地域食材の魅力を伝えるパンと菓子 / いわて西澤商店‐「雑穀と大地のめぐみのパン」 - ブランスリー電子版

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特集/2010年4月号

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地域食材の魅力を伝えるパンと菓子
いわて西澤商店‐「雑穀と大地のめぐみのパン」
収穫前の「畑作二戸在来ヒエ」。無農薬栽培
雑穀「畑作二戸在来ヒエ」入りの「雑穀と大地のめぐみのパン(レーズン入り)」(大660円、中510円)
近年「お取り寄せ」やアンテナショップなどで人気の地域食材。本来それぞれの地域でしか馴染みのないこれらの食材を、パンや菓子に加工して販売する動きが高まっている。食材そのものでは、調理方法が分からず手が伸びなくても、パンに加工することで手軽に食べることができることも理由のひとつ。
ここでは、岩手県の雑穀を使ったパンと、浜名湖の海苔を使った菓子を紹介する。(浜名湖の海苔を使った菓子は26ページに掲載)



かつて主食としていた雑穀を、パンに配合
いわて西澤商店社長の西澤直行さんは農学博士、岩手大学で特任教授・名誉教授を務めている
「雑穀と大地のめぐみのパン」に使用している「畑作二戸在来ヒエ」
 「雑穀と大地のめぐみのパン」は、ベースとなる粉、水、塩は全て岩手県産。粉そのものの甘みが生かされており、噛むごとに味わいが増すパンだ。
 そして一番の特徴は、岩手県の二戸地域で昔から作られてきたヒエが入っているということ。よく咀嚼していくと、小さなヒエ一粒一粒の食感を味わうことができる。口どけが良く、ぼそぼそせず、ヒエと国産小麦の甘みがよく馴染んでいる。
 ヒエは岩手県北部の食文化を支えてきた雑穀だ。ヒエを混ぜた米、「ヒエ飯」を「へめし」と言い、主食としてきた。
 「岩手県の北部地域は冷たい北風、『やませ』が吹くため、米作には適していません。そのため、冷涼な気候に合ったヒエやキビ、アワなどの雑穀を栽培し、主食としていました。また、岩手県は昔、優れた馬の産地でした。ヒエのワラを馬に食べさせ、その実である雑穀を人間が食べるという、家畜との『共生雑穀食文化生活』を送ってきたのです」と話すのは、いわて西澤商店社長の西澤直行さん。西澤さんは、栄養と健康、雑穀の健康機能などの研究をしてきた農学博士で、現在岩手大学で特任教授・名誉教授を務めている。これまでの研究の集大成として05年、いわて西澤商店を設立し、雑穀のパンの販売を手掛けている。



雑穀をつくる農家を支えたい
モチ種の「キビ」。「キビ団子」や「キビドーナツ」などが作られる
モチ種の「アワ」。「アワ入り豆餅」「アワのお蒸かし」などに利用される
「畑作二戸在来ヒエ」が栽培されている洋野町の畑と、その耕作者で、農業を営む斎藤勲さん
 今から約20年前、岩手大学で栄養と健康についての研究をしていた西澤さんのもとに、90歳に近い女性が訪れた。「キビを栽培しているのだけれど、何かに利用できないでしょうか。健康によいとは思うのだけど」と、相談にきたのだ。
 今では若い人たちの間で健康ブームに乗って受け入れられてきている雑穀だが、当時は「貧しいときの食事」というイメージが強く、需要が少なかったという。
 西澤さんはその女性から相談を受けたことをきっかけに、キビの栄養生理機能性についての研究を開始した。動物実験の結果では、動脈硬化症を予防したり軽減化する作用がある善玉コレステロールのHDL-コレステロールの血中濃度が高まることなどがわかった。
 また、産地や生産者によっても栄養機能が異なることがわかった。西澤さんは雑穀栽培のリーダーとして名高い高村英世さんとの出会う。「高村さんの栽培した『畑作二戸在来ヒエ』は、特に健康機能が高い。家畜との共生雑穀食文化で育まれる中で自然淘汰されて、良い品質のものが選別されてきたのでしょう」 
 それから5年ほど経った頃、西澤さんは学会でドイツの南方にある「エトリンゲン」という小さな田舎町を訪れた。そこで食べたドイツパンのおいしさに感動し、岩手の雑穀をパンに使ってみたいという気持ちが生まれた。
 また、ドイツでは消費者と生産者の結びつきが強いことも感じたという。「雑穀を使ったおいしいパンを作って、高村さんのような雑穀農家と、岩手県の食文化を支えていきたいと考えました」
 「雑穀と大地のめぐみのパン」に使用するヒエは、西澤さんの指導のもと、岩手県の北部に位置する洋野町の農家が栽培。岩手県は、雑穀の国内生産量の半分以上を占めており、「雑穀王国」との異名を持つほど。収量、栽培面積ともにここ数年間増えている。
 主に栽培されている雑穀はキビ、ヒエ、アワの3種で、パン作りに適しているのはウルチ種であるヒエ。キビとアワはモチ種なので粘りがあり、パンなどの加工品には向かない。これに対してヒエは、キビ、アワと比べて味が淡白なので、パンに入れてもクセがなく、主食に向く製品に仕上がる。



熱心な研究の成果が詰まったパン 
「雑穀と大地のメグミのパン(レギュラー)」(大630円、中490円)。写真は大サイズの断面。スライスしてトーストせず、そのまま食べてもおいしい
「雑穀と大地のめぐみのパン」の断面。よく噛むとヒエの粒々を感じる
 パンのレシピは、本などを見ながら自宅で試行錯誤を重ねて開発した。製造は、そのレシピをもとに花巻市にある知的障害者福祉施設に委託。販売先は、盛岡市内の2店舗と、東京・銀座の「いわて銀河プラザ」と横浜市の「ナチュラル・エッセイ」のアンテナショップなど。インターネット通販も行っている。
 「まだまだ販路を広げていきたいと思っています」。都内にある自然食品店などを中心に、営業活動に取り組んでいる。
 「雑穀と大地のめぐみのパン」には、「畑作二戸在来ヒエ」の健康機能のほかに、トランス脂肪酸を含む油脂を一切使っていないことも重要だと西澤さんは主張する。
 トランス脂肪酸は、現代の食生活でで摂りすぎている傾向があり、発ガンや動脈硬化症、心臓病のリスクを高めるとされているからだ。
 「現代の日本の食事と健康事情は、決して良いとは言えません。実際、日本の子どもはアメリカの子どもより、血中コレステロール値が高いというデータも出ています。高カロリー・高脂肪の食事傾向を改善していく必要があります」
 中国では未だに雑穀を主食としている地域があるという。日本では今、白いご飯が当たり前となっており、ヒエを主食にするには少し抵抗がある。健康に良いとわかっても、ヒエには独特の苦味もあり、調理も一工夫がいる。
 しかし、おいしく手軽に食べられるパンなどに加工すれば、現代の食生活にも十分に取り入れていくことができる。こうして、失われかけていた雑穀の食文化を取り戻し、発展させていけるのではないだろうか。


パンに使用している「二戸在来ヒエ」の健康機能について
血糖値を下げ、血中の善玉ホルモンのアディポネクチンと善玉コレステロールのHDL-コレステロールを高め、血中中性脂肪の濃度を下げる機能性がある(西澤さんによる健康機能研究:動物実験結果より)


いわて西澤商店
住所=岩手県盛岡市西松園1丁目11‐11
電話=019‐661‐6708
メールアドレス=nishizawa-shoten@s8.dion.ne.jp
HPアドレス=http://www.k5.dion.ne.jp/~inc/
※4月より、キビの販売も行います



原価計算女王
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