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| 食のトレンドを追う/2009年11月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 作る過程が大切。「みんなで作る」味が一流品になるまで | |
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パンとワインは、キリストの血と肉に例えられるほど、長い歴史の中で身近であった食べ物である。「作ること」自体が癒しとなるパン作りや、「作ることに意義がある」だけでは駄目だと品質にとことんこだわるワイン作りのキーワードは、「仲間とともに作ること」。心を込めて、みんなで作った味は、大手メーカーにはない美味しさがある。
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| 的障害者が心を込めて作るピカ一のワイン | |
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栃木県足利市にある「ココ・ファーム・ワイナリー」。毎年11月、第3週目の土・日の2日間で行われる収穫祭には全国から1万6千人ものワイン好きが集まるという、人気のワイナリーだ。
ワインは全国のレストランやスーパーにも卸しており、一級品の味は有名である。ソムリエ・田崎真也氏に選ばれ、2000年の沖縄サミットでは、首脳の晩餐会に用いられた。このワインを作り出しているのは、知的障害者更生施設「こころみ学園」の園生たち。 ワイナリーは、こころみ学園の園長・川田昇さんが、戦後、中学校の特殊学級の担任になったとき、作業学習を兼ねて校庭で子供たちと一緒に葡萄を育て始めたことに遡る。川田さんは「山ほどの仕事を用意することで、精神的に鍛えられ、互いに助け合う心も生まれる。知的障害者が誇りと責任の持てる仕事を用意したい」と、1969年、私財を投じてこころみ学園を開設、1980年に、園生の父母らの出資でワイナリーが作られ、4年後に初出荷となった。 アメリカのカリフォルニアから、ワインの醸造専門家であるブルース・ガットラブ氏を顧問に迎えた。厳しい品質チェックに応えることで、園生たちのワイン作りへの誇りも高まっていった。彼らは、労働基準監督署の担当者に「休みはありません」と言ってしまうほど、生活が労働とともにある。自然のリズムの中にとけこんで働いているという。 「葡萄は、週休2日で育つものではありません。近代的な労働の枠にとらわれない彼らの働き方は、現代人よりも、より人間らしい、人と労働のあり方だと思います」(職員の池上さん) 園生は、毎日膨大な仕事に明け暮れる。平均傾斜38度の斜面を往復、除草剤は撒かず、草刈も彼らの手によって行われる。草を刈ることも、彼らの大切な仕事だからだ。障害を持っているからといって甘えは一切許されない。しかし、昼間、力いっぱい働くことで、規則正しい生活となる。 現在、園生のほとんどが中高年者だ。しかし、それは、彼らが長い間ワイナリーで働き続け、ワイン作りの職人となったことの証でもある。作業の流れは身体にしみこみ、季節の移り変わりとともに、すみやかに次の仕事に取り組み始める。1粒1粒良質な葡萄の実を選別し、1房1房、丁寧に袋をかけると、その数は約12万枚にもなるという。その徹底的な緻密さと葡萄への思いやりは、ビジネスとしてのシステムを優先せざるをえない他社ワイナリーやメーカーでは真似できない点である。 結果として、現在流行の「有機農業」や「オーガニック」などという呼び名で区分されることになったが、決して「オーガニックなワイン作り」が目的ではない。1つ1つの作業過程そのものが、園生たちにとって欠かせない「誇りある生活」なのである。 さまざまな「こだわり」をウリにする商品があふれているが、市場で勝つためではなく、心からよい葡萄を作りたい、という思いが一級品として結実しているようだ。 |


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