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| THE INSIDE STORIES/2008年8月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 企業も消費者も音をあげたい気分 - 値上げが語る食の今
「食」価格の上昇が止まらない。小麦粉に始まり、油脂や乳製品はもちろん、パンに洋菓子。これからは、紅茶や輸入ワインに果汁商品、それに子供が楽しむ駄菓子までも。選択権のない消費者はたまらない。食料価格の高騰は、原料メーカーの営業マンをユーザーのもとに走らせる。原料値上げをわびるためだ。一体何件の企業に頭を下げるのか。加工度の少ない原料は直に価格に響くが、高くなった原料を高くなったまま販売するのは難しい。価格転嫁が無理でも、ユーザーに頭を下げる。企業も消費者も、もう「音をあげたい」気分だ。
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| 安い店を求めて移動する消費者も
パンの主原料である小麦の価格は、昨年の10月に10%、今年4月に30%値上げされた。
いまだに国際的な小麦価格の高騰が続いており、国内消費の約9割を外国産小麦に頼るわが国では、10月の輪入小麦の政府売り渡し価格を20%以上値上げしなければならないようだ。製粉・製パン・製菓企業にとって悩ましい秋が巡ってきそうである。 これまでの小麦粉価格の改定により、大手洋菓子企業では昨年クリスマス時に製品の一部を値上げしたが、せいぜい今までの不足分を補う程度にとどまっている。 製パン業界では、大手メーカーや有名店などが値上げに踏み切ったが、十分な効果を得られているとはいえないようだ。ある製粉企業の関係者は、「大手ベーカリーも苦しいとの声も聞こえてきますよ」と現状の厳しさを語る。 パン全品の価格改定を行なったあるリテールベーカリーでは、「このご時勢だからしかたがない」との消費者の反応が多く、理解を得られたとみていた。しかし、客単価は上がったものの、安い店を求めて移動する消費者も出てきており、売上は、値上げ前とそれほど変化がないそうだ。 中小メーカーの多くも事情は同じで、値上げしたとしても、原材料価格上昇分すべてを十分に価格に反映できていない上に、売上も値上げ前とさほど変わらない、との声が多く聞かれる。 |

| パンの価格は適正なのだろうか | |
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経済協力開発機構と国連食糧農業機関が、今後10年間の農産物需給の見通しを発表している。それによると、今後10年(2008〜2017年)の農産物価格は、1998年〜2007年までの10年間の平均価格を大きく上回るという。
過去10年間の小麦の平均価格は、トン当たりおよそ164ドル。しかし、08年以降の10年間では、平均価格が約234ドルと42%以上上昇する。同様にコメは約34%、砂糖30%、バター約60%の上昇見通しを示している。 穀物価格は、これまでの30年あまりの間、およそ10年に一度の干ばつで高騰し、収まれば下がるといった繰り返しであったが、今後はこの「見通し」を見るかぎり、価格高騰を一時的な現象として捉えるのは難しそうである。 つまり、小麦価格の変化に一喜一憂していては、腰の座った商売は出来ないのではないかということだ。 そこで、現在のパンの価格は適正なのだろうか、と考える。原材料を選び、早朝から仕込みを始め、幾つもの生地を作る。労働コストや技術力を考えたら、今のパン価格は納得できる値段なのか。安さが強調される現代、他の商品と比較して、パンの値上げの突出だけは避けようと、消費者の立場に立って「買える値段」があるはずと、値上げ幅を決めているのが実情である。近年サラリーマンの給料は伸び悩んでいる。あるベーカリーは「収入に限りがありますからやむを得ません。昼食時の客単価が800円あったら助かりますけど・・・。無理ですねえ」と語る。 |

| 商売になる仕組みを作っていく
しかし、他の小麦粉2次加工品業界からはこんな声も聞こえてくる。ほとんどの人はスーパーで即席めんを購入したことがあるはずだ。関西圏の県内大手とも見られる製めん企業は、即席めんの対応に苦慮していた。安くなりすぎて、いくら売っても利益が出ないのである。そこに小麦粉価格の改定。同企業は、今年1月以降、前年比1・5倍から2倍の値上げを行った。
売上減少は覚悟のうえ。それより、きちんとした利益を上げることを考えた。消費者の反応は悪くないという。3〜4月には「買いだめ?」と思うほどの販売量を記録した。スーパー側にしても、きちんとマージンが取れるようになった。ようやく、普通に商売が出来ると、製めん企業もスーパーも喜んでいるのである。 もちろん、今秋、来春と原料小麦粉価格のさらなる値上げの可能性もあり、そのときに商品を再度値上げせざるを得なくなった場合の消費者の反応は未知数だ。 それでも「売り上げが半分になっても商売になる仕組みを作っていく」という長期的な方針を変える気はない。 「安いが一番」から「適正価格の商売」へ舵を切るよいチャ ンスがやってきたのかもしれない。 「食の安心・安全」という言葉が、標語のように新聞や雑誌を飾ってきたせいか、消費者の食に対する意識は高くなってきたように思える。食品価格が軒並み上がり続ける今、こんな話もある。安価な商品に対して、「疑いの目を持つ」消費者も現われているというのだ。「原料を安いものに変えたんですか」「中国で作っているんでしょ」。はては「食べても大丈夫」など。安いものには訳があると感じはじめているのではないか。 消費者に信頼される食品を販売することで、企業が安定的に利益を生み出し、それが消費者に自然と、安心・安全を提供することにつながるのであれば、価格だけに気を取られることもないのだろう。 |

| 商社もまた競争が厳しい | |
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相変わらずの大量生産・大量販売・大量消費が続く。今、このスタイルを変える時期にきたのではないか。
わが国は、パンなどの主原料である小麦の多くを外国産に依存する。その小麦を実際に買い付ける商社もまた過当競争にさらされ、国が決めた制度の中で、適正な利益を出すのが難しい状況にある。特に原料を政府に売り渡すだけの中堅商社は利益が出にくいといわれる。このため、応札をやめる企業も出始めている。いずれ、大手以外は穀物の買い付けから手を引くとの観測も流れる。その大手も製粉や製パン企業などとの連携を強めていかなければ、小麦の商売は成り立ちにくい。今後も安定した小麦輸入が可能なのか不安が残る。 |
| まずは「『食』い改めよ」
国内では主要穀物のコメの減反がまだ続いている。自国の土地を休ませて他国から輸入する。食糧自給率39%の国のやることではない。例えば、パンやメンなどの2次加工品の需要が伸びれば、ますます輸入に不安要因を抱えた外国産小麦に頼ることになる。
今回の小麦値上げは、作りすぎ、食べすぎ、そして大量廃棄するわたし達の食生活を見直すよい機会ではないか。値上げに音を上げる前に、まずは「『食』い改めよ」である。 (W) |
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