学校給食のパンが変わる - ブランスリー電子版

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特集/2010年7月号

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学校給食のパンが変わる
取材した6月15日の給食。ソフトフランスパン、牛乳、ガーリックチキン、野菜スープ、ゴールドキウイ。エネルギーは565キロカロリー
 パン・ミルク・おかずの3種による完全給食が始まったのは1950年。1976年に米飯給食が導入されるまで、学校給食の主食はパンだった。1985年になると、週3回を目標とする国による米飯の推進が始まり、2007年に、米飯回数は全国平均週3回を達成した。現在は週3回以上が目標となっている。
 米飯の回数が増えたことでパンの回数は減った。回数は減ったが、種類が増えたり、地場の小麦を使ったものなど、パン自体の内容の充実が図られている。また、学校給食の新しい顔として「米粉パン」が現在3割の学校で導入されている。
 こうした学校給食のパンにおける近年の動きについて、神奈川県と埼玉県の学校給食を例に紹介する。



成長期の子どもたちに適したパンについて-神奈川県平塚市教育委員会学校栄養職員
伊東博一さん
佐藤早苗さん
学校栄養職員の佐藤早苗さん(左)と伊東博一さん(右)
東部学校給食共同調理場では、11校分、1日5000食が調理されている
子どもたちから調理場の人に届いた感謝のメッセージ
東部調理場が担当している11校分(5000人分)の献立表
 平塚市内の全28の小学校の給食は現在、21校が東部と北部の2つの共同調理場、残りの7校は校内の調理場で調理されている。
 東部学校給食共同調理場が稼動を始めた1972年頃の米飯回数は年に3回だった。それが月に2回、週に1回と徐々に増えていき、現在は週平均2・3回。麺類は提供していないので、まだ米飯よりパンの回数が多い。
 給食の献立は学校栄養職員が作成している。「文部科学省から週3回の米飯給食を実施する旨の通知があり、市でできる最大回数に合わせて、米飯の日を決定します。それから、残りをパンの日とします」(学校栄養職員の佐藤早苗さん)
 パンは50種類ある中から選ぶ。「はじめに主菜を決めたら、そのエネルギーや脂質、味などの点を考えてパンを選びます。30年位前はコッペパンが主であとは食パンくらいでしたが、今は種類が多いので、1カ月に2度同じパンが出ることはないですね。定番だったコッペパンも、今は年に数回と、減りました」(佐藤さん)
 給食のパンは、提供する前日に製造する。また、脂質や塩分量も抑えないといけない。そのため、生地自体の違いよりも、成形を変えることでバリエーションを出す。動物を模したものなど、特別な成形には単価4〜10円ほど加工代がかかる。材料費1食約220円の中から捻出するので、たまにしかできないが「うさぎなど動物を模した形など、成形の凝ったものが子どもたちに人気」と佐藤さん。
 米粉パンは2004年から提供。生地は1種類のみで、成形の違う3種類がある。「献立を作るときは、米粉パンだからといって特別に意識することはなく、ほかの小麦パンと同じように扱っています」(学校栄養職員、伊東博一さん)。「もちもちとしておいしい」と子どもたちには好評だ。
 米粉パンのように、献立を作る学校栄養職員にとって、新しいパンが加わることはうれしいという。近年はすっかり市場に浸透したハード系のパンに関しては、「成長期で歯の生え変わりを迎える子どももいます。1年生から6年生までの全ての子どもたちがおいしく食べられなければならないので、やはりふわふわとしたやわらかめのパンが適しているでしょう」と伊東さん。



県産米と県産小麦を使用した米粉パン「さきたまライスボール」を開発-財団法人埼玉県学校給食会常務理事事務局長
大澤次夫さん
財団法人埼玉県学校給食会常務理事事務局長大澤次夫さん
県産小麦と県産米使用の「さきたまライスボール」。中央に砂糖で甘みをつけている
埼玉県の学校給食で提供されているパン。このほか合わせて28種類
米粉を80%配合したナン。米粉特有のもっちり感が生かされている
 埼玉県の小学校で2003年から供給されている「さきたまライスボール」。同製品は、県産小麦と県産米を1対1の配合で使用した米粉パンだ。
 「米粉パンということにこだわったのではありません。すでに県産小麦使用のパンや県産米の米飯の提供はしていたので、さらに県産作物を使って新しくメニューを開発できないかと考えたのがきっかけです」(大澤さん)
 埼玉県は全国でも小麦や米の有数な生産地。小麦の生産量は
全国第6位で、地粉うどんの食文化もある。地粉うどんは学校給食でも1999年より提供を開始。県産小麦を100%使用した「さきたまロール」は2000年から提供しており、県内全校での県産小麦使用のパンの提供は、埼玉県が先駆けだ。
 県産小麦は「さきたまロール」だけでなく全てのパンに、少なくとも5割の量を使用している。
 学校給食の地産地消に関しては、内閣府が2006年より食育推進基本計画の中で進めており、食材数ベースで30%以上が目標となっている。埼玉県は現在18.5%と全国の中では低い方だが、主食の小麦や米は県産品を多く使用している。大澤さんは「カロリーベースではなく使っている食材の数でのカウントなので、評価は低くなってしまう」と話す。
 しかし「地場産の量を増やすことや評価にこだわってはいけない」と大澤さん。
 埼玉県は大消費地の東京にとって、葉もの野菜などの重要な生産地だ。「周囲の地域との関係性など、県としての位置付けを理解した上で取り組んでいく必要があります」(大澤さん)
 また、近年では食育としての要素が強くなるなど、給食の役割は時代とともに変化しているが、「変わらないことは、子どもたちにとって、おいしく食べられるものであること」と大澤さん。さきたまライスボールの開発には1年を要した。米粉50%という配合率は、グルテンを入れないでおいしくできる最大の量。「自給率を意識するのではなく、米粉の味を、子どもたちに楽しんでもらえれば」と願っている。



学校給食開始当初から作り続けるベーカリー-長後製パン
齋藤伸一社長
長後製パン齋藤伸一社長。学校給食のパンは細かな規定がたくさんある(手前の資料)。これだけでも半年分
直営販売店の「ロワール光月堂本店」。パンと洋菓子を販売
20年以上前から使用している大型のオーブン。時間あたり3500人分を焼成できる
最大3万食を用意できる設備が必要
 神奈川県藤沢市にある長後製パンは、県の学校給食が開始された当初から学校給食のパンを手掛けており、現在は地元藤沢市と大和市の44校の小中学校を担当している。
 「地元の小学校でも、昔は1学校で1200人の生徒がいましたが、今はその半分。その上、米飯の推奨でパンの回数が減ったので、周囲のパン屋さんで学校給食のパンを作るところはほとんどなくなりました」(齋藤社長)
 毎日の発注数にも波があり、同ベーカリーでは多いときで3万食を作る。人手も機械も、最大数に合わせて用意しておかなければならない。

卸、給食、販売の3本柱
 夏休みなどの長期休暇の間は学校からの発注がなくなる。同社は学校給食と卸、直営の3店舗での販売の3本柱で営んできた。「長期休暇は学校給食がない代わりに、旅行シーズンなのでホテルなどの観光施設での需要が高まります。双方を手掛けることで、製造数を常に一定に保つことができます」と齋藤社長。
 さらに、米飯施設も備えているので、調理パンの施設でおかずを作り、弁当を製造している。中学校によっては弁当制のところもあるが、近年両親の共働きなどで弁当を持ってこられない生徒が増えている。彼らに向けて、毎日100個ほど製造し、1食あたり450円で提供している。週に1回はサンドイッチボックスで、その日は女子生徒からの注文が増えるという。

地粉の会を発足
 藤沢市の北部で問題視されていた耕作放棄地を活用しようと2004年に「さがみ地粉の会」が発足。
 学校給食のパンにも使用し、子どもたちに地場産の魅力を伝えたいと、パン用小麦「ゆめしほう」の栽培が昨年より始まった。齋藤社長も農家と共に栽培に励んでいる。給食用として、ゆめしほうを2割配合したナンの提供を7月から行う予定だ。
 「弊社は80年以上この地で営んできました。地域への恩返しの気持ちと、今の子どもたちに仕事を通して貢献できることとして、地粉を使ったパン作りに取り組んでいきたいです」
 同社は昨年、夏休みに子どもを対象にしたパン教室を開催した。パン作りと共に、工場の見学にも子どもたちは興味深々だったという。今年も開催を予定している。

原価計算女王
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