記事の閲覧
| <<戻る | 写真をクリックすると拡大写真が見られます。 |
| 特集/2010年11月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 発酵食品がパンをおいしくする
日本の食生活に欠かせない味噌と酢。これらは穀物などを発酵させてつくる発酵食品だ。同じく発酵させて作るパンに加えると、どのような相乗効果があるのか。今回は味噌、酢、さらにリキュールを使ったパンを取材。
|

| 酢 | |
|
酢ムリエのサワーロール
OSUYA 住所 東京都中央区銀座4‐6‐16 電話 03‐3561‐7401 ふわふわ、モチモチの食感がよみがえる 「再び、モチモチとした食感に戻るんですよ」と笑顔で話すのは、「酢ムリエ」の内堀光康さん。内堀さんの開発した酢入りの「酢ムリエのサワーロール」は商品化はまだだが、焼成後1週間が経過しても、電子レンジで加熱するとふわふわ、モチモチの食感がよみがえる。果実酢を10%、粉やイーストなどと一緒に生地に加えることで、うま味のある保存性の高い酢ムリエのサワーロールが完成した。 創業明治9年の内堀醸造取締役副社長の内堀さんは、自らを「酢ムリエ」と名乗り「すっぱいだけではない、酢の魅力と楽しみ方」を現代のライフスタイルに合う形で伝えている。果実酢を水や炭酸水で割ったドリンクや、ソフトクリームにソースとして酢をかけたメニューを揃えたショップ「OSUYA(オスヤ)」の展開では、日本古来の酢の新しい一面を切り開く。 「酢ムリエのサワーロール」は、今秋9月、銀座三越1階にオープンした「OSUYA」で販売を始めたばかりの「もちもちパヴェ」という商品の原型となった。同ショップイートイン専用の「もちもちパヴェ」は、注文後温めて提供。ふわふわとしていながらも、噛むとモチモチとし、口どけが良い。温めることで酢が揮発し、酢特有のむせ返る感じがしない。セットで付くデザートビネガー「ローズヒップ」を付けて食べると、パン生地の中のバターとビネガーが融合し、豊かな風味が口中に広がる。また、適度な酸味に唾液が誘われるので、口の中がぱさぱさしない。「お茶や水なしで食べられます」と内堀氏。 |


| 酢は主役のパンを引き立てる調味料 | |
|
「もちもちパヴェ」ともう一つ、「OSUYA」のイートインメニューで提供しているのが、ピクルス液に漬け込んだマスタードの粒を生地に混ぜ込んだ「テイスティーセレアル」。ピクルス液は、りんごの酢と甲州ぶどうのワインビネガーで作り、澄み切った香りに仕上げたもので、マスタード粒の香ばしさを引き出す。
トースターで温めると、香ばしさが強すぎてしまうというテイスティーセレアルは、レンジで温めて、カッテージチーズを付けるのがおすすめ。カッテージチーズはオーガニックの酢を使い、負荷をかけずに作ることで臭みやクセのない透明感のある味に仕上げたオリジナル。パン自体の味を邪魔することがない。 「付け合せのカッテージチーズやフルーツビネガーにしても、パンをおいしくするために用意したものです。あくまでも、主役はパン。おいしいパンにするための調味料としてのお酢です」 「酢は酢の物のすっぱいイメージが強いですが、うま味や甘味、素材の味を引き出すために使うなど、すっぱいだけではない酢の使い方を知っていただたいです」 内堀氏は、パンだけでなく、酢を使ったスイーツも開発しており、「ベーキングパウダーを使ったマフィンに酢を入れたら、とってもジューシーに仕上がったんです」と笑顔で話す。また、酢を使ったバターは半年もの間、菌類が増えず、風味も落ちなかったという。 今後さらに「OSUYA」から飛び出していくスイーツやパン。クリスマス時期には、「クリスマ酢ケーキ」を販売予定だ。これらには、酢のあらゆる顔を知る「酢ムリエ」の内堀氏の「酢を広めたい」という気持ちが込められている。 『酢ムリエのサワーロール』 (材料/4個分) 強力粉 200グラム ドライイースト 4グラム 上白糖 3グラム 塩 2.5グラム フルーツ黒酢 36ml 牛乳 144ml バター 20グラム (作り方) ?全ての材料を混ぜ合わせ、生地を作る。このとき、ドライイーストに塩と水分が触れないようにする。 ?生地を4等分にし、丸めて乾燥させないように10分休ませる ?生地を丸め直し、40度Cで約30分発酵させる ?180度Cに温めたオーブンで12〜15分焼く |
| 味噌 | ||||||||||
加工組合さくら 住所 長野県松本市梓川倭4175‐1 電話・FAX 0263‐78‐1680 馴染みの味噌パンと対象的なものを 「味噌パンは、小学生の頃、入学式や運動会などの行事がある毎に配られていて、よく食べていました」と話すのは、長野県松本市にある加工組合「さくら」で事務長を務める倉科喜美子さん。 現在、信州名物の一つともなっている味噌パンは、松本市一帯の学校では昭和40年頃まで、祭事の際に配られていたという。その味噌パンとは、イーストではなく重曹で膨らませた、焼き菓子に近いパンだ。形状は平たく、食感はさくっとしている。 倉科さんの開発した、加工組合「さくら」の「米粉やわらかみそパン」は、昔ながらの味噌パンとは対象的に、カップケーキのような見た目で、食感はふんわり、しっとりとしていてやわらかい。 「昔ながらの味噌パンも好きですが、味噌パンのイメージをガラッと変える商品を作りたいという気持ちがありました」と倉科さん。 本体のふわふわの生地の上には、バター、卵、味噌、白胡麻などで作った「味噌ルー」がトッピングされている。 「『味噌っぽいパン』にはしたくなかったんです。だから、生地自体には、味噌を2〜5%程度の量に抑えています。風味というよりもしっとり感が出ます。トッピングの味噌ルーに、『味噌感』を集約して、全体のバランスを付けています」と倉科さん。 さらに、隠し味として発芽玄米の粗挽きを入れているのだが、ふわふわの生地と味噌ルーとで、粒の大きさを変えるというこだわりようだ。ふわふわの生地には風味付けとして細かく挽いたものを入れる。味噌ルーには粗めに挽いたものを入れて、かりっとした歯応えで食感にアクセントを付ける。 「新しく開発したレシピを見てもらうと、商売にならないとか、手間がかかって大変などとよく嫌がられます(笑)。県産の材料と手作りの食材を使って、安心・安全であることは大前提として、『わざわざ買いに来てくれるおいしいもの』にするためのこだわりを大切にしています」 米粉は県産米100%、味噌は自家製、発芽玄米は地元梓川で栽培されたものを使う。これらの地元の食材と食文化が詰まった米粉やわらかみそぱんは、06年に「信州味のコンクール」で最優秀賞(県知事賞)を受賞。今や信州を代表する名物となった。 さらに、米粉やわらか味噌パンの評判は、クチコミで広がっている。先日、岐阜県の自動車販売店から300個のオーダーがあった。景品として配ったのだそうだ。 「こじゃれたものを作りなさい。包装に多少のコストをかけても構わない。手にしてもらうためには『見た目はよくないけど、おいしいよ』というのは通用しないと、スタッフに話しています」と、同加工組合代表の斎藤利恵さんは言う。 昔ながらの食材を使いがならも、カップケーキのようなおしゃれな見た目にこだわったことが功を奏した。ギフトに使ってくれる人のおかげで、クチコミの効果を呼んだのだ。 | ||||||||||
| 毎日の料理に欠かせない味噌 | |
|
加工組合「さくら」では、地元で採れた農作物を使い、地元の農産加工施設を利用し、パンや菓子をはじめ惣菜や漬物などの加工品を作っている。従事者約50人の全員が地元の女性で、大半の人が農家だ。そのため、自ら作った農作物を持ち込み、商品を製造することもできる。
米粉やわらかみそパンに使用する味噌も、家庭で作り慣れたスタッフたちの手作りだ。 「味噌は、この一帯ではどこの家庭でも手作りしていました。家庭ごとに味が違うんですよね。この加工組合の味噌も、本当においしいんですよ」と、同加工組合代表の斎藤利恵さん。 「味噌は、きゅうりを漬けたり、炒め物の味をつけたり、とにかくよく使います。この辺りでは、料理の味付けに、醤油よりも味噌、なんでしょう」 家庭料理に欠かせない味噌。米粉やわらかみそパンは、その味噌を普段から使いこなしているからこそ、生まれたヒット商品だといえる。 「米粉と味噌で、ご飯とお味噌汁を食べているような感覚ですね。相性が悪い訳がありません」 |
| カクテルを作るように、パンを作る | |||||||||||||||||||
店が開店するのは午後6時。リキュールやワインなどのアルコールが並ぶ店内は昼過ぎから、ベーカリーのごとくパンのいい香りに包まれる。バーのカウンターに、焼きたてのパンが次々と並んでいく。 マロンやヘーゼルナッツのリキュールのほか、ブルーキュラソーを使った青い色のパンもある。 リキュールは、果実や穀物を酵母で発酵させた醸造酒をもとに作る蒸留酒に、ハーブやスパイスなどを漬け込んで作るアルコール。ハーブやスパイスがエキス分として2%以上含まれており、様々な風味や香味のものがある。 エキス分によっては、発酵を阻害するものもあるようだ。 前野さんは、天然酵母パンの師範やパンシェルジュの資格を持つ。ちょうど、パン教室を開きたいと思っていたときに、同店のオーナー、下澤さんとパン教室で出会った。「よそにはないバーで出すパンを作ってみたい」と意気投合し、同店のブーランジェールとなり、6年が経つ。 「リキュールの入れる量で悩んでいたとき、下澤さんから『カクテルを作るようにして入れてみたら』とヒントをもらって道が開けました」 リキュールは、仕込み水に混ぜて使うが、水だけではただ薄まった風味しかせず、満足できなかった。しかし、カクテルを作るときと同じように、シロップとレモン汁を加えたら、うまくいったのだという。 「リキュールの度数とシロップの甘味、レモンの酸味の3つのトライアングルが成立していることがカクテルの基本」と下澤さん。 ブーランジェール、ソムリエ、チーズプロフェッショナルがすべて揃う同店。新しいパンのレシピは、各専門知識を持ったスタッフ同士の会話から次々と生まれてくる。 毎日焼くのは4、5種類。季節のリキュールを使ったパンと、「ポンデシェーブル」や「アンチョビエピ」などの定番品だ。 季節のマロンリキュールを使ったパンは、「1つのパンで秋と栗を堪能してもらいたい」と、マロンクリームとマロンの粒を生地に練りこんだ。「ポンデシェーブル」はチーズプロフェッショナルのスタッフからヒントを得た。クセのある青カビタイプとヤギの乳で作ったフレッシュチーズを合わせることで、クセのあるチーズが苦手な人にも好評な味に仕上げた。会話の中から生まれたパンにはどれも、ストーリー性やテーマがある。 「当店が銀座にあるバーということも意識して、上品さを大切にしています。例えば、ミントのリキュールを使ったときは清涼感を出しすぎず、ミント本来の香りを強調したパンに仕上げました」と前野さん。 1杯のカクテルを楽しむようにパンを味わえるのも銀座のバーならではだ。 | |||||||||||||||||||
| 社団法人日本パン技術研究所の杉浦英明氏の話
味噌、リキュール、酢のどれもが発酵食品、つまりイーストである。そのため、大量に使わない限りは相性はいい。また、アルコール自体は元々パン生地にも含まれているもの。以前、アルコールで風味付けの材料を作ろうと試みたが、アルコールは低沸点のためほとんど香りがとんでしまった。味噌は酵素に気をつけて使用する必要がある。加熱してから入れると良い。酢は、3%程度なら、カビ防止の目的で一般商品にも使用されている。そのほか、焼きの浅い商品には生臭みを防止する目的で加えることもある。
|
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。






















