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| THE INSIDE STORIES/2008年9月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 激変期の戦略を探る
原材料高騰が続き、多くのベーカリーが値上げを実施しているが、「ベーカリーの世界でも淘汰が進むだろう」「値上げしたが、売上は値上げ前とあまり変わらない」などと、苦労していることを伺わせる声が多く聞かれる。地球的な規模で、生産活動と消費活動の劇的な構造変化が起こっている状況の中、ベーカリーはどのような戦略で、道を切り開いていったらいいのか。
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| 付加価値をいかに高めるか
あるベーカリーのオーナーは「原材料費の高騰が続く厳しい状況の中で、ベーカリーの世界でも淘汰が進むだろう」と話した。同ベーカリーの生き残り策は、パンの付加価値を限りなく高めることによる高級ベーカリーの実現だ。
商品自体の価値に加えて、売り場の雰囲気や、接客サービスのクオリティーも同時に限りなく高めることで、ベーカリーの存在自体をブランド化することを目指しているのだ。 ほかよりもいい原材料を使って、しかも原価率はほかより低くすること・・・。これが同ベーカリーの目標のひとつなのだ。 一方、茨城県のある繁盛ベーカリーのオーナーは「お客様に、日常から少しの間開放されてちょっぴり非日常の楽しい気分を味わっていただくことが私たちの願いなんです」といった。こちらの方は、高級志向というよりは、庶民派ベーカリーの色が強く、その分購買層の範囲も広くなるし、購買者1人のなかでの購買機会の頻度も高くなる。 いずれの場合も、パンの付加価値をいかに高めていくかがポイントになる。 栃木県のある繁盛ベーカリーは「製品を起点にして物事を考えていく『プロダクトアウト』の方法論よりも、お客様の立場を起点にした『マーケットイン』の考え方をより重要視しているんです」という。 客の目線でのきめ細かなサービスや売り場の楽しげな雰囲気などは、商品の付加価値を高める大きな要素だ。商品と売り場、接客などを総合的にどう演出し、商品をプロモーションしていくかが、今後の生き残りのカギになるのかも知れない。 ただ、プロモーションを行うには、商品が顧客にとって価値のあるものであることが前提条件になる。優れた商品は、優れたプロモーションによって、価値が2倍にも3倍にもなるが、価値のない商品は、プロモーションをすればするほど、その価値のなさを多くの人に知らしめてしまうからだ。 |

| 労働生産性の問題
ベーカリー業界のコンサルタントらからは、「労働環境が悪すぎる。これでは、いい人材はパン業界に入ってこない」との趣旨の声が多く聞かれる。確かに、「低賃金、長時間労働」の事実を思い知らされる話はよく聞く。
リテールベーカリーのパン作りは、かなり手間のかかる仕事であるが、その手間に匹敵するだけの付加価値が価格に反映されていないということになるのだろう。 ここでも商品の付加価値をいかにして上げていくかがひとつの重要なポイントになるのだ。 東京・町田市のあるベーカリーでは、労働環境を向上させるための努力をしている。オープンカフェで、粗利の稼げる焼きたてピザやドリンクなどを出し、全体として、労働生産性を上げようというのだ。 「労働条件を向上させなければ、ベーカリー業界の将来はないと思っています。週休2日制は当然ですが、年金や健康保険などの社会保険を会社として完備することを目指しています」と、同ベーカリーのオーナーは話す。 また、「従業員のシフトをうまく組んで休みをとれるようにするには、全員が窯や仕込などすべてのポジションをこなせなくてはなりません。うちは、例えば厨房の場合は7つのポジションがありますが、2年ですべてマスターさせるようにしています」と話していた。 |

| 値上げして、売上が同じなら・・・ | |
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このところの原材料の値上げで、パンの価格を値上げしたベーカリーは多い。値上げ後の反応をベーカリーに聞いて見ると、「値上げはしたが、売上は値上げ前とあまり変わらない」とか「平均で10%値上げしたが、5%しか売上が伸びていない」などと、消費者の買い控えが起こっていることをうかがわせる声が多く聞かれる。
もし、消費者の可処分所得が同じで、物の値段が上がっているとすれば、結果は明らかで、購入数量を減らすしかない。 パンの購入数量を維持しようと思ったら、ほかの分野での支出を減らすしかない。ほかの分野の物価も上がっているとすれば、減らす量はさらに多くなる。 全体のパン市場としてみたときに、価格が上昇して、販売数量がまったく減らないということは考えにくいだろう。販売数量が減らないベーカリーも確かにあるが、それらのベーカリーは勝ち組であり、その分、ほかのベーカリーで、平均値以上に減っているのだ。 「値上げして、売上が同じならよしとしなくては」という声も何人かから聞いた。もし、値上げして、総売上が値上げ前と同じであれば、値上げせずに売上が同じ場合と比べてどうだろうか。 値上げせずに売上が同じなら、原価が上がっているのだから、当然利益は少なくなる。一方、値上げして売上が同じ場合は、販売数量が減るので、原価のトータル額は減ることになる。販売量が減るということは、労働コストも削減できるということだ。 |
| パンからご飯へのシフトは本当に起こっているのか?
「原材料が高騰している状況では、加工度の高いパンは、米と比べて不利だ」という声を多く聞くようになったが、実際はどうなのか?
ブランスリー報道社が8月9日から行っているネットアンケートで、千葉県の48歳の女性は、「最近パン食は減ったか、増えたか?」との質問に「減った」と答え、その理由については、「価格が高くなったので量を減らしました」と答えている。さらにパンに変わって何を食べるようになったか」との質問には「ご飯を食べるようにしています」と答えている。 また、愛知県の36歳女性も、同じ質問に、順番に「減った」「食パンの値段が高くなったから」「お 米を食べることが増えました」と回答している。 この他にも、同じ趣旨の回答をした人が、かなり目立った。 (このアンケートの集計結果は次号に掲載の予定) |
| 柔軟な発想と想像力が必要 | |
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今まさに、地球的な規模で、生産活動と消費活動の劇的な構造変化が進行している。激変期に起こるのは進化か絶滅だ。
私たちはそのことを肝に銘じ、時代の変化に順応できるだけの柔軟な発想と想像力をもって、事に当たらなくてはならない。 (O) |
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