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食のトレンドを追う/2009年7月号

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若者も注目するウイスキーの魅力。復権を狙う業界の戦略とは?パンとの異色コラボも人気!

昨年12月にオープンした「スプリッツアオヤマ」(東京都港区青山5-8-5 地下1階、電話03-6419-1899)。カジュアルながら都会的な雰囲気。奥には大人っぽい本格バーもある。ウイスキーをソーダで割った“スプリッツ”は、驚くほど飲みやすい。表参道という立地ながら、1杯380円からというリーズナブルな価格も女心を掴んでいる
 若者のアルコール離れが叫ばれて久しい。発泡酒や第3のビールなど、よりライト嗜好へと変化を遂げる中、ウイスキーも市場を縮小しつづけてきた。しかし昨年あたりから様相が変わり始めている。復活の兆しが見えはじめているのだ。いったいそこにはどんな背景があるのか――。メーカーサイドの戦略を探った。

 リビングボードに仰々しく陳列され、ひときわ存在感を放つ琥珀色の瓶。子供達が寝静まると、父親がそれを取り出し、満足げにグラスに注ぐ――。昭和の家庭は、そんな日常で満ち溢れていた。街中のバーには、ウンチクを語りながらグラスを傾けるサラリーマンの姿があった。ウイスキーは、まさに『大人の男』の象徴であり、独特の雰囲気をたずさえたお酒だった。
 あれからはや数十年。加速するアルコール離れや嗜好のライト化で、ウイスキーはすっかり影を潜めてしまった。国税庁の調査によると、その消費量は83年をピークに減少し、07年にはピーク時の約5分の1。今や若い世代で、シングルだのオンザロックだのといった言葉の意味を知る人すら少ない。  しかしここへきて、ウイスキー業界に活気が戻りつつある。08年の国内出荷量は10年ぶりに前年比超え。特に海外需要は高く、07年のスコッチウイスキーは、過去最高の輸出量となっている。明るい兆しが見え始めたウイスキー業界。メーカー側も、復権に向け本腰を入れて動きだしている。



『日本のウイスキーはウマイ』。複雑で深みのある味わい

07年、09年とワールドウイスキーアワードを制し、世界的にも多くのファンを持つ「竹鶴21年ピュアモルト」


スモーキーさを抑え、くせがなくスッキリとした飲みのごこちの「ブラックニッカ・クリアブレンド」


「スーパーニッカ」は3月にリニューアル。ウッディな香りと、スイートなバニラの香りが特徴。スモーキーさを抑え、飲みやすくした
 そもそもウイスキーは、大麦などの穀類を発酵させて蒸留した後、木の樽で熟成して作られる。世界5大産地はスコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、そして日本。なかでも日本産は世界的に評価が高い。英国のウイスキー専門誌主催の「ワールドウイスキーアワード」では、07年の開催以来、日本勢の受賞が続いている。
 「日本のウイスキーは、違うタイプの原酒を造り分けてブレンドしており、繊細で深みのあるフレーバーが特徴。特に欧州では人気が高く、弊社の08年度の輸出量は前年比の4割増」とは、アサヒビールマーケティング本部の上川裕二氏。同社が販売するニッカの「竹鶴21年ピュアモルト」は07年と09年にブレンデッドモルトウイスキー部門で最優秀賞、08年には「シングルモルト余市1987」がシングルモルトウイスキー部門を制した。 
 同様に、日本勢であるサントリー「山崎」ブランドも、海外コンペで連続受賞を果たしており、品質は折り紙つき。
 国内状況も明るい。ニッカの「ブラックニッカ・クリアブレンド」は、
「23カ月連続の前年比超え」(前述・上川氏)という好調な伸び。47年続く定番の「スーパーニッカ」も、3月にリニューアルを果たし、着々と復活に向けて足場を固めている。
 「現代人の嗜好に合わせ、改良を重ねた。スモーキーさを抑えながら『余市』の原酒を加えることで、バニラの香りや味わいを引きだすことができた」(前述・上川氏)
 HP上でも、ジャズとのコラボ企画を行なうなど、年代を超えたウイスキーの格好よさをアピール。
 上川氏は、「その魅力を一人でも多くの人に知ってもらいたい。手ごたえは感じている」と、自信をのぞかせる。



女性の女性による女性のためのウイスキーBAR

ウイスキーに合うことを前提に作られたパン「ソーダブレッド」は、「スプリッツアオヤマ」でしか食べられない逸品。これを求めて来店する人も多い


「スプリッツアオヤマ」では、ボトルキープに、シリアルナンバー入りのオシャレなネームタグを使用
 一方、業界シェア1位のサントリーは、「山崎」をはじめとする高級ウイスキーをアピールすると同時に、若者向けのカジュアル路線で復権を狙う。6月にはウイスキーをソーダで割った『ハイボールセット』(特製ジョッキ、角瓶[180ミリリットル]、サントリーのソーダ[200ミリリットル]入り)をコンビニ限定で発売。主力商品の「角瓶」を扱う「角ハイボール店」と、ハイボール専用器材を設置した「角ハイボール酒場」を年内に続々出店する。
 「ハイボールは、アルコール度の低いライトなお酒を好む傾向が強い若い世代のスタイルに合っている」(サントリーホールディングス広報部・小島葵さん)
 中高年世代にとっては懐かしいハイボール。世代を超えたコミュニケーションの架け橋となるかもしれない。
 そして、新業態として注目を浴びているのが、イタリア風バール(居酒屋)と高級バーを組み合わせたウイスキーバー「スプリッツアオヤマ」。狙うはズバリ、アラサー世代の女性たちだ。
 「消費を牽引するアラサー世代の女性たちも、ウイスキーに関しては知識がまっさら。だからこそ市場として面白いし、狙えると思った」
 そう話すのは、同店をプロデュースしたミュープランニング&オペレーターズの小出理紗さん。当初は、サントリー側もこの企画案に面食らったそうだが、新しい試みに期待をかけた。開発チームは皆アラサー女性。目指したのは、『自分が本当に行きたい店』だった。
 「女性がウイスキーの魅力を知る入り口になるよう、『分かりやすさ』を追求した」(前述・小出さん)
 まさに、女性の女性による女性のためのウイスキー店。そこには『ならでは』の仕掛けがあふれている。
 「店名でもある『スプリッツ』は、お酒の名前。アルコール度約8%のハイボールをさらに約5%にまで落として飲みやすくし、専用サーバーで、ソーダに加える圧力も調整可能にした」と小出さん。シュワシュワした泡はキメ細かく、口当たりがいい。シャンパンのような印象だ。特にこだわったのが、パンとのコラボ。ウイスキーに合う「ソーダブレッド」は、表参道の「デュヌラルテ」が特別に開発した。
 「イーストを使わず、重曹で膨らませている。ほろほろとした独特の食感で、ウイスキーとの相性は抜群。大人気のメニューです」(前述・小出さん)
 ボトルキープには、シリアルナンバー入りのオシャレなネームタグを使用。王冠チャームが付いたアクセサリーのようなIDストラップは持ち歩き可能。まるいグラスも女性心をくすぐる。
 「当社はそもそもウイスキーとともに成長した会社。業界を盛り上げたいという思いは強い」(前述・小島さん)



ウイスキー人気の背景には巣篭もり型のライフスタイル

 しかし、なぜ今ウイスキーなのか。そこにはこんな時代背景もみえてくる。
「ウイスキーは飲み方によって、シチュエーションも味わいも自由自在。家で飲む人が増えている今、自分の『くつろぎの時間』を演出してくれるツールのひとつになっているのかもしれません」(前述・アサヒビール上川さん)
 食事やパソコンなど、『ながら』飲みの多い巣篭もり型ライフスタイルの相棒としても、うってつけの存在なのだ。地酒にワイン、シャンパン、本格焼酎…ブームは、もはや一巡した。満を持した出陣――。古きよきものが、新たな演出のもとで時代を超えて蘇る。ウイスキーは、再び表舞台に上がるか。復権にかける人たちの思いは熱い。(N)



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