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| いろいろ、エッセイ/2008年4月号 |
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| 人通りが多くても売れないこともある - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
いろいろ、エッセイ(17)
最近、地方の商店街を見る機会が多いが、その結果はかつて活気がみなぎり賑やかな時を見続けたシャッターだけの商店街を見ることとなった。人通りも疎らである。朽ち果てた看板だけが店であった跡をわずかに残している。そんな中で「○○パン屋」の看板を見ると胸が締め付けられる。そこにはもうあの焼きたてパンの香りはない。大型店舗の進出だったり、周辺人口の減少だったり、後継者が不在だったり、経営者の判断ミスによる経営不振だったり、原因は色々あったことだろう。そして営業を続けることへの迫り来る不安にけじめをつけて様々な終わりを迎えたのだろう。 東北の盛岡へ行った際に長くそこに住んでいる知人から聞いた話だ。「街の色がなくなってしまった」と嘆いていた。その土地の老舗が店じまいして、何処にでもあるような、と言うことはそこになくてもいいような全国に展開する大手チェーン店が増えて、街独特の色がなくなってしまったと言う。 以上は地方を廻った感想であるが、まだ全国津々浦々の商店街を見たわけではない。活性化している商店街も多数あるはずで、いつの日にか報告できればと思っている。 東京駅周辺や赤坂や六本木に新たに商業施設が次から次にオープンしている。今月初め久しぶりに東京銀座に行った。通りには数多くの外国のブランド店がオープンして、まるでヨーロッパにいるような錯覚を起こしてしまった。東京の街は想像もつかないスピードで変貌している。それはまるで残された時間を生き急ぐような街に思えてならない。そして地方とのあまりのギャップの大きさを感じて、ただそこに立ち尽くすだけだ。そしてこの両極がいずれも今の日本の実像であることを自らに言い聞かせるのである。 人通りの多さがイコール来店者増になり売上増に結びつくとは限らない。こんなことは商売をしていれば日々感じる事であると思うが、錯覚を起こしてしまったことがある。 代々木に店があった当時のことをお話ししたい。十年前にオープンした頃は近隣のオフィスから昼時に多くのお客様が来店し、売上も予想以上に好調な状態が暫く続いた。やはり人通りが多いことが売上アップの条件であると周りに言いふらした。その後、街は賑わいどんどん大きくなり人通りが増えた。しかし通りの賑わいとは逆に売上はどんどん下がった。近隣にあったオフィスは移転し周辺は若者向けの店が多くなり街の色が変わったのだ。店の前を通るのは遊びに来た若者でパン屋には来なかった。結局店は暫くして撤退した。人通りは増えたがパンを買いたい人達ではなかったのだ。 時代はこの数年で大きく変わってしまった。そんな中でベストワンを狙うかオンリーワンを目指すか。誰に何をどのように売るのか。経営に求められる判断はそんな基本的なところにあるように思えてならない。 |




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