セミナー / 製パン性改良のための技術の取り組みの現状と今後の動向セミナー / 主催:日本穀物科学研究会 - ブランスリー電子版

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セミナー/2010年7月号

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セミナー
製パン性改良のための技術の取り組みの現状と今後の動向セミナー
主催:日本穀物科学研究会
熱心に受講する受講者ら
 日本穀物科学研究会(森田尚文会長)の142回例会が5月21日に大阪市内で、約60人の参加を得て開催された。今回のテーマは「製パン性改良のための技術の取り組みの現状と今後の動向」。講師には、田中食品興業所研究開発部開発3課課長の弓削秀人氏、神戸屋企画開発統括部ブレッド・ラブ部長の河上洋一氏、オリエンタル酵母工業食品事業本部開発部食品開発センターセンター長、佐々木祐一氏の3氏を迎えた。弓削氏は、「フィリングが日本の菓子パンの豊富さを支えている」と指摘し、河上氏は、イーストフード・乳化剤無添加への取り組みを通じて、食べ物の大切さを語り、また、佐々木氏は、「製パン法や消費者ニーズの多様化などに対応した酵母の開発に努めたい」と述べた。



製パン向けフィリング材開発の現状と生産技術-田中食品興業所研究開発部課長弓削秀人氏
田中食品興業所研究開発部課長弓削秀人氏
 欧米にはチョコレートやプラリネなどを包む文化があるのに、フィリングを使ったパンは少ないですね。中国は月餅に入れるあんは色とりどりですが、パン用のフィリングは受け入れられていない。これに比較してわが国は、あんばん・ジャムパン・クリームパンなどと、世界に例を見ないほど多種多様な菓子パンが揃っています。その多様性を支えているのがフィリングだといえるでしょう。どんなパンにどのような提案をするのかを考えながらフィリングを作ってきました。その結果として、様々な製品が誕生し、豊富な菓子パンの世界を広げてきたのだと思います。
 フィリングは、パンなどに挟んで彩りを添えるものです。わが社では、いわゆるクリームパンのクリームであるフラワーペーストは、使い方によって異なるため200〜300種類あります。バニラビーンズが人気です。クリームを板状に成形したフラワーシートは、20年前に独自に開発したものです。小豆や芋、粟、かぼちゃのあんやジャムなどのフルーツフィリング、シロップ、油脂加工食品、カレーパンの中身などの調理系フィリングを開発・製造しています。
 他社にない特徴として、「タナカベーカリー研究所」という研究所を持っていることがあります。東京と大阪でパンや菓子の専門技術者を擁し、彼らにフィリングを使用したパンを焼いてもらい、顧客への売れ筋商品開発の提案を行なっています。提案することで、売れるパンに必要なフィリングは何かを明らかにできます。
 開発のコンセプトは、生活者の視点を大切にしたうえでの、本物への挑戦です。例えば、シート製品に必要な性能は、扱いやすさと板状を保つ固さです。また、フラワーペーストの物性としては、滑らかさや包み込みやすい固さです。ホイロなどの高温時でも崩れないことが重要で、口溶けも良くて食べやすいことも求められます。つまり、フィリングメーカーの開発の使命とは「口溶けの良さと滑らかさ」にあるといえるでしょう。
 商品の製造には、安全の確保が必要です。副資材とはいえ、直接消費者の口に入るものです。微生物コントロールを行なう殺菌技術はもちろんのこと、社員自身が何処にいるかを知るために、清潔区域は青・準清潔区域は緑に分けています。全ての工程で異物が入らないように注意を怠りません。



神戸屋のパンづくりの歴史と昔ながらの製パンへのこだわり-神戸屋企画開発統括部ブレッド・ラブ部長 河上洋一氏

神戸屋企画開発統括部ブレッド・ラブ部長 河上洋一氏

試食提供されたイーストフード・乳化剤無添加の食パン
 1918年(大正7年)に創業した神戸屋は、外国人のための食パンづくりからスタートしました。当時、パンは、外国人と一握りの日本人のための食べ物だったのです。1928年(昭和3年)には、日本で初めてアメリカ産のイーストを使用したパンを発売しました。イーストの価格は現在の価値にすると、1キロ1万4000〜1万5000円だったといいます。
 1970年(昭和45年)、大阪万博に参加。この年は、パンも2けた成長で、小麦粉使用量も100万トンに近づくかという時代でした。一方で人工甘味料の使用が増えた。製パン技術の発達していなかった時代は、おいしいパンが手作業で作られて、毎日の食卓に届けられていました。私たちの目指すパンの原点がここにあります。経営理念は「Fresh&Pure」です。素材そのものを味わって欲しいとの思いが込められています。1971年に無漂白小麦を使用した「純」を発売。1973年には全商品を無漂白小麦に変えました。1980年には、臭素酸カリウムのパンへの使用中止決定を受けて、わが社も中止しました。
 科学技術の進歩とともに添加物が登場します。科学の進歩と恩恵なくして成り立たない今日ですが、添加物の登場は、小麦粉の自然な甘味やおいしさを失わせました。もう一度自然を見つめ直して、昔ながらの作り方やおいしさを追求したいと考え、1994年にイーストフード・乳化剤無添加を決定しました。無添加商品は製品の安定化が難しく、安定するまで2〜3年かかりました。しかし、これまでに無添加商品の1部を発売中止にしました。イーストフード・乳化剤無添加に取り組んで16年になります。改良を加えながら歩んできましたが、まだまだ、チャレンジは続きます。
 小麦粉本来のおいしさを目指して、イーストフード・乳化剤無添加に取り組んできました。これからも力を惜しまず、理想に近付きたいと思います。将来ある子供たちに本当の食べ物の味を知ってもらうためにも、パン本来のおいしさを追求しつづけたい。それが、パン食の発展にもつながるのではないかと思います。



最近のパンにおけるパン酵母の活用方法-オリエンタル酵母工業食品開発センターセンター長 佐々木祐
一氏

オリエンタル酵母工業食品開発センターセンター長 佐々木祐一氏
3講師によるパネルディスカッションも行われた
 近年の年間イースト生産量は4万3000トン(内ドライイースト3000トン)。小麦粉関連商品としては多いのではないかと思います。古代メソポタミアで生まれ、ヨーロッパに広がったパンが、日本にもたらされたのは16世紀のころでした。パンを膨らませるのに必要な種は、19世紀末頃までは欧米と同様に、日本でも自家製のパン種が使われていました。昔の種は乳酸菌が含まれており、風味は良かったが、今より発酵力は弱かった。
 20世紀に入ると、欧米で開発された圧搾パン酵母が輸入されるようになり、ここに、パン種を使用したパンづくりの時代が終わりを告げたのです。パン酵母がどういうものかというと、ワイン酵母に近いものですね。私たち人間にも色々な職業があるように、酵母にもパンを作るのに適しているものがあるんです。
 このパン酵母の国産化が昭和初期に実現しました。これによって、製パン産業は飛躍的に伸びました。パン特有の風味や食感を得るうえで、パンづくりには欠かせない原料であることがわかります。パン酵母の適性温度範囲は25〜38度Cで10度C以下では非常に活性が弱まり、55度C以上では短時間で死滅します。適性pHの範囲は4・5〜5・5で、最適なのは4・5〜4・8です。消費者ニーズに対応するにはますます、パンの種類や製法に適したパン酵母が選ばれるものと思われます。例えば、食パン、菓子パン、ロールパン、フランスパンといった種類による使い分けです。製法ですと、ストレート法、中種法、冷凍生地製パン法、冷蔵生地製パン法などです。
 最近の市場動向を見ると、独自の製法や原料によるパンの差別化が進んでいるようです。パンを膨らませるだけではなく、プラスアルファのパン酵母が求められている。今後は市場ニーズが一層多様化、複雑化すると考えられることから、方向性がハッキリしない点もありますが、これらに対応したパン酵母の開発に取り組んでいきたいと、考えています。

原価計算女王
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