「早い・安い」から「遅い・高い」へ…。「ご当地バーガー」が変える。日本のハンバーガー文化 - ブランスリー電子版

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食のトレンドを追う/2008年12月号

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「早い・安い」から「遅い・高い」へ…。「ご当地バーガー」が変える。日本のハンバーガー文化

上層にずわいガニのむき身、下層にたらばガニのカツを挟んだ「たらばとずわいの王様バーガー」は、1200円
 1904年、アメリカで開催された「セントルイス万国博覧会」会場で売り出されたのがはじまり、ともいわれるハンバーガー。日本では、1950年頃、長崎県佐世保市で、在留アメリカ兵を通じてレシピが伝わったのが最初だそうだ。その後、1971年に銀座にマクドナルドが上陸したことを機に、ファストフード店を中心に新たな食文化としてまたたく間に定着することとなった。そして近年は、日本人の味覚や食文化に合わせ、米をバンズに使用した独自のハンバーガーなども現れた。中でも、今最も注目されているのが、全国各地の食材をパテに使用した「ご当地バーガー」だろう。



群雄割拠のご当地バーガー

 自慢の高級食材をバーガーの具材に使用し、全国各地でご当地バーガーの開発・販売の嵐が巻き起こっている。「牛タンバーガー」(宮城県)、「淡路島バーガー」(兵庫県)、「ふぐバーガー」(下関市)、「くじら竜田バーガー」(山口県)、「馬肉バーガー」(熊本県)などと、枚挙にいとまがない。さらに、ブラックバスやエゾシカ、イノシシなどの害獣を活用したハンバーガーも現れた。パンにイチオシの具材を挟んでオリジナリティーを表現できる手軽さも、ご当地バーガー隆盛のカギのようだ。
 一方で、ファストフードのウリであった「安い・早い」とは対照的に、「遅い・高い」がコンセプトのご当地バーガーが多いことも特徴だ。注文を受けてから焼き上げる手間ひまと国産素材――。若者中心の食文化「ハンバーガー」の新しい潮流は、パン業界にとっても注目しておきたいところだ。 



パテのネタが豊富な「食の王国」北海道

観光スポット「札幌時計台」の目の前にある「北海道カフェ」は、観光客も地元客もゆったりくつろげる場所


「北海道バーガー」シリーズのひとつ「北海道十勝牛&エッグバーガー」。同シリーズには他にも「帆立コーンバーガー」など合計7種類がある。
 水産物や酪農産物などで名高い北海道には、地元産の小麦粉、豚、タコなどを使用した「北海道いしかりバーガー」ほか「ほっけバーガー」「ほたてバーガー」「ザンギバーガー」など、ご当地バーガーが目白押しだ。
 そんな中で、「北海道カフェ」は、「北海道を味わい、感じることのでき
るスローフードカフェ」として今年1月にオープン。北海道の素材をふんだんに使用した、手作りハンバーガーやサンドイッチなどがウリ。札幌のシンボル、札
幌時計台の目の前という好立地を活かし、地元客から観光客まで様々な客層を取り込む。
 「食の安全が騒がれる昨今、安心で美味しく、作り手が見えるハンドtoハンドの料理で、地域固有の魅力や安全性を全国に先駆けて発信できるカフェでありたいと思っています」(広報担当・川口貴司氏)
 観光客に人気の「たらばとずわいの王様バーガー」を軸に、パテには十勝産の牛肉や知床産の鶏などを使用して、北海道を十分に味わい、楽しめる「北海道バーガー」シリーズを展開する。バンズには北海道産小麦「キタノカオリ」を使用。胚芽入りや全粒粉などさまざまなバンズを試した結果、胚芽の甘味が食材の美味しさを邪魔することがわかり、胚芽なしのバンズに決めた。
「ファストフードの『早い』に対して、当店は『おいしさの追求』が第一。全てが手作業なのででき上がりまで時間がかかるし、多くのファストフード店が国外産食材をメインに使用している中、ほとんど国産や北海道産の食材を使用しているので、値段も高めになります。でも、全てはおいしいハンバーガーを提供するためです」



ブランド確立を進める「佐世保バーガー」

「ザッツエンタープライズ」代表、吉村裕氏。2006年に佐世保バーガー普及の功績への感謝と将来への期待から、佐世保市長より「佐世保バーガー観光大使」に任命された


「ザッツ佐世保バーガー」(写真)は、レギュラーサイズ690円、ジャンボサイズ1380円。他にも、「アボカドバーガー」「チリビーンズバーガー」「ラタトゥイユバーガー」などがある
 一方、「ザッツバーガーカフェ」は、東京都内を中心に8店舗を展開。運営するザッツエンタープライズ代表の吉村裕氏は故郷の佐世保で修業を積み「自分が食べて育ったハンバーガーを東京にも」と、日本で初めて「佐世保バーガー」と名づけたハンバーガーを売り出し、佐世保バーガーブームやご当地バーガーブームの端緒を作った。 
 佐世保市は、マクドナルド上陸以前よりハンバーガーに親しんできた街であり、独自の手作りハンバーガー店が多いのが特徴。そんな佐世保のハンバーガーに、関東圏の人も食べやすいように改良を重ねた。パテは100パーセント国産牛、挟む野菜やバンズに使用する小麦粉なども全て無添加の国内産だ。手作りなので、注文を受けてから客席へ届くまで15分程度かかる。バンズは、硬さや大きさなどを吟味した結果、食パンに近い製法にしたという。
 「ハンバーガーのバンズは、歯切れがよいタイプが一般的ですが、あえてちぎれにくい、もっちりとした食感にしました。中に挟む具材との調和を重視し、バンズが目立ちすぎないようにするためです」(吉村氏)
 ボリュームがあるが、添加物が含まれないため、お腹にもたれず女性票も多い。
 ザッツエンタープライズは、ショービジネスほか、エンターテインメント事業も手がける「アクターズグループ」の1業態だ。代表の吉村氏は、1年以内に佐世保バーガーの元祖としてブランド確立を目指すという。また、単なるハンバーガーショップではなく、グループ全体が掲げる社会貢献型のビジネスモデルの中で役割を担い、ハンバーガー業界でトップに立つことではなく「かつて存在した大人文化」の復興を目的としている。11月5日にオープンした六本木店は、そんな大人文化復興の旗艦店として重要な存在だ。
 「昔は、子供が近づけない大人だけの場所や文化がありました。当店は、そんな『大人のサロン』でありたいのです。大人たちにハンバーガー片手に議論などをしてもらいたいので、メニューは全てアルコールに合うもの。大人のためのハンバーガーなので、安さを求める人やオコサマはご遠慮願いたいという本音はありますよ(笑)」(グループ会長・本橋千明氏)
 同店は、ハンバーガーを食べた経験がないという60〜70代の人や、舌の肥えている富裕層も好んで訪れるそうだ。

一過性で終わらせない努力が必要

「ザッツバーガーカフェ」店内は、落ち着いた大人の雰囲気(写真は六本木店)
 ご当地バーガーブームについて、「北海道カフェ」の川口氏は輸入文化のアレンジにたける日本人の長所と結びつけ、こう語る。
 「日本人に親しまれているハンバーガーを、ご当地食材を盛り込んで作ることは、地元をこよなく愛するという意味で素晴らしいことです。また『旨みDNA』とでも言うのか、もともと日本人はひとつの食べ物をさらに美味しく変化させたいという欲求が強いと思います。大豆を藁(わら)に詰めて腐らせ納豆を作ったり、生では食べられない梅を塩漬けにして梅干にしたりというアイデアは、古来から洪水や飢饉などに頻繁にさらされながらも、生き延びていくために考え出した日本人の知恵です。そんな『よりおいしいものを作りたい、食べたい』という思いは、ハンバーガーにも芽生えて当然でしょう。日本人が生み出す『食へのこだわり』を、この店を通じて全世界に発信したいですね」
 一方で、「ザッツバーガーカフェ」の吉村氏は、ご当地バーガーブームは、地方の食材や名産品が見直されて地域の活性化につながるよい契機になるとしながらも、ブームで終わらせないようにと、注意を呼びかける。
 「ご当地バーガーを一過性のもので終わらせないために、本当においしい商品を作る研究が必要です。そのために、ご当地バーガー販売を考えている地方のお店のプロデュースなども考えています」
 「便利で安い」全国均一の味と品質から、作り手のこだわりが加わることで、それぞれ個性を放ちはじめたハンバーガー。地域の特産品を気軽に楽しんだり、店舗を通じて文化の香りに浸ったりと、より深みのある、日本ならではのハンバーガー文化が生まれてきたようだ。(U)

原価計算女王
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