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| いろいろエッセイ/2008年9月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 今が、一番成長出来る時期 - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
いろいろ、エッセイ(21)
北京オリンピックが開幕した。総べての競技者が自らの力を最大限に発揮し、優者と敗者に分かれる。スポーツは二分する残酷さを含んでいるが故に美しく魅力がある。水泳の北島康介選手の全力を尽くして闘う姿は今まで経験したことのない感動を与えてくれた。 パンが値上げになった。価格がアップすれば買い上げ単価は上がり客数が下がるのは十分想定できたはずだ。しかし、今回の客数の下がり幅は想定をはるかに超えていると聞く。そのマイナス要因を一日も早く回復させるにはチラシなどを使って仕掛け作りをする方法もあるし、店を見直して基本に戻る方法など色々あるだろう。 各店の実状を踏まえて早急に現実的な策を実施することが必要だ。何も策を打たない事が一番拙い。値上げ以後の売れ筋はどう変わったのだろう。単価の低い製品の動きはどうなったのか。高い製品の動きはどうだろうか。 バゲットの中味の柔らかい部分を取り除いて皮だけを食べる方法が観光ガイドブックで紹介されていた。パリではそんな食べ方があるらしい。香ばしくパリパリとした食感はワインのつまみとしても合うとある。 外皮の食感が好きでいろいろな店でバゲットはよく買う。先日も郊外のベーカリーにバゲットを買いに行った。端が少しだけ見えるバゲットをショルダーバックに入れて歩く。 小粋な感覚はまるでコマーシャルフィルムの世界にいるようだった。家に帰り庭のテーブルにワインとチーズを用意して食べようとしたら、パリパリのはずのバゲットがしな垂れていた。 店で焼きたての温もりがあったままのバゲットをビニールの袋に入れていた。それが原因だ。何の変哲もないただのフランスパンに変わっていた。結局その日はガイドブックにあった食べ方は止めにした。 仕込みからパンを作っていることを売りものにしているその店では朝早くから何人もの手を経て作り上げたはずだが、たった一つのミスで品質を落とした。製造過程ではなく売る段階でのミスだ。 製パン技術の講習会があちこちで実施されているが、形として作り上げた製品ではなく、お客様が食べる時を想定した製品の技術を習得して貰いたい。売り手は製品の特徴を作り手から学ぶべきだし、作り手は売り手に教えるべきだ。 ある人が「人に見られること、人に見せることで、人は成長する」と言っていた。値上げでお客様の厳しい選択を受けている今が、一番成長出来る時期と言えないか。本物が本物である為には、お客様の厳しい目に対応出来る本物の製品を作り売り続けることだ。 いつの時代もそうであったように、それがお客様が再来店して下さる最高の策になるはずだ。 お客様と作り手、売り手の双方が良くなる関係、つまりウィン・ウィンの世界を作り上げなければならない。そのためにも小さなミスを起こさない、許さない姿勢は持ち続けたい。 |



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