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| いろいろ、エッセイ/2008年11月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 居場所を変えて現実を見詰める - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
いろいろ、エッセイ(23)
人は、「病むこと」「老いること」「死ぬこと」から逃れることは出来ない、とある作家が話していたのを思い出した。 ここ二カ月で二人の友人が死んだ。あまりにも突然の死だった。死から誰も逃れることは出来ないと頭では分かっていたつもりだったが、現実に直面した時、ただ驚きうろたえることしか出来なかった。 もっと色々話しておけば良かったと悔いながら、携帯電話に記録してある二人の電話番号を削除した。 群馬県の前橋に一年前オープンした店を訪ねた。売り場のレイアウトや接客のお手伝いをした。県道に面した独立店でオープンから暫くは好調な売上であった。 今年の初夏に若干値上げをしたという。夏以降の売上は横ばい傾向で、春頃と比較して客数が大幅にダウンしているという。殆どのお客様が車での来店で、ガソリンの高騰により利用を抑えているのが原因と売り場責任者は分析していた。 一年ぶりの入店の瞬間から、店に主張がないのが気掛りだった。お客様に何を紹介したいのか、何を買って欲しいのか、それがボケている。ただ漫然と製品を並べている。売り場のパートさんも事務的にレジ対応をしているだけ。オープン時に指導した売り込みの姿はまったく見られない。 店全体を見ることが出来る場所に責任者を呼んだ。腕を組んで見ている責任者に「何か気がついたことある」と質問した。「いつもと変わらない」という。「しかし、一年前の売り場と変わってしまった」と私。 いつも同じ場所にいると少しの変化に気が付かなくなってくる。「売り場には元気があった。製造さんの動きが店に活気を作っていた。POPで食べ方提案もしていた。製品の特徴を全員が声を出してアピールしていた。陳列も買い易くて綺麗だった。しかし、今は何もない」。責任者が現状の変化に気がつくことを願って指摘を続けた。 今どこにいるか分からないまま進んでいる。今まで何をしてきたのか分からないから、これからどうしたらいいのか分からない。闇の中を彷徨して無駄な時間を過ごしている。 そんな時は少しの時間だけ居場所を変えて現実を見詰めることだ。そして気づいたことを一つ一つ元に戻すこと以外に方法はない。それを私は責任者にアドバイスした。 死んだ一人は一緒にオープンに携わった私の友人である。 |




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