近所に根付くハード系のパン-ブーランジェリー たね - ブランスリー電子版

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お店拝見/2009年12月号

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近所に根付くハード系のパン-ブーランジェリー たね
通りからも一際目を引く看板。女の子のモデルとなったのは内田シェフの長女。パンを頬張って食べる幸せそうな表情が印象的
クラムの気泡が大きめの「taneバゲット」(330円)はほのかな甘みが感じられる
バゲットと合わせて食べる手作りの「ディップ」(100〜110円)。テイクアウトもできる
焼き立てのパンが食べられるカフェスペース。8席ほどある
シェフブーランジェの内田浩之さんと妻の内田稲さん
幸せそうにパンを頬張る子どもが描かれた、赤い看板が一際目を引く「ブーランジェリー たね」。東京のベッドタウンの駅として15年前に開業した京成本線・公津の杜から、車を5分ほど走らせた国道沿いに、今年5月30日にオープン。自家製の酵母と国産小麦にこだわったパンが評判のベーカリーだ。
 同店のシェフブーランジェ、内田浩之さんは「開店当初は受け入れられやすい定番のアイテムを揃えていた。でも実際売れるのはそれらではなく、自分が作りたくて作っているパンだった」と話す。オープンしてまだ半年ほどだが、作るパンの種類が最初の頃とだいぶ変わってきたという。
 店内には2坪ほどのカフェスペースがあり、焼き立てのパンと合わせ、浩之さんの妻である稲さんが作る、クリームチーズをベースにしたディップ(各種100〜110円)と、近所でも評判のコーヒー店「スガCOFFEE」のコーヒーが楽しめる。「パンのおいしい食べ方を、ここで知ってもらえれば」(稲さん)というのがカフェスペースを設けた理由のひとつ。その甲斐もあり、最近はハード系のパンも顧客に定着してきたという。
 浩之さんは、基本材料となる粉、酵母、塩以外の材料はできるだけ使わない。粉そのものの甘みや風味を引き出すためだ。常連客の中には、余分なものが入っていないパンを好む人が多く、酵母、粉、塩だけで作った山型の「tane食パン」(320円)は年配の人や子どものいる家庭に人気で、予約が入る一品だ。
 酵母は自家製で、3種類を用意して使い分ける。葡萄酵母は、3種の中で発酵の力が一番強く、味にクセがないので食パンなどに使用する。北海道産の小麦で起こした酵母は、生地の味わいに深みを出したいときで、主にバゲットやクロワッサン、カンパーニュなどに使う。酒種は、あんぱんなど日本で昔からあるお馴染みのアイテムに使用している。
 バゲットに使用する小麦は、九州産の「ミナミノカオリ」。噛むごとに甘みが出るのが特徴で、フランス産小麦に近い成分だという。バゲットは、食感や風味にそれぞれ特徴のある3種類。定番商品である、きめの詰まった「バゲット」(240円)、クラムの気泡が大きめの「taneバゲット」(330円)、ライ麦生地を入れて酸味をきかせた「バゲットカンパーニュ」(230円)だ。「taneバゲット」は、捏ねの工程を短くすることで、粉の甘みを生地に閉じ込めている。
 同店のバゲットは近所の保育園の園長先生が気に入り、園児の給食に採用。噛むごとに甘みが出てくることから「噛む力を養ってもらいたい。パンを食べるときくらいは、かたいものを噛む経験をして欲しい」(園長先生)と、シチューなどと一緒に薄くスライスして提供している。子どもたちは残さず、よく噛みしめて食べているという。



豚の小麦と、
たねのパンを交換
成田市の島村農園で無農薬栽培された小麦。玄麦のまま届き、店内の石臼で挽いて使用する
玄麦は店内の石臼で挽く。石臼は販売スペースの横に置かれており、普段目にすることは珍しい石臼が粉を挽く様子は、来店客の目を楽しませている
左は「パン・オ・ショコラ」(170円)、右は玄麦を15%配合した「クロワッサン」(150円)。しっかりとした歯ごたえで、噛むごとに味わいが出てくる
クロワッサンの断面。外側は香ばしく、中の生地は弾力がある
「玄麦が豚の飼料になっていると聞いて、もったいないと思った」と稲さん。飼料用の小麦は、成田市内の島村農園で畑を休ませるために栽培されていたもので、農薬は不使用。この小麦を同店のパンに使い、豚には代わりに作ったパンを食べてもらうという、システムを生み出した。島村農園では非遺伝子組み換えの飼料を与えた鶏で卵をつくっており、同店で使う卵はすべてこの島村農園のものだ。
 こうして交換された小麦は、店内にある石臼製粉機で製粉し、全粒粉にして使用。挽きたての小麦を使うと、香り高く甘みのあるパンを焼くことができる。挽く量は1日あたり300〜500グラムほどで、「クロワッサン」(150円)は15%、「スコーン」(2個で160円)は5%配合。発酵バターを使用しているクロワッサンは、砂糖を入れていないのにほのかな甘みが感じられる。材料がシンプルだからこそ、素材ひとつ一つが引き立つのだ。クロワッサンは不定期で作っており、午後2時頃に焼き上がると閉店時間を待たず、あっという間に売り切れてしまう人気商品だ。
 最近は、成田産の無農薬栽培小麦に興味を持つ顧客が増えてきたという。「玄麦と卵からパン、パンから豚の飼料へ」といったシステムの同店のパン作りが、同地域における農業に影響を与えていきそうだ。



沖縄で出合ったパン
がきっかけに
友人による手作りののぼり。店頭に立ち、来店客を温かく迎える
沖縄でパンを作り、販売していたときに使用していた看板。稲さんの友人でアーティストの小林煌さんが製作してくれた
「あんぱん」(160円)のあんは、北海道産小豆を使用した手作りで甘さは控えめ。シンプルな生地との馴染みがよく、優しい味わい
アールグレイの茶葉をクッキー生地に入れて風味をつけた「ちょっぴり大人のメロンパン」(170円)
沖縄での修行時代から作り続けている「スコーン」(2個で160円)。粉は千葉県成田産の全粒粉を使用
浩之さんは約6年前にパン作りを始めた。沖縄にある「宗像堂」のパンを食べて「パンってこんなにおいしいんだ。生地自体に味があって。こんなパンなら作ってみたい」と思ったことがきっかけだ。
 ホシノ天然酵母を使ったパン教室に2日間通っただけで、ほとんど独学でスタート。パン作りを始めた頃は沖縄に住んでおり、現地でよく開催される地域のイベントを利用して販売を始めた。当時マンゴー園に勤務していたが、パンの売れ行きが好調となり、マンゴー園を退職してパン作りに専念するように。それから那覇市内のパン店「らいぶら」で1年半働き、本州に戻り、成田のこの地でブーランジェリーたねを開店させた。
 店内の内装はほとんどが浩之さんと稲さんの手作り。漆喰で壁を塗って仕切りの壁を作り、カウンターも作った。「マンゴー園ではいろいろな力仕事をする機会があって、それが後にいい経験となった」(浩之さん)。開業資金を極力抑えることができたという。2人で作った内装に加え、壁を飾る版画や、通行人の目を引く赤い看板、のぼりは、友人が作ってくれたもの。これらの手作りの品で囲まれた同店は、来店客を温かく迎える雰囲気に包まれている。





SHOP DATA

店名Boulangerie tane
住所千葉県成田市飯仲14-3
電話0476-37-6099
営業時間午前11時〜午後6時30分
定休日日曜。月曜は不定休
品揃え30〜35品目(食事系6割、菓子パン系4割)
店舗面積 厨房約4.5坪、販売・カフェスペース約5坪、その他5.5坪

原価計算女王
原価計算女王

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