
「パン・オ・ヴァン」は、カットすると、クランベリーの赤と、ピスタチオのグリーンが心地よい対比を見せる。まるで、パンの中に宝石をちりばめたようだ

芳醇なフルーツケーキのような味わいの「パン・オ・ヴァン」

シニフィアン・シニフィエの志賀勝栄シェフ

落ち着いた雰囲気の店内。奥の棚には、多くのワインが置かれている

フランス産の「ミモレット」など、様々なチーズも販売している

店内にはテイスティングスペースがあって、パンに、チーズ3種類とドライフルーツ、ワインがつく「本日のおすすめプレート」(1575円)などを出す。
東京・世田谷区三宿、シニフィアン・シニフィエの「パン・オ・ヴァン」(1本2400円、100グラム300円)は、独特の食感を持った商品だ。パンというより、むしろ芳醇なフルーツケーキの味わいだ。
「卵やバターを入れなくても、フルーツケーキのようなしっとり感があり、お茶にもワインにも合い、砂糖を入れなくても老化しにくいようにと考えて、ルセットを作りました」
同ベーカリーの志賀勝栄シェフはこう話す。
仕込み水には煮詰めた赤ワインを使用。その理由のひとつは、テイスティングスペースで出すメニューに使用するワインの残ったものを有効活用することだった。
赤ワインに合うドライフルーツとして、トルコ産の甘みのある白イチジクを赤ワインとスパイスで煮て練り込んだ。このほか、クランベリー、ピスタチオ、くるみ、アーモンド、マカダミアナッツなどをたっぷりと入れる。カットすると、クランベリーの赤と、ピスタチオのグリーンが心地よい対比を見せ、まるで、パンの中に宝石をちりばめたようだ。
小麦粉は、フランス産のオーガニックのものをベースにしている。「少し癖があり、野生の生命力を感じさせる粉」(志賀シェフ)で、イチジクが強い味なので、それに負けないような存在感のある粉を合わせたのだという。
小麦粉はこの他、北海道産の全粒粉も使用している。さらに、ローストしたヘーゼルナッツプードルも配合。酵母はルヴァン・リキッドだ。「パン生地は、ひきがなく、しっとりした食感にしたかったんです」と志賀シェフは説明する。
「練り込む副材料が多い商品なので、全体のバランスには特に注意しました。パンは、あと味のよさが大事だと思うのですが、それは、全体のバランスが作り出すものだと考えています。ひとつの素材だけが、前面に強く出てきてしまってはいけないと思っています」
同ベーカリーは、「パン・ド・ミ」が1斤500円、バゲットが1本450円などと、価格設定が高めで、「高級ベーカリー」のイメージを持つ人も多い。しかし、志賀さんはこう説明する。
「使用する素材の質と量、パンのサイズに妥協せずに製品を作り、最低限の粗利になるように価格を決める、ということなんです。例えば有機素材が贅沢品のように扱われる日本の現状はとても残念に思います」
しかし、オープン当初は、志賀シェフのパンを知っている人たちが、メインの顧客だったが、1年経って、新たな顧客がかなり増えたという。ネット通販も積極的に行い、商圏を広げる努力もしている。
▽シニフィアン・シニフィエ 東京都世田谷区下馬2‐43-11-1F、電話 03-3422-0030