ベーカリーのブランディングが商品の価値を高める - ル・ルソール - ブランスリー電子版

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お店拝見/2008年9月号

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ベーカリーのブランディングが商品の価値を高める - ル・ルソール

店構えは上品で控え目といった趣だ
住所:東京都目黒区駒場3-11-14 明和ビル1F
電話:03-3467-1172
営業時間:午前8時30分〜午後7時
定休日:月曜、第3火曜



ビストロよりもグランメゾン

店内には、レジと向き合う形で、陳列台が、L字形に配置されている


オーナーの清水宣光さん


クーベルチュールと低水分バターをサンドした「ショコラ55」


陳列台は低く、商品がよく見えるようになっている。背後の壁も、並んでいるパンと同じように奥深い表情がある


厨房は売り場の延長線上に配置され、売り場から厨房の奥までが見渡せる
 「1000円の店で100円のものを売るのと、100円の店で100円のものを売るのとでは、顧客満足度という意味において、まったく違うと思うんです」
 東京・目黒区にあるル・ルソールの清水宣光オーナーはこう話した。
 「グランメゾンは、ビストロと比べると、料理の原価率は低い。それは、料理を提供する場所の雰囲気やサービスにも相当なコストをかけているからです」
 清水さんは、ベーカリーのブランディングに強い関心を持っている。商品そのものの価値と、それを提供する環境やサービスとを総体として考えているのだ。また、それを実現するためのプロモーションの重要性も痛感している。
 「原材料の高騰が続く厳しい状況の中で、ベーカリーの競争力は相対的に低くなっていると思います。そんな中で、ウチとしては、商品のクオリティーとともに、ブランドの確立というか、売り場の雰囲気やサービスも含めて全体としてクオリティーを上げていく努力をしているんです」
 清水さんは、パンの専門学校を卒業後、洋菓子店のベーカリー部門に入った。その後、メゾンカイザーの立ち上げのメンバーとして働いた。ル・ルソールをオープンしたのは2006年の8月だ。オープン前に、ある会社から依頼されて、ベーカリーのブランディングに関わった経験もある。
 「独立するに当たって、身内だけで店をまわすということはしたくありませんでした」と清水さんはいう。
 スタッフの長時間労働に頼ったベーカリー経営をしたくなかったからだ。ビジネスとして成り立っていなければ、優秀な人材がパンの世界に入ってこなくなるという危機感もあった。
 清水さんにとって、ブランドの価値を高めることは、手間のかかるリテールベーカリーのパン作りの労働生産性を高めるということでもあるのだ。
 「日常品としてのパンの需要は、これからはさらに大手ホールセールベーカリーにとられていくと思うんです」と清水さんはいう。
 今年の秋には、店舗の改装を行うという。もちろん、ル・ルソールブランドの価値をさらに高めていくためだ。



刻々と変わる店内の商品配置

リンゴのコンポートとグレープフルーツピールが入った「シス」


スイス産グリエールチーズ使用の「パン オ フロマージュ」


オーガニックの粒あんを使用した「あんぱん」


トルコ産いちじくを練り込んだ「パン オ フィグ」


練乳とバターを合わせたクリームを入れた「ミルクフランス」


バターと生クリームをたっぷりと練り込んだ「パンブリエ」
 ル・ルソールは、京王井の頭線・駒場東大前駅から徒歩約3分の閑静な場所にある。
 商圏内には食にお金を使うだけの余裕がある人が多く、ハード系のパンなどはオープン当初から比較的よく売れているという。店構えは上品で控え目といった趣。中に入ると、個性豊かなパンが少し誇らしげに並んでいた。
 「シス」(190円)は、リンゴのコンポートとグレープフルーツのピールが入ったパンで、数字の6の形に成形して焼成している。「シス」はフランス語で「6」の意味だ。
 「パン オ フロマージュ」(320円)は、スイス産グリエールチーズをたっぷりと使用した商品で、チーズとパンが一体化して独特の食感になっている。
 「あんぱん」(160円)は、オーガニックの粒あんを使用している。表面に白ごまと黒ごまをまぶして焼成、個性豊かなあんぱんだ。
 「パン オ フィグ」(210円)はトルコ産いちじくを練り込んだパンで、いちじくの形に成形して焼成。
 「ミルクフランス」(120円)は、小さなフランスパを背割りにして、練乳と低水分バターを合わせたクリームを入れた商品。
 「パンブリエ」(450円)は、バターと生クリームをたっぷりと練り込んだパン。クープが美しく、見た目に、彫刻の作品のような迫力がある。
 「ショコラ55」(160円)はプチフランスパンに、ベルギー産クーベルチュールと低水分バターをサンドした商品。
 同商品は、取材時、陳列台にひとつだけ置かれた真っ赤なプレートの上に、ひとつだけ陳列されていて、とても印象的だった。
 「陳列台や棚の商品の配置は、商品の売れ具合によって、刻々と変わります。その時その時の、最も理想的な商品配置があるんです」(清水さん)
 具体的に、細かくは説明してくれなかったが、パンや器、陳列台、背景の壁などの色や形や表情、そして各パンの残数などと、無限にある売り場演出の要素の配列を、巧みに変化させることで、その時々の最も好ましい売り場の状態をキープする、清水さんなりの方法論がしっかりと確立されているのだ。 



作り手からも適正な価格

取材メモ リテールベーカリーの労働生産性は低いといわれるが、それは労働の質と量に見合うだけの付加価値が作り出せていないということだ。作る側から見れば、いい材料を使い、手間を掛けた割には、思ったほどの価格で売れないということになる。ベーカリーのブランディングは、これを作り手からも消費者からも適正な価格にしようという試みと捉えることもできる。例えば、レストランの世界では、ファミレスから、超高級レストランまで、それぞれのニーズを吸い上げて存在している。今は消費構造が激変している時期だけに、ベーカリーの世界でどのような新たな棲み分けが起こっていくのかが注目される。

原価計算女王
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