石窯のあるベーカリー - 石窯のあるベーカリーが夢だった。次世代の新業態が必要だった。 - ブランスリー電子版

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特集/2004年1月号

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石窯のあるベーカリー - 石窯のあるベーカリーが夢だった。次世代の新業態が必要だった。

大きな石窯のあるベーカリーが増えている。
「本物志向」「健康志向」「原点回帰」「癒し」などのキーワードが叫ばれる今日、石窯のあるベーカリーは、
そうした時代の雰囲気を捉えて、着実に浸透している。
ただ、「石窯のあるベーカリー」の成功例においては、例外なく「石窯で顧客に何を提供するか」がはっきりしていることを忘れてはならない。



次世代の新たな業態の必要性を感じ、検討を重ねた。 - 石窯パン工房サンメリー川越伊勢原店

石窯パン工房サンメリー川越伊勢原店の石窯。パン職人が常時1人窯の前について、窯入れ窯出し作業や、焼き上がったパンの仕上げ作業などを行う。


石窯パン工房サンメリー川越伊勢原店の売り場奥から入り口方向を撮影した写真。入り口のドアを開けると、すぐ右手に石窯がある。


街道に面した外壁にも「石窯パン工房」の大きな看板を掲げる。


石窯パン工房サンメリー川越伊勢原店の外観。大きな石窯と煙突が印象的だ。


石窯で焼成する明太子フランス


グラタンフランス


サンメリーの看板商品のひとつ、アントワーヌブレッドも石窯で焼く。


ウインナーソーセージを包んで石窯で焼いたエッセン。
本物志向、石窯、健康、天然酵母
 リテールチェーンのサンメリーは現在、石窯を中心にすえた郊外型のベーカリーを新たに展開中だ。2001年11月に埼玉県越谷市に1号店である「石窯パン工房越谷店」をオープン。
 2003年4月には埼玉県川越市に「石窯パン工房川越伊勢原店」(2号店)を、2003年12月20日には埼玉県入間郡大井町ふじみ野に「石窯パン工房ふじみ野店」(3号店)をオープンした。
 3店とも好成績を収めており、サンメリーでは今後さらに同業態の展開を進めていきたいという。
 「かねてより、次世代の新たな業態の必要性を感じ、さまざまな角度から検討を重ねていました。そんな中で浮かび上がってきたキーワードが、『本物志向』『石窯』『健康』『天然酵母のパン』などでした。その結果『石窯パン工房サンメリー』の業態が誕生したんです」
サンメリー販促マネージャーの宮越紀子さんはこう話す。

タイマーがたくさんある
 2号店の石窯パン工房サンメリー川越伊勢原店は、街道沿いにある。ウッディーな印象を与えるコッテージ風の建物の入り口右手に石窯を設置。大きな円柱状の石窯の半分が外に出ていて、その上には煙突が立っている。 入り口の上と街道に面した外壁には「石窯パン工房」の大きな看板がかかっている。入り口左手には25席ほどのオープンスペースがある。
 入店するとすぐ右手でパン職人が石窯の前でパンの出し入れを忙しそうに行っている。焼き上がったパンの仕上げ作業も石窯の前で行う。活気がある。
 宮越マネージャーは「焼き上がったパンの香りや、窯から出たばかりのフランスパンなどがたてるパチパチという音、パン職人が石窯の前で忙しそうに作業をする様子などは、それら自体でかなりの演出効果があり、店に活気を与えます。石窯は、お客様とさまざまな形で触れ合うきっかけも作ってくれます」と説明する。
 一方、サンメリー商品開発部総括マネージャーの塚田秀明さんは「石窯で焼いたパンは香りが違います。クラストは薄くなるように思います。それと、焼きこんで焼き色が濃くなっても、焦げ臭くならないんですよ。火通りがいいので、焼成時間は短めになります。クラムはもちっとした食感が強くなります。七輪でもちを焼いている感覚に似ています」と説明する。
 さらに「タイマーがかなりの数ありますね」という。大きな石のテーブルが回転する方式の石窯で、複数の種類のパンを同時に焼成するので、それぞれのパンを窯から出すタイミングに常に気を配っていなくてはならないというのだ。
 「基本的には、パン生地を窯に入れて、焼けたら出せばいいわけですが、完全に使いこなせるようになるまで1年はかかると思います。石窯の場合は、職人との一体化がより求められると思います。一度設置したら、300年は使えるといいます。また、平窯などと違って、移動ができません」

天板を効率よく並べるのが大変
 石窯パン工房サンメリー川越伊勢原店では、フランスパンなどのハード系のパンはすべて石窯で焼いている。
 また、サンメリーのロングセラー、アントワーヌブレッドも石窯で焼いている。
 同店の江森光弘店長は「火力が強いので、商品によっては天板を2枚重ねにしたりと工夫しています。ピザはとてもおいしく焼けます」と話す。
 さらに「炉床が円形なので、天板を効率よく並べるのが、慣れるまでは大変かも知れません。型ものを焼くときは、並べる間隔にも気をつけなくてはなりません。間隔が狭すぎると、側面に熱が加わりにくくなりますから。菓子パンは焼き色が付きすぎて、石窯には向いていないと思います」という。
 ハード系の生地を使った商品では、「明太子フランス」(160円)や、ソーセージを包んで焼いた「エッセン」(220円)、グラタンを包んで焼き上げた「グラタンフランス」(140円)などが売れ筋になっていて、ハード系の売り上げ構成比は、3割強だという。



クラストにコクがあって、クラムはしっとりとやさしい - 石窯パン工房暖家

石窯パン工房暖家オーナーの内海敏幸さん(石窯の前で)。


入店して売り場の右奥が石窯になっていて、迫力満点だ。


石窯で焼くために開発したレトロバゲット。


ハンドルを回転させると石窯の円盤状の炉床が回転するようになっている。


炉床は円形だ。


石窯で焼くとおいしく焼けるというデニッシュ類。


全粒粉を使ったライ麦パンの「ダンケハース」(130円)


「エピ」(180円)とチーズフランス(180円)。


石窯でやいた「カリカリピザ」。ピザは石窯で焼くにはうってつけの製品だ。
リニューアルに伴って石窯を導入した
 「クラストにコクがあって、クラムはしっとりとやさしい。食べているとほっとする」
 埼玉県戸田市のベーカリー、石窯パン工房暖家のレトロバゲットはそんな感じのするパンだ。確かにどこか違う。「2日間かけてていねいにじっくり発酵させた本格的なフランスパンです」とポップに紹介されている。石窯で焼くために開発した新商品だ。
 全粒粉とライ麦粉を天然酵母で発酵させて作るライ麦パン「ダンケハース」(130円)も香り豊かだ。噛むとさくっとしていて食べやすい。
 プリンをイメージし、カラメルソースをたっぷりとかけて焼き上げた「シンフォニードラム」(180円)などの甘系のパンも石窯で焼くと一味違うそうだ。
 同ベーカリーオーナーの内海敏幸さんは「デニッシュなんかは本当にさくっと仕上がります」と満足気だ。
2003年4月、リニューアルオープンと同時に石窯を導入した。それまでは、現在の店舗から程近い場所で営業していた。
 「貸し店舗だったし、通いだったし、子供も小学生になって、何かと大変だったので思い切って、『自宅兼店舗』を建てたんです。どうせ建てるなら、お客様を呼べる石窯でやりたいと考えました。石窯のベーカリーは私の長年の夢でもありました」と内海さんはいう。

建物の基礎の上に直接組んでいく
 同ベーカリーの石窯はスペイン製で、店舗設計施工会社のダイユーが輸入販売しているもの。
 据付は、建物の基礎ができた段階で行う。
 スペインから職人が数人やってきて、建物の基礎ができたところに、石窯を組んでいった。4〜5日程度で作業は完了したそうだ。
 内海さんは「石で囲われた空間の中に円形の炉床があり、炉床は石窯の外壁に取り付けられたハンドルを回すと、回転するようになっています。少しずつ回転させながらパンを投入していきます。外壁は後から石窯に貼り付けるので、好みの外観にできます」と説明する。熱源はガスで、円形の炉床の下で燃焼させる。
 石窯パン工房暖家に入店すると、目の前に石窯が迫ってきて迫力がある。目の前にある石窯で焼かれたパンであることをいやおうなしに顧客に訴える。「どのパンをこの窯で焼いたのですか」と聞いてくる顧客も多いそうだ。
 「石窯の中でパンが焼けていく様子が見えたらうれしい」という声も少なくないという。パンの製造スペースと売り場の仕切りがほとんどなく、顧客と同じ空間でパンを焼いているという印象を与える。
 親に連れられて来店した子供が、中を見たいというときは、窯の生地投入口まで連れてきて、見せることもあります。眼を輝かせて見ていますよ」と内海さん。
石窯がきっかけとなって、顧客とのコミュニケーションも深まっているそうだ。

最も違うのは蒸気の扱い方
 「石窯で焼く場合、普通の窯とどんな点が違いますか」との質問に対して内海さんは「最も違うのは、蒸気の扱い方です。つまり蒸気がのりづらいんです。私の場合は、焼く前にパンに霧吹きで水蒸気をかけています。それと、クープがたたないといっているのですが、通常の平窯で焼く場合よりクープを深く入れないと、うまく開いてくれません」と答えてくれた。
 「しかし焼き上がったパンは、風味が断然違います。また、次の日になっても品質があまり落ちません」とも。
 「他では売っていないもの、ウチ独自のものを打ち出していかなくては生き残っていけません。石窯はそのための有効な手段であることは確かだと思います」と内海さんは話した。





原価計算女王
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