記事の閲覧
| <<戻る |
| いろいろ、エッセイ/2009年1月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 無数の好みを推測して品揃えする - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
いろいろ、エッセイ(25)
久しぶりに都心のデパートの食品フロアを覗いてみた。平日の午後だが人出は多い。おせち料理の注文は今年も好調だという。高額の注文も多いらしい。 ベーカリーではクリスマスに合わせるように趣向を凝らした製品が賑やかである。「シュトーレン」は定番になったようで、どのべーカリーでも必ずといってよいほど販売している。 先日の日曜日のこと、昼飯にパンを食べようと思い、久しぶりに友人がやっているパ ン屋に女房殿と出かけた。 驚いたことに昼時というのにお客が一人もいない。店内 は6坪位のスペースで奥にオーブンが置いてある。 初冬というのに店に入った途端、オーブンから出る廃熱が店内に充満して暑くて堪らない。 おまけに、買いたい物がない。アップルパイをはじめ、見ただけで甘さが分るような製品ばかり。昼時にこんな甘い物を食べるか、という製品のオンパレード。サンドイッチは一つもない。 どの時間帯にどんな味の製品を揃えるか、最低そのくらいのお客に対する配慮は必要だと思う。 6年前のオープン時の洗練され研ぎ澄まされた友人のあのセンスは、どこへ行ってしまったのだろうか。 結局、アップルパイ2個とあんぱん2個を買って店を出た。女房殿は「もう二度と来るのよそうね」と私に囁く。こうして友人の店から二人の 客が去っていく。 お客は自分の好みを最優先に考えて買う物を決める。店はお客の無数の好みを売れ筋から推測して品揃えする。それが合えば売上に結びつくが、 間違えば廃棄ロスとなり利益を圧迫する。 仙台市内で有名な寿司屋に入ったとき、ご主人からそれとまったく同じ話を聞いたことがある。品揃えと廃棄ロスは新鮮な物を扱う店の永遠の課題だ。 この年末に襲って来た不況の速度は予想をはるかに越えている。 大企業は生き残りをかけて大掛かりなリストラを展開している。企業側のこの素早い対応にも不気味さを感じる。不景気風は来年も確実に吹き荒れると予想した方がいいだろう。 来年のことを言うと鬼が笑うと言われたが、この時代、来年のことを今から言って対応しないと鬼に笑われそうだ。 来る2009年は、パンに関わる人々はもとより、みんなが希望の灯を明日に繋げられるような一年であることを期待したい。 |



2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。






