山中から海辺に移転-窯GAMA - ブランスリー電子版

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お店拝見/2010年7月号

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山中から海辺に移転-窯GAMA
シェフの田中佐知子さん(左)とオーナーの藤本恵三さん(右)
開発中は1日中頭から離れなかったという「くるみとショコラのカンパーニュ」(100グラム440円)。ベルギー産クーベルチュールビターチョコ、オーガニッククルミ、オーガニックカカオ入り。卵と牛乳、油脂は入っていない。ビターチョコの優しい甘さがカンパーニュ生地に馴染んでいる
香草と辛味を効かせた「ベトナムカンパーニュサンド」(480円)
約24時間低温熟成させて、国産小麦の旨みを引き出した「カンパーニュ」(380円/1ブロック)。サンドイッチにも使用
一切れで300グラムもあるずっしりと重い「ガマ食パン」(480円)
 「窯GAMA」は、鎌倉市材木座海岸まで徒歩1分の場所にある。「見るものはうちのお店しかない」(シェフの田中佐知子さん)というほどの、人里離れた和歌山県の高野山近くの山中から、鎌倉のこの地に移転して約2年が経った。
 「山中で作っていたときはどっしり、ハード系。海に近い今は、バーガーとかファスト系のイメージ。山と海では、お客様の求めるものも対称的です」とシェフの田中佐知子さん。
 山から海へ、関西から関東へと思い切った移転。自然環境が変われば客の嗜好も違う。その違いはサンドの具材や味付けなどに表れた。ピリッとした辛味が効いて、香草が爽やかな「ベトナムカンパーニュサンド」(480円)は、海と太陽の下で食べるのにぴったりな、スパイシーな一品だ。
買いに来られなくなってしまった関西地方の客からは、今でも宅配の注文が絶えない。一切れで300グラムもあるほどのずっしりと重い食パンや、「1年間、1日中頭から離れなかった」という情熱で開発した「くるみとショコラカンパーニュ」(100グラム440円)などの食感と味わいは、同店のパン、「ガマパン」にしかない。
 「パンの嫌いな主人がおいしいって言うんです」(女性客)。この女性客の夫はすっかり気に入り、今では自ら来店している。またある日は、開店前にできた列の全員が中高年の男性だったというエピソードもある。
 こうしてパンを普段食べない人でも、
好きでない人でも、はまってしまうガマパン。このオリジナリティの根源は、田中さんの探究心と創作意欲にある。 「15年前に、イタリアのミラノで食べたフランスパンの味が、今でも舌に残っているんです」
 田中さんがパンづくりを始めた当初、日本にはまだハード系が浸透していなかった。「ハード系、特にカンパーニュが好き」という田中さんは、海外のパンを食べ歩いた。ヨーロッパに留まらず、アフリカのセネガルやマリでもパンを見つけては食べ、舌で記憶した。また、田中さんはもともと、「作るのが好き」だそうで、パン作りを志す前はイタリア、アフリカ、インド料理店で調理を担当していた。こうした経験の積み重ねがガマパンを生み出したのだろう。
 田中さんのパン作りのテーマは、塩。ドライフルーツやチョコレートを使っても、甘い菓子パンにはならない。イートインで提供するドリンクは、ビールが豊富に揃う。ワインではなくビールというのは珍しいが、「おつまみとビール」のように絶妙な取り合わせとなる。塩のおいしさがガマのパンには引き立っている。



使えなくなった窯
移転前に活躍していた石窯。全体を石で覆ったオリジナルの手製で、薪で火を焚いて使う
オープンから客足が絶えない店内
ショーケースに並んだパンは午後1時半を過ぎるとあっという間に売り切れた
「酒盗とパルミジャーノレッジャーノ」(298円)など、フォカッチャは5種類ほど。塩気が効いており、ビールとよく合う
品揃えはカンパーニュ、食パン、ベーグル、フォカッチなど約22種類
 「窯GAMA」という店名の元となった石窯は、移転後使えなくなった。住宅街にある現在の場所では、薪で火を焚き、煙を出して焼くことができないからだ。
 「自分の作りたい味を出すためには、保水力のある窯が必要で、それで作ったのが、この石窯です」
 すっぽりと全体を石で覆った、どこから見ても石でできた窯。使えなくなった今は厨房奥で「『ガマ様』として、店を見守ってくれています」(オーナーの藤本恵三さん)
 移転前の場所は、全国を探し回って見つけた「薪で火を焚く、この石窯を使える場所」だったのだ。
 窯が使える環境に店を構えるほどの窯へのこだわり。しかし、冬の寒さは厳しく、雪で2〜3カ月道が閉ざされたり、酵母の発酵も進まない。また、日によって窯の具合が違うから、オープンの時間が遅れてしまうこともしばしば。作業もハードだったし、数も焼けなかった。これらの理由から移転を決めた。海に近い今の場所を選んだの訳については「山の中にいると太陽や海が恋しくなるんですね」と田中さんは笑う。
 今使っているのはドイツ製の電気オーブンで、「コンパクトだし、よく働いてくれる。今までつきっきりで見ていないと焼けなかったから、その分、便利だと思えて感動しています。ドイツパンの焼き上がりが、ガマのパンと共通点があると思ったので、ドイツ製のオーブンにしました。じっくり、慎重に選びました」と田中さん。
 窯についていなくてよくなった分、ほかの作業ができるようになり、品揃えも7、8種類増やすことができた。
 「前はすべてにおいてこだわり抜いていましたが、今は力の入れ所が掴めるようになったんだと思います。サンドイッチにも手が回るようになったし、種類も増やせました」
 店のオープンは週に4日間。取材日は、正午の開店前にはすでに、15人ほどの列ができていた。鎌倉は日本有数の観光地。同店は、名所のある付近とは反対方向の、鎌倉の中でも「一番ローカルで、ゆったりとした空気感」(田中さん)の材木座に位置する。また、駅からも少し離れており、便利な立地とは言えない場所にあるが、それでも口コミなどで、遠くから買いにくる客が多い。
 午後1時半、まだ昼時だというのに、商品はほとんどなくなった。オープンからの1時間半は販売とイートインの対応が凝縮された時間だ。店を切り盛りするのは田中さんと藤本さんの2人のみ。忙しいはずだが、2人の呼吸が合っており、店内はせわしなさがない。壁などの内装は、アフリカが好きという田中さんと藤本さんの手作り。現地で手に入れた絵画が飾られており、アフリカの音楽が流れる。異国の地に旅行に来たような感覚が味わえる店内だ。



SHOP DATA

店名 窯GAMA
住所 神奈川県鎌倉市材木座5‐14‐18
電話 0467‐73‐7076
営業時間 午後12時頃〜午後6時頃
定休日 月・火・木曜日
品目 21〜22種類
店舗面積 厨房8坪、イートイン・販売スペース9坪
スタッフ 2人
日商 6万円



原価計算女王
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