考えています」と長嶌さん。お客や同業者からも「値段が安い」と言われる。
 旬のものにこだわる野菜は、青果店に依頼して仕入れる。例えば、トマトは三浦産や金沢産を使う。こうして仕入れた野菜を使って、調理パンも季節ごとに入れ替える。良いさつまいもが入ったときに作るさつまいものモンブラン(220円)もある。取材当日、アナゴが上がったと漁港から連絡があった。近々アナゴパン(160円)の販売が始まる。アナゴの切り身にカレー味をつけてフライにし、ドーナツ生地に包む。食べてみたい。



社会貢献の活動も熱心に行う

 若い世代の経営者の集まりである「ホイートライフクラブ」がある。同クラブは、2003年から2年に1度横浜で開催される、障がい者の人々のパン・菓子つくりコンテスト「パン・菓子甲子園」を応援する。旅費や滞在費は自己負担なので出場をあきらめる人もいるという。多くの人たちに参加してもらうために、募金活動を実施している。他者のことを考えた経営姿勢はここにも生きている。



SHOP DATA

店名 ブレーメン
住所 神奈川県横浜市金沢区柴町345−86
電話 045−788−0520
営業時間 午前7時〜午後7時
定休日 不定休
店舗面積 販売10坪、厨房10坪
品揃え 120品目
スタッフ 製造4人(社員)、パート製造・販売各15人(3店舗含む)


原価計算女王
原価計算女王

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