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業界アンテナ/2009年2月号

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ユーザーを成功へ導くための提案力
 製パン業界でビジネスをする機械メーカーや輸入業者は数多いが、最近は、ユーザーの個性を見抜き、それを育て、ユーザーを成功へと導くための提案力がないと、生き残れない時代になった。今回は、ドイツ・ウェルカー社製オーブンの輸入販売で有名な新光食品機械販売の伊藤圭専務に、同社の様々な取り組みと、業界の状況などについて聞いた。



プロデュース力が問われる

―――新光食品機械販売というと、ドイツのウェルカー・オーブンで有名ですよね。
伊藤 140年の実績があるオーブンです。本場ヨーロッパの伝統的な設計で、余計な装備はまったくなく技術者の創造欲を掻き立てる窯です。外観も設計も長い間変化していませんが、ダイレクトな使用感が好評で、腕に自信のある技術者を中心に信頼を得てきました。そんな訳で、使用していただいている店は有名店が多く、成功している場合がほとんどです。
―――製パン機械の輸入販売が業務ということですね。
伊藤 そうです。しかし、それだけにとどまりたくはありませんので、いろいろと考えました。成功事例は多いので、実際のユーザーさんたちと密接な関係を維持し、製パンにかかわるさまざまな情報を蓄積して、今後の開店希望者や新規事業の企画・展開に役立てたら、と思ったんです。ただ単に、求められる機械を販売するだけではなく、お客様に成功していただけるように、多角的にバックアップできる体制を目指しました。「どんな店をやりたいか」「どんなパンを焼きたいか」「目標売上額やコストはどれくらいか」などについて詳しくお聞きして、過去の実績と現在の傾向をもとに多角的なアドバイスをさせていただきます。お客様は目標を達成し、お店は成功して、ちまたにはおいしいパン屋さんが増えれば、結果的に業界に貢献できる、と考えました。
―――具体的には。
伊藤 ユニークな展開を実践しているユーザーさんはたくさんいますが、ご近所で古くから知り合いだった千葉県のZOPFさんと共同で、機械の実験機能を持たせた技術研修施設を準備しました。ここに集まって、楽しみながら、業界内の横のネットワークを拡げることができます。情報交換しながらワイワイできるようになっています。また、遠くのパン屋さんはなかなか来られないので、インターネットを利用した情報交換ネットワーク(BBS)もつくって、併せて運用しています。消費者の入れないところで情報交換し、プロのベーカリーが持つ悩みを仲間同士で解決していこうという取り組みです。実際にレシピが出て来たり、はやりの種の管理方法を話し合ったり、接客や改装や電気などが話題になったりと、話の種も多岐に渡ります。
 また、「ベーカリーを開きたい」という開業希望者には、実際にショールームにお越しいただき、具体的な計画や詳細な情報をお聞きし、その実現策を検討させていただきます。機械業者という立場だけでは偏った一面的な提案になりがちなので、実店舗で積み上げられた意見もとり入れて多角的に検討します。経験豊富なZOPFさんをはじめとする現場の意見が公平に入ることによって、計画が熟成し、成功イメージが具体的なものになってきます。
―――機械設備だけではなく内装などについてもかかわるのですか?
伊藤 そうです。「どんなパンをつくりたいのか」「消費者に対してどんなプレゼンテーションをしたいのか」がはっきりすれば、自然に必要な機械設備は決まってきます。しかし、機械設備は独立したものではなく、お店全体の一部にすぎませんので、商品や製造行程はもちろん、粉の仕入れから製品を消費者の口に入れるまで、さまざまな要素の総合的な関わりを考慮しなければなりません。開業希望者にとっては、よい計画をつくるための相談相手がありがたい存在となります。しかし、実際には、気軽に利用できる組織がなかったので、「じゃあ、つくろうか」という事になりました。機械にとどまらず、必要なら商品や製法に関する相談にものります。リスクについても検討し、最終的な事業計画がご本人のプランとして構築されていきます。
 機械についても計画本意に多角的検討をします。各メーカーの特徴と照合して、「どんな機械が最適なのか」を、数ある機種の中から提案します。重要なのは自社の売りたい機械を無理やり当てはめないことです。自社の希望と、お客様のニーズとは必ずしも一致しないものですから。これはパンも同じですよね。ウェルカーも特徴のあるオーブンですが、他の各メーカーの特徴も多岐に渡りますので、これらを良く理解した上で、予算も考慮して最適な一台を検討していきます。自分のところで取り扱っていなくても、必要なモノならば用意できなければなりません。いかにユーザーへの選択肢を広げられるか、つまり、いかに他メーカーの提案ができるかによって自分のシステムを利用していただけるかが決まってくるんだと思います。そうでなければ、身勝手でうるさい不必要な提案になってしまうかもしれません。
 実店舗の経験とデータに基づいて、ハードとソフトを総合的に提案できる組織をつくっていきたいと考えています。
―――最近、機械設備の選定基準で何か新しい傾向はありますが?
伊藤  大手、中小、リテールを問わず、中古機械の需要が目立ちます。世相を反映して閉鎖するベーカリーも多いので、市場に中古品が豊富だという背景もあるんだと思いますが、ローコストで出店することができるので、比較的資本力の弱い若手リテールにとっては良い開業チャンスという考え方ができます。ここでも新品機械、中古機械のそれぞれの特徴を理解して、必要であれば中古業者に協力してもらって夢を実現する提案ができればと思います。そして、元気の良いリテールが増えることによって、パンの需要が増えればうれしいですね。必要とあれば中古機械も含めてコーディネートする力が機械メーカーにも必要になってくるだろうと感じています。
 もともとドイツの機械は頑丈で、50年は使用し続けることができる構造を持っています。弊社でも、買い替えなどで入荷した古いウェルカー・オーブンをオーバーホールして中古オーブンとして提供する機会が増えています。外観はレトロでいかにもオーブンといった存在感を持っていますので、店舗デザインとの相性も良く、クラシックカーやアンティーク家具などが趣味のユーザーさんは「かえって新品よりもいいね」という評価をして喜んでくれます。焼成品質は新品と変わらず、価格は三分の一ですので、高品質とコスト削減を目指すユーザーさんにはもってこいのオーブンです。
―――最近手がけているプロジェクトで、何か面白いものはありますか?
伊藤  外苑前にオープンした「ロイヤル・ガーデンカフェ」さんなどの大手はさすがに素晴らしい完成度だと感心しますが、「ベッカライ・ヒンメル」さんや「ブーランジェリーいち」さん、「ブールブール」さんなどをはじめとする小規模リテール店舗が力強い展開を見せていると感じます。規模は大きくありませんが、それぞれの持ち味を生かした商品は個性的で、消費者に対する切り口は鋭く、展開手法には興味深いツボがたくさん散りばめられています。こういう個性的な成功事例を積み重ねていく事で成功店を増やし、それぞれが質を高め合うことによって、消費者にとってさらに素晴らしいパンライフが開けると嬉しいと思います。それぞれが成功をめざし、そのサンプルを次の開業者が活かすといった循環が理想的ですね。
 この間は、和菓子の専門店さんから「パンを作って売りたい」という相談を受けました。最初は「数十種類の製品を製造したい」という希望でしたが、まずは種類を絞って「和菓子と地域の特徴を生かした完成度の高いパン」を2〜3種類製造し、安定してきたら徐々にアイテムを拡大するという計画をお勧めしました。定期的に開催している講習を受け、実際の現場を知るためにZOPFさんの工場で研修をしました。開業の形態は千差万別ですが、成功するという目標は一つです。我々なりにできる事をしていきたいと思っています。



新光食品機械販売

1993年創業。独カール・ウェルカー社の極東地区総販売代理店。ウェルカー社は、昨年140周年を迎えた。そのオーブンは、基本構造が極めてシンプル。余計な装飾や機能は無く、技術者の操作にダイレクトに反応する。この他にも独ケンパー社のスパイラルミキサー、独ワベーマ社の全自動スライサーなどを扱う。問い合わせの電話番号は047‐442‐2921。





原価計算女王
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