周りの環境は変わっても、30年以上続くサンドイッチ専門店‐北海ベーカリー - ブランスリー電子版

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お店拝見/2010年12月号

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周りの環境は変わっても、30年以上続くサンドイッチ専門店‐北海ベーカリー
店内のショーケースには「タマゴサンド」(150円)や「ミックスサンド」(200円)など、定番のサンドイッチが約12種類。作っているのは酒田礼子さん
入り口のガラスの引き戸が懐かしさをかもし出す、「北海ベーカリー」
「ヒレカツサンド」(330円)。女性客なら、食べやすいように3切れにカットしてくれる。ヒレカツに使用する肉は、筋や余分な脂身を取り除くなど、丁寧に下処理をしており、パンと良く馴染む柔らかい食感に仕上がっている
秋葉原の電気街の賑わいから少し路地を入っていくと見えてくる「北海ベーカリー」。先代が北海道出身だったことが店名の由来
家電とアニメの街として昼夜を問わず賑わう秋葉原駅周辺
30年以上、使い続けているコロッケの型。これで作ったコロッケで「コロッケサンド」や「コロッケロール」(各170円)を作る
 今や家電とアニメの街として外国人観光客にも人気の秋葉原。賑わう大通りから少し路地を入っていくと、入り口のガラスの引き戸が懐かしさをかもし出す、「北海ベーカリー」がある。
 60年以上前からこの地に佇む「北海ベーカリー」は、洋菓子とパンの製造、販売を経て、現在はサンドイッチの専門店として営業している。「タマゴサンド」(150円)や「ミックスサンド」(200円)、「メンチサンド」(200円)など、定番の味が約12種類揃う。
 34年前から同店のサンドイッチを作り続けているのは、酒田礼子さん。店主の哲さんと結婚後、哲さんの父親から同店を受け継ぎ、夫婦二人三脚で「北海ベーカリー」を営んできた。
 「この周りも随分変わりましたよ。地価も大分上がって、長く続いていた飲食店がなくなったり。代わりに高層マンションや別の会社ができて、店に買いに来るお客さんも、知らない人が増えました」
 周囲の環境が変わっても、北海ベーカリーは依然としてこの地にあり続けている。それにはどんな理由があるのか。
 「今は300円でお弁当が買えたり、250円で牛丼屋さんに入れる時代。この前来たサラリーマンの男性は、『今日は豪華にヒレカツサンド。楽しみにしてたんだ』なんて冗談を言って買っていきました」
 サラリーマンのランチにかける金額は不景気に伴って、年々下がり傾向だというが、弁当や牛丼チェーン店が多く集まる秋葉原界隈では、その傾向は著しい。価格競争は激しく、他のベーカリーやおにぎり店だけでなく、牛丼店などとも勝負しなければならない。
 「価格は、この約30年間で、できるだけ上げないようにしてきました。消費税が3%になったときは10円、5%になったときは50円、各商品を値上げしたっきりです」
 常連客の中には、30年以上、毎朝通い続けているという女性もいる。また、新入社員が先輩に連れられて来店し、その後常連となるケースもある。
 また、社内のパーティーや仕事納めなどの際に、大量の注文を受けることも多い。そのほか、入れ替わりの激しい秋葉原地区の商店などの、改装業者やオープンニング準備のスタッフらの食事としての注文も受ける。
 「サンドイッチは作業中でも片手で食べられるし、大勢揃っても、みんなが食べやすい、定番の味を揃えていまから」



老舗とんかつ店の味を支え続ける
東京・台東区にある人気店「ペリカン」の食パン(左)も販売している。ペリカンの食パンは予約をしないとなかなか買えない人気の品とあって、近所の顧客や喫茶店などが購入していく。写真右は工場から仕入れているパン粉用の食パン
常連客はこの椅子に座り、礼子さんと話しながら食べていく
 同店ではパンは焼いていないので、工場から食パンを仕入れる。夜中の2時に食パンが届くと、店主の哲さんが毎朝6時にその耳をカットしていく。
 2つの工場から届く食パンの量は3斤食パンが150本と2斤食パンが数十本。そのほとんどは、サンドイッチ用ではなく、とんかつ店のパン粉用として卸すためのものだ。
 同店は、創業から約30年間は、菓子とパンの店として、ケーキやパンを製造して卸したり、プリンを焼いて店頭で販売していた。
 その後世代交代を機に、パンと菓子の製造はやめた。パン粉の製造と卸は続行し、新たにサンドイッチ専門の店としての店頭販売を始めた。
 同店から、老舗飲食店の集まる上野周辺までは歩いて数分の距離だ。店主の哲さんは、サンドイッチ用のヒレカツやメンチを揚げ終わると、自転車にパン粉を乗せて、上野周辺の料亭や老舗とんかつ店の本店などに配達に行く。配達から戻ると、礼子さんが作ったサンドイッチを2つほど食べ、今度は車で、同じ都内の中野方面に配達に行く。本店から独立してオープンしたとんかつ店が多くあるのだという。配達を終え、戻るとまたサンドイッチを食べる。仕事の合間に食べるのにちょうどいいサンドイッチの存在がここにある。
 サンドイッチの店頭販売は、土日と祝日は休みだが、パン粉の配達は1年中休みがない。特に昨年は年末年始も休みがなかったという。元旦も営業した百貨店に出店しているとんかつ店に配達に行ったためだ。



客一人ひとりの注文を受け入れる姿勢
店主の酒田哲さんと夫婦二人三脚で北海ベーカリーを営む礼子さん。笑顔と元気の良い声で客を迎える
入り口横にはサンドイッチのメニュー表が貼ってある
「タマゴサンド」(150円)。ところどころに入っているオレンジ色がかった黄身の色が食欲をそそる。これは、固ゆで卵をベースにしたフィリングに半熟にゆでた卵を入れているため
「サラダサンド」(150円)。サラダの具はジャガイモ、ニンジン、キュウリ。苦手な人が多く、香りの強いタマネギは入れていない
サンドイッチのほか、ロールパンを使用した「コロッケロール」(170円)や、あんぱん、デニッシュなどの菓子パン類もある。菓子パン類はサンドイッチに一品プラスして購入する人が多い
 昼のピークを過ぎた同店のショーケースには、サンドイッチが1品ずつ、または商品名と値段だけ表示してあり、置いてないものもある。
 「売り切れですか」と聞くと「今作るから待ってて」と、その場でサンドした作りたてを出してくれる。残してある1品だけのものは、それ自体がサンプルの役割を担っているという仕組みだ。
 「具は全て手作りで、保存料とか一切入れていないから。サンドしたてがおいしいしね」と礼子さん。キュウリが苦手という客や、からしがだめだという客の細かな注文も全て聞き入れる。笑顔と元気な声で迎えてくれる礼子さんだからこそ、客も細かな注文がしやすいのだろう。
 中には「今日はご飯だけ持ってきたからハムカツとキャベツの千切りをください」という客もいるという。
 作った商品を販売するというより、来店客一人ひとりの注文を受け入れていく。そんな姿勢の北海ベーカリーは、店の佇まいは変わらずとも、客一人ひとりに応じるごとに、変化が止まないベーカリーだと言える。



SHOP DATA

店名 北海ベーカリー
住所 東京都千代田区外神田6丁目9‐3
電話 03‐3831‐6637
営業時間 午前8時〜午後9時
定休日 土・日曜日、祝日
品揃え サンドイッチ約12種類、そのほか菓子パン類
店舗面積 約15坪
スタッフ 2人
年商 約400万円



原価計算女王
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