店からの提案を積極的に行う - パン樹 久遠 - ブランスリー電子版

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お店拝見/2008年1月号

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店からの提案を積極的に行う - パン樹 久遠

パン樹 久遠は、JR熱海駅の「熱海駅前仲見世通り」にある
住所:静岡県熱海市田原本町7-3
電話:0557-81-3310
営業時間:午前7時〜午後7時
定休日:木曜日、第3水曜日



夏場に売上が落ちない

売り場は約20坪と広い。写真奥が入り口で、そのすぐ脇がイートインのスペース


オーナーの武山陽司さん(中央)と康江夫人(右)。左は製造スタッフの斉藤久美子さん


地元のラジオ局の番組で紹介してもらい販売を予定している「クリスマス向けのパンセット」
 観光地で有名な熱海で、日々奮闘するベーカリーがある。その名を「パン樹 久遠」。JR熱海駅から徒歩3分、駅前の商店街を入ってすぐの場所だ。オーナーの武山陽司さんは、生まれも育ちも熱海。7年前に、両親が経営していた土産店を改装して、ベーカリーを開業した。
 「観光客は減っていたし、土産店よりもベーカリーの方が将来性があると考えました」と武山さんはいう。
 アパレル関係の貿易会社のサラリーマンだったが、ベーカリーを開くために、会社を辞め、東京製菓学校で製パンを学んだ。卒業後、複数のベーカリーで修業を積み、2000年に開業した。開業に当たっては、製菓学校で知り合った多くの人たちが力になってくれたという。
 「この辺に住んでいる人たちは、年配の方が多く、いわゆる『普通のパン』が好まれます。でもその一方で、フランスパンやライ麦パンなど、ハード系のパンを買っていかれるお客様も多いんですよ。お客様が求めるパンをきちんと作ってきました。でもそれだけではなく、『こういうパンもありますよ』という感じで、こちらからの提案も積極的に行ってきたんです。そのバランスが大切だと思います」と武山さんは話す。  昔から住んでいる人たちに加えて、最近増えているのが、週末だけの住人だという。マンションが新しく次々と建設され、セカンドハウスとして購入する人たちが増えているのだという。「そういう人たちは、都会のパンを食べ慣れているので、要求はかなり高いですね」(武山さん)
 1日の来店客数はおよそ200人。その8割は地元の人たちだという。
 「これまでは、自分が修業時代に覚えたパンをいろいろな形でアレンジして、作ってきて、それがある程度受け入れられてきました。これからは、それをさらに発展させて、自分独自の商品を開発していきたいと思っています。本当の勝負はこれからですね」
 様々な企画も積極的に行ってきた。現在は、クリスマス用のパンのセットを地元のラジオ局の番組で紹介してもらい、販売する企画を準備中だ。
 夏場に売上が落ちないのも強みだ。同ベーカリーの売上が高い月のベスト3は、2月、3月と8月だという。
 「地元の人たちで固めたベースの売上があって、その上に、季節などの要因で売上がのっかってくるというイメージです。8月はやはり、熱海への観光客がかなり増えるので、その分伸びるのだと思います」



観光客の取り込みが課題

いちじくを練り込み、クリームチーズを巻き込んだ「いちじくとクリームチーズのライ麦パン」(左)と、くるみとレーズンを練り込んだ「クルミとレーズンのライ麦パン」(右)。いずれも、麦焦がしを使用したライ麦パンの生地を使用している。


「ライ麦パン」(左)と「マカダミアとオレンジピールとクランベリーのライ麦パン」(右)


ホシノ酵母使用の生地に、大麦、玄米、キヌアなどを練り込んだ「五穀米」


「ホテルカレーパン」(右、116円)とたこ焼きが入った「たこやきドーナツ」(左、95円)


黒米を練り込んだ「古代米パン」も人気


中央の平台には、人気商品の数々が並ぶ


シュトーレンはスライスでの販売も行っている(1袋297円)
 今の課題は、観光客をいかに取り込むか、ということだ。そのひとつの方法は「特産物的な商品」を開発すること。
 「例えば、麦焦がしを使ったライ麦パンは、7月に開かれる地元熱海の例大祭『こがし祭り』(天狗が蒔く麦焦がしを頭からかぶると、無病息災で長生きができるとの言い伝えがある)をヒントに作った商品です。このようにパンにストーリー性を持たせることは大事です。現在は、観光客のお土産として喜ばれるような商品を開発中です。観光地熱海の復興にも一役買える店になりたいですね」(武山さん)
 売り場の一角には、約15席のイートインのスペースがある。取材中もゆったりとくつろぎながらパンと飲み物を味わう人の姿が多く見られた。
 「イートインは、観光客の方が一休みに立ち寄られることも多いんです。より多くの観光客を取り込んでいくには、欠かせないと思っています」(武山さん)
 品揃えはおよそ80品目。顧客のニーズを探りながらの試行錯誤の結果の商品ばかりで、一つ一つに店の思いがこもっている。
 「いちじくとクリームチーズのライ麦パン」(420円、ハーフカット210円)は、麦焦がしを使ったライ麦パンのバラエティーのひとつだ。ライ麦パンの生地にいちじくを練り込み、クリームチーズを巻き込んだものをプレーンの生地で包んで焼き上げた商品。
 「クルミとレーズンのライ麦パン」(116円)も、ライ麦パンの生地を使用し、くるみとレーズンを練り込んでいる。
 マカダミアやオレンジピールなどを練り込んだ「マカダミアとオレンジピールとクランベリーのライ麦パン」(210円、ハーフカット105円)もライ麦パンの生地を使用。
 この他、ホシノ酵母使用の生地に、大麦、玄米、キヌアなどを練り込んだ「五穀米」(116円)や、黒米を練り込んだ「古代米パン」(84円)などが人気だという。
 同ベーカリーは。売り場面積約20坪、厨房が約10坪。スタッフは、製造が3人。販売が2人。平均日商はおよそ12万円という。



新たな本流へ

取材メモ パン樹 久遠のライ麦パンが印象に残った。ライ麦のほかに、麦焦がしを配合しているという。種もライサワーではなく、別の種を使用しているとのことだった。ドイツの本格的なライ麦パンとは別物なのだが、何ともしっくりと私の味覚に響いた。「亜流」ではない。亜流とは、本流の上っ面だけをまねて、深い考えなしに作ったもののことだ。注意深い観察と熟慮の上の模倣は別の新たな本流を作り出す。まさにその可能性を感じさせてくれた。かつて我々の祖先が、大陸を模倣して、独自の本流を築き上げたように・・・。



原価計算女王
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