地元を大事にした商売を目指す - 本牧クレール - ブランスリー電子版

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お店拝見/2009年6月号

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地元を大事にした商売を目指す - 本牧クレール

「本牧クレール」の外観。JR横浜駅東口バスターミナルから市バスで約40分のバス停「桜道」から数分のところにある。「三溪園」に通じる道の途中だ
 1996年3月、「本牧クレール」は、横浜市内にある有名な日本式庭園である「三溪園」(さんけいえん)近くにオープンした。店長の岡島雅泰氏が28歳のときである。店舗は自宅の敷地内にあり、開店と同時期に結婚した美奈さんとの二人三脚で始めた。
 岡島氏は、最初からベーカーになろうとは考えていなかったという。高校を卒業してから一年後の19歳の時に、「手に職をつけて一生できる仕事をしたい」との思いから、好きだったパンの世界の扉を開けた。初めての修業先である横浜のベーカリーには飛込みで訪問した。そこでの約3年間で、製パン技術を学ぶと同時にベーカリーの「一通りの流れをつかんだ」。その後、大型複合施設内のベーカリーで店長を務めたあと、1日の売上16万円の小さな横浜市磯子区内のベーカリーで、製造部門のほとんどを担う2年間を送った。この店が最後の修業先となった。
 修行中の経験から「地元の大切さ」を痛感していた。修業したベーカリーのひとつがあった複合施設のコンセプトは「衝動買い」。来店客が無意識に製品を購入してしまう店舗配置を特徴にしていたが、地元の人々には統一感が感ぜられず、不評だったという。オープンから4年後に閉店したが、施設内にベーカリーが存在したことを認識していた人は少なかったようだ。最後の修業先のベーカリーでは、日々地域のお客の嗜好を製品作りに反映させるよう努力する姿を見続けた。相反する二つの経験が「地元のお客様を無視し
ては商売は成り立たない」ことを岡島氏に改めて意識させた。



真剣に衛生管理に取り組む

地域密着のパン作りを心掛ける岡島雅泰店長


ドアを開けたら右へぐるりと一周しながらパンを選ぶ


4月の桜のシーズンには、ピンク色の桜のトンネルになる。その先に本牧クレールがある
 店名の『クレール』は、フランス語で「明るい」という意味。岡島氏の「地元の皆様といいお付き合いがしたい」、そんな気持ちが込められている。それと、修業を始めた20数年前「奇麗な職場で働きたい」と飛び込んだこの世界への思いもあるようだ。当時、お客として接するベーカリーは明るくて奇麗な職場に見えたから。
 「でもね・・・」と、ため息をついてから自店の工場の衛生管理について話し始めた。「私は、工場の清潔さについては、他の店に負けないと思っています。店舗を設計する際、工場の設計は自分で取り組みました。ご覧になっていただければ分かるように、工場内に設置した機械などの諸設備は、すべて床から5センチ離しています。この方法だと害虫は住めませんし、ましてや繁殖は不可能です」
 もちろん、工場全体の掃除がいちばんである。時間があれば念入りに行なう。オーブンなど機械類も丁寧に掃除をする。機械の天井部分のホコリも奇麗に除去。だから、機械メーカーの担当者が、「10年も使っているとは思えないね。これでは、機械屋は商売にならないよ」と冗談を言うそうだ。真剣な衛生管理への取り組みは、かつて奇麗な職場で働きたいと思ったことと、お客に「おいしいパンを食べてほしい」との思いがあるからに他ならない。



店の姿勢を反映、デニッシュ食パン

「じわりとおいしい」と評判の「デニッシュ食パン」


地元の人が喜ぶ「チョコブレッド」


ゆったりとした店内。月曜日の午後1時。すでに品薄の状態であった
 本牧クレールの一番の人気製品は「デニッシュ食パン」(450円)。開店時からの製品で最初の売れ行きはそれ程でもなかったが、今では、他店の味を知っているお客が「おいしい」と言って購入してくれるのが、うれしいそうだ。また、昨年秋からイトーヨーカ堂本牧店に他の11品目とともに卸しているが、切っ掛けは同店の幹部がその味を絶賛したからだという。地元を大切にしてきた結果であろうか。
 次に、卵を入れた菓子パン生地にたっぷりのチョコペーストを折り込んだ「チョコブレツト」(470円)は、地元の人たちに人気だ。「ころころチーズ」(1個35円、5個入150円、10個入300円)は生地に牛乳を使用。さいの目のチーズを入れて、しっとりと焼き上げている。散歩しながら食べるのに都合がいいと、三溪園を訪れる観光客にも人気だ。この他、ミニクロワッサンの「ミツ」(1個35円、5個入150円)は仕上げに柑きつ系の蜜をコーティング。サッパリ感が評判だ。「クロワッサンブレド」(450円)は、デニッシュ食パンを甘く感ずる人の声に応えて作った製品。健康を意識するお客には「玄米ブレッド」(450円)がある。



地元だから出来るパン作りがある

成形後の「桜あんぱん」


季節限定の「桜あんぱん」はこの時期のヒット商品


しっとり仕上げた食べやすい「ころころチーズ」


ミニクロワッサンの「ミツ」(右)はサッパリ食感が人気。左は「チョコ」
 店舗前の道は、4月の初旬になると桜が満開だ。淡いピンク色の桜のトンネルが出現する。この時期1日200〜300個も売れるのが期間限定品の「桜あんばん」(160円)だ。あんに桜の葉を入れる工夫をした。地元の人ばかりではなく、三溪園に行く道すがらおやつ代わりに買った観光客が、帰りに土産にと購入していくほどのヒット商品。
 観光客の多い春と秋は「製造担当者を雇いたい」気分だが、売り上げに響く暑い夏やイベントの少ない冬は、より地元が頼り。商売がやりにくい場所だと感ずることもあるが、例えば、給食でクレールのパンを食べた幼稚園児が、母親におねだりして店に買いに来る姿を見ると、生まれ育った街だからこそ出来るパン作りがあるはずだと思う。



SHOP DATA

店名 本牧クレール
住所 神奈川県横浜市中区本牧三之谷17-23
電話 045-621-8688
営業時間 午前7時〜午後6時
定休日 火曜日
品揃え 約40品目
店舗面積 37坪(うち販売スペース12坪)
スタッフ 製造1人、販売1人
月商 約240万円

原価計算女王
原価計算女王

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