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| いろいろ、エッセイ/2008年1月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 人と人のふれあいの暖かさ - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
いろいろ、エッセイ(13)
食に関する様々なニュースが話題となった一年であった。繰り返し起きた偽装や不正行為は、安全や安心を求める消費者の期待を大きく欺いたこととして肝に銘じておきたい。英知を積み上げた暖簾の重さも伝統もあっと言う間に崩壊してしまった。消費者に対するのと同様に、信頼や信用を得るのに多年を要して築き上げた先輩諸氏の努力に対する責任は極めて重い。 一連の不祥事で消費者の身体に直接の被害が及ばなかったことは幸いだが、多くの消費者の心に大きな不安を与えてしまったことは、食に携わる者として忘れないでおきたい。最近の世の中の出来事を振り返ると、見えないことが見えない間に、予想もしない動きを始めているように思えてならない。言葉に言い表せない危うさを感じてしまう。 今年も残り僅かとなった。歳を重ねるごとに一年が短く感じるようになったと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。先日バスの中で小学生が「今年は短かった」と話しているのを聞いて、びっくりして振り返ってしまった。最近の時間は歳に関係なく微妙に速度を早めているのだろうか。 それなのに何故だろう。一年は短く感じるのだが、カレンダーが残り一枚になった今も、年末であるとあまり感じないのだ。私が住んでいる所ではまだ寒い北風が吹いていない。コートの襟を立て、両手をコートのポケットに入れて、軽い猫背で北風に向かって歩く男の姿はダンディーで格好良いが、そんな男の姿も見ない。 販売力の大切さを何回か書かせて頂いたが、一店の例をご披露して今年を締めたいと思う。 横浜中華街に「福龍」という中華料理屋がある。メイン通りから外れた小さな店である。最近改装したばかりで、店内が綺麗で明るくなり一人で来る女性客が増えたとのことである。改装して良かったと主人は喜んでいた。 店の二人の女子従業員の対応が気に入っている。「付かず離れず」の応対をしてくれる。しつこくないし、冷たくもない。一言二言交わす言葉に親しみを感じる。こんなことがあった。食事を済ませてレジで「お客さんが増えたね」「ありがとうございます」。 殆どの店ではここで会話は終わるのだが、「味はいかがでしたか。前と変わっていないですか」と聞かれた。この言葉を聞いた時に、この店が何を一番大切にしているのかが分った。また来ようと思った。他のお客様にも笑顔で「どう、美味しかった」「また来て」と声を掛けていた。 これは当たり前のことかもしれないが、その当たり前がどんどん失われている中で、接客の大切さと、人と人のふれあいの暖かさにめぐり逢えた。 ベーカリーでも、このような応対が出来る店作りのお手伝いを、来年はしたいと思っている。 |



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