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食のトレンドを追う/2009年5月号

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カロリー・糖質・脂肪・コレステロール……。美味しいのは当たり前。不況下で拡大する「ゼロ」市場

チョコレート、ハム、ヨーグルト、食用油…さまざまな食品で「ゼロ」がうたわれている昨今
健康志向のニーズがますます高まりを見せるなか、巷には「ゼロ」「オフ」を押し出した食品が続々登場している。政府のメタボ対策もブームを後押しするなか、今後も高い成長性が見込まれている。しかし肝心の「ゼロ」に関して、我々は意外に知らないことが多い。表示のカラクリから、ブームのトレンドまで、その流れを追った。



消費者の心を掴むキラーワード

ビール、酎ハイなど酒類でも「ゼロ」はおなじみだ


健康志向型の新商品投入により、従来型も含めたブランド力強化に成功した日本コカ・コーラから発売されている「コカ・コーラ ゼロ」
 最近、スーパーの陳列棚で「ゼロ」「オフ」といった低カロリーを謳った商品の存在がひときわ目につく。
 ビールや清涼飲料水を始め、ゼリーやヨーグルトからハムなどの食品類に至るまで、「ゼロ」コンセプトを前面に打ち出した商品が相次いで登場している。ある食品メーカーは、「健康志向は時代の流れ。ゼロ市場もさらに膨らむ」と期待をにじませる。今や「ゼロ」は、消費者の心をガッチリ掴むキラーワードとして定着したといっていいだろう。
 健康志向の高まりはもちろん、ここへきてゼロ市場が更なる勢いを見せているのは、昨年4月に始まった特定健康診査・特定保健指導「メタボ検診」の義務化にある。40歳以上の医療保険加入者は検診が定められ、結果によって指導を受けなくてはならないのだ。
平成19年度の「国民健康・栄養調査」によると、40〜74歳におけるメタボリックシンドロームの該当者数は約1070万人、予備群の数は約940万人にものぼる。およそ2010万人が『メタボ』あるいは『メタボの疑いアリ』と推定されているということだ。これは、男性の2人に1人、女性なら5人に1人という数字。もはやメタボは他人事ではなく、国民全体の関心事といえるだろう。こうした状況を背景に、「ゼロ」市場の競争は激化、さながら『メタボ特需』ともいえる盛り上がりを見せている。



「カロリーゼロ」はゼロではない!?

日本初のカロリーゼロの飴「ラカント カロリーゼロ飴」の紅茶味(上)と抹茶味(下)
 しかしこの「ゼロ」表示、本当にゼロカロリーかというと、実はそうではないことをご存知だろうか。厚生労働省の健康増進法第31条「栄養表示基準に基づく栄養成分表示」によると、食品100グラム(100ミリリットル)あたり5キロカロリー未満、タンパク質、脂質、炭水化物、糖質と糖類(糖分)は0・5グラム未満などの基準を満たしていれば、「カロリーゼロ」「ノンカロリー」と表示できる。500ミリリットルのペットボトルなら、最大で約25キロカロリーを摂取している計算だ。微々たる数字ではあるが、まったくのゼロカロリーと解釈しているととんだ誤解になる。
 さらに、「カロリーオフ」「ローカロリー」「低カロリー」という表示の場合、その基準はまた違う。100ミリリットルあたり20キロカロリー未満までは「カロリーオフ」などの表示が可能。同じく500ミリリットルのペットボトルで比較すると約100キロカロリーの摂取になり、知らずに常飲するには少々注意が必要だ。かなり紛らわしいこれらの表示に戸惑う消費者は少なくない。が、
「『オフ』『ゼロ』などの表示を謳う際には、必ずパッケージに、エネルギーなどの必要項目を表示するよう義務付けられている」(厚生労働省・新開発食品保健対策室)
 確かにボトル側面を見ると、エネルギーやたんぱく質などが記載されている。糖尿病やメタボの人は、ゼロ表示に惑わされずに、自分の目で数字を確認する必要があるということになる。



問われるのはプラスアルファ



オハヨー乳業から発売されている「脂肪&砂糖0%ヨーグルト」シリーズ。いちご、パイナップル、マンゴーがある。フルーツの加熱処理には、独自の「短時間密閉式殺菌法」を使用、砂糖を使用せずフルーツ本来の味わいが生かされている。砂糖と脂肪の両方がゼロという商品はフルーツヨーグルトでは珍しい
 そもそも「ゼロ」市場の火付け役になったのはビール業界。こちらはカロリーではなく、「糖質」のゼロ化だ。まずは2001年にサントリーが糖質70%カットの「ダイエット〈生〉」を、次いでキリンの「淡麗グリーンラベル」が発売され、糖質カットの流れは進んだ。そして2007年の3月にアサヒビールの「スタイルフリー」で糖質は一気にゼロへと突入。その後、糖質ゼロにカロリーオフも加わったキリンの「麒麟ZERO」や、ホップの香りを売りにしたサントリーの「ゼロナマ」など、新たな付加価値を持った商品が登場した。
 競合商品が増え、消費者の選択肢が増えると、プラスアルファが問われるようになる。事実、好調な売上で生産拠点を拡大した「麒麟ZERO」に比べ、「ゼロナマ」は売上が伸びず、活路を見出せないまま、発売6カ月で製造中止。その明暗がくっきり分かれた。糖質ゼロは当たり前、その上で味わいやカロリーなどプラスアルファをどう打ち出すか。新たなゼロ競争は始まっている。
 そして現在、ゼロブームに沸いているのが清涼飲料市場。2007年の6月からいち早く「ゼロ」商品を投入、市場を牽引してきた「コカ・コーラ ゼロ」は、今年2月にパッケージをリニューアル、保存料ゼロを打ち出して、新たに市場を拡大している。
 「発売当時のターゲットは20〜30代の男性でしたが、リニューアルで女性へも広げました」(日本コカ・コーラ広報担当)
 同社には、同じくゼロカロリー商品の「コカ・コーラ プラス」がある。
 「『コカ・コーラ ゼロ』が、従来の赤い『コカ・コーラ』に限りなく近い味わいなのに対し、『コカ・コーラ プラス』は、レモンフレーバーのビタミンCをプラスし、ターゲットも女性に絞っています。サプリ感覚で手軽に栄養素などを取っていただきたいというのがコンセプトです」(同広報担当)
 ゼロカロリーの登場により、従来の「コカ・コーラ」の売上に影響しているのかと思いきや、そうではないらしい。
 「むしろ両方伸びています。商品ごとにコンセプトもターゲットも違う。キャンペーンなどマーケティング戦略も変えており、棲み分けができています」
 日本最古の炭酸飲料「三ツ矢サイダー」(アサヒ飲料)も、5月26日からカロリー、糖質、保存料ゼロの「三ツ矢サイダー オールゼロ」として、ゼロ市場に初参戦する。
 「三ツ矢サイダーブランドの味わいを活かしながらカロリーをゼロにするのに6〜7年の開発期間を要しました。若い層はもちろん、炭酸飲料は飲みたいけれどカロリーも気になるという30〜40代に飲んでもらいたいです」(アサヒ飲料広報部)と意気込みを見せる。2004年に開発された新製法により、5年連続で売上を伸ばしており、ゼロ参入で一気に弾みをつける算段だ。
 また意外なのが『飴』。これまでシュガーレスを謳ったものは多かったが、カロリーゼロの商品は存在しなかった。3月に初「ゼロ」商品である「ラカント カロリーゼロ飴」(サラヤ)が発売され、好評を期している。甘味成分は、とうもろこしから作られる発酵ブドウ糖と羅漢果エキスの天然素材を使用。
 「天然素材のみでカロリーゼロを実現するのに苦労しました。素材の選別や飴の食感に近づける固形化など、失敗を重ねながらようやく納得できるものができました。お客様の反応もよく、手ごたえを感じています」(サラヤ広報部)
 次なる「ゼロ」の行方はどこか――。消費者は、いつの時代も貪欲に進化する。すでに「ゼロ」に慣れつつある我々にとって、味と意外性を兼ね備えた「ゼロ」商品の登場に期待は高まる。(N)



原価計算女王
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