「ベーカリー・ストラテジー」構築 - リ・モデルではなく、リ・コンセプト - ブランスリー電子版

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海外情報/2003年9月号

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「ベーカリー・ストラテジー」構築 - リ・モデルではなく、リ・コンセプト

 今回はいささかシリアスなテーマを選んでみた。
回復の兆しが見えてきたと言われるアメリカ経済であるが、いぜんとして失業率は低くならないし、外食産業も低迷を続けている。
 筆者が定期購読しているベーカリー業界の雑誌や所属団体の機関誌などは最近とみに食品業の基本的な位置づけを論じている。
 これらを総称して「ストラテジー セットアップ」と呼んでいるが、和訳すれば「ベーカリーの基本戦略構築」としておくのが適切であろう。
 家を建てる場合の土台に等しいわけで、いささか肩がこるテーマであるが、数種の情報源からその内容をなるべくわかりやすく説明してみたいと思う。



リテール フォワードの20の提案


 アメリカの食品流通業界における代表的な情報機関が出した食品業界の今後を予測したレポートの中に、きわめて注目される分析結果がある。次のようなトレンドを事前に予測し、対応策を考えておけば今後の厳しい企業間競争にも生き残れるであろうと書かれている=「2010年に向かって20のトレンド分析」(出典・リテール フォワード)。
 (1)ワンサイズの否定
今後の「コンスーマー・マインドセット=願客要望」はさらに多岐におよぶ事が予測されるので、幅広い顧客対応が求められる。
 (2)ウォルマートは伸び続ける
なんといっても同社の存在は無視出来ないし、今後も伸び続けるだろう。そこで重要なのは同社の持つ弱点を見つける事だ。決して価格競争の渦中に入らない事が肝要。
 (3)スーパーセンターの進出加速
ウォルマートに代表されるスーパーセンターは既存のスーパーマーケットの願客を奪うであろう。しかしながら小規模リテールストアは、自分の店が持つ利点を顧客にアピールしていく事で必ず生き残れる道が開かれるだろう。
 (4)既存スーパーマーケット、スーパーセンター間の競争は激化
 ここしばらくはスーパーマーケットの対スーパーセンター対抗策の模索が続くが、いずれ決着がつく。その段階で小規模リテールはNiche(ニッチェ=隙間)市場を狙うだろう。
 (5)デパートメント ストアの危機
 その存在意義が失われつつある百貨店は今後どうなるだろうか。さらに統合合併が進むだろう。
 (6)ショッピング モールの変化
 低価格路線を行くスーパーセンターが品揃えをさらに強化すれば専門店がならぶ既存のショッピング モールはその存在意義がなくなる。おそらく大きな変化が求められよう。
 (7)リ・モデルではなく「リ・コンセプト」を
 リ・モデルとは単に店舗の改装を意味するが、今後必要なのは「リ・コンセプト」、つまりコンセプトの再構築だ。業態、販売、商品、顧客、ライフスタイル把握など、あらゆる観点から「リ・コンセプト」が求められる。
 (8)新機軸の優位性(イクスペリメンタル イクセル)
 この用語は初めて聞く新しいものだが、その真意は「各企業は個々のデータにより独自性のある新機軸の開発が求められる」という意味であろう。
 (9)E‐コンマース
 小売を「リテール」と言うが、インターネットを経由する販売形態をE‐リテールと言う(新しい合成語)。インターネット経由による物品販売は新しいトレンドであるが食品という商品が持つ特殊性を考えれば、今後は急増しないだろう(非食品類の場合は大きな伸び率がすでに注目されている)。
 (10)スマート ショピング
 英語を母国語としない私たちが、よく間違えた解釈をするのが、このスマートという単語。「格好や身体のスタイルが良い」と言う意味ではなく「頭が良い、賢い」と言う意味である。したがって、ここでは「賢い買い物」という意味になる。今後の買い物客は事前に十分な商品情報を集め、価格比較をするであろう。したがってリテーラーはそれに対応出来るようにしなければならない。
 (11)スマート ストアー
 前述のスマートなお客を迎える店は販売員を十分に教育して商品知識を持たせ、効率の良い販売手段をとらせ、高度なテクノロジーを導入した店舗を作る事が必要となる。
 (12)M‐コンマース
 これも新しい用語であるがMはMobile‐device(モービル ディバイス=可動性の高い手段)の意味であろう。具体的にはBtoB(ビジネスからビジネスヘ)行動において積極的にコンピューターを活用し、商品、販売管理などを行なう事の重要性を説いている。
 (13)グローバライゼーション・オリゴポリー
 国際化およぴ寡占化の進行。今なお商業的解釈や顧客志向の相達は存在するが、販売業の国際化は進行し、結果として寡占化が進むであろう。
 (14)リテーラーのサプライヤー化
 リテーラー(販売者)は大規模化した結果として仕入れ力を増し、同業他社への卸しを始める事が予測される。すでに世界最大規模のリテーラーであるウォルマートは中小規模スーパーマーケットへの商品卸しの開始段階にある。
 (15)リテーラーのブランド優位性
 またまたウォルマートの例を出すが同社は最近になってアメリカの一流ジーンズ製造業、リーバイスと特別契約を結んだ。結果として今までは考えられなかった安価で一流品が売られる事になる。そうなるとブランドの主導権はリテーラーが持つ事になる。今後この現象は特に食品類で加速すると予測される。
 (16)ブランド シェア
 異なるリテーラーどうしが同一ブランドを販売し、商品力強化を意図する事であるが、同時にさらに広義のパートナーシップの連携に至る例が多い。
 (17)Uber(ウーバー)リテーラー
 これも難解な新用語であるが説明を読むと「予測されるブランドカを超えて、競合する商圏や商品群に立ち向かう事」を意味すると思われる。
 (18)サプライヤーのリテーラー化
 前述の(14)と逆の意味であるが、発想としては極めて重要であり、日本においては食品業を含むあらゆる業種に提案出来るものと思われる。つまり『サプライヤー(商品供給業者)はリテーラー(販売業者)が自分の顧客であるという意識をさらに強め、商品を供給すると共に商品知識、販売戦略なども供給する事の重要性』を説いている。自社商品の「売り方」をリテーラーに提供出来るサプライヤーがこれからの理想像であろう。
 (19)サプライヤーが自社販売化
 商品卸しの直販化が進むであろうとの予測である。これをSDTC(Supplier direct to consumers)と呼ぶが、小売業の消滅を意味するので特に小規模リテーラーにとっては極めて危険な現象である。
 (20)コンスーマー ショック
 この用語も新しいもので、しかも難解であるが筆者なりに理解を試みた。今後は製造・卸し・小売・顧客という商品流通形態にそれはど大きな変化は起こらないであろうと予測される。その一方で現状に飽きた顧客は何らかのショック(変化)を求めている事も併せて認識していなければならない、という意味であると解釈した。  「つねに顧客志向の変化に敏感でなければならない」という示唆を最重要視して20の提案の最後に述べているのではなかろうか。



自社ミッションの確立など、RBAが提案


 アメリカにおけるリテールベーカリー組織であるRBAは隔月で会報を出しているが6月号に掲載された「リテールベーカリーにおける経営者が取り組むべき重要課題」と題した記事をまとめてみた。
 (1)自社ミッションの確立
 Mission(ミッション)とは義務、役割、目標などを意味するが、さらに「自社の経営姿勢の明確化」としておこう。アメリカのリテールベーカーと話をすると彼らの多くは「自分の商売はコミュニティと密接に関係している」と言う。日本で言う「地域密着」であろう。ほとんどは地元客であり、地域の会合や催事には商品を納め、自分も顔を出すなど、大型店舗の安売り攻勢とは無縁の世界が今なお存在する。したがって彼らのミッションは地元客に奉仕する事であり、それが店の存在と繁栄につながるという。
 (2)エンプロイメント
 店を支えるのは商品も重要だが同時に良い働き手を確保する事も重要であると述べている。時給、超過手当、有給休暇、制服支給、商品の割引販売、社員教育などオーナーのやる事は多い。インターネットの経営者相談でもこれらの話題が最多である。
 (3)カスタマー プライオリティ
 顧客が自分の店の商品、販売サービスに満足してくれているか? オーナーはいつもこの事を意識していなければならない。
 (4)プライシング
 プライスは商品価格であるがプライシングは価格設定である。高すぎても低すぎてもいけない。適価が理想であるがさらに複雑な要素が加わる。
 (5)ファイナンス
 財務管理であるが具体的には無駄な経費の削減が課題。資材の購入も満足出来る価格とサービスを提供してくれるサプライヤーを見つける事が重要。
 (6)ビジネス メジャーメント
 売り上げおよぴ利益設定を明確にしなければならない。日毎の仕事に追われどうしではいけない。自分の手におえなければ外部の専門家に協力してもらう。
そして今日リテールベーカリーへの最も重要な提案は「ビジョンが明日の成功につながる」であると述ペている。




アメリカにおける商品価値の判断は、「いかに手間をかけて作っているか」によることが多い。したがって手作業で装飾する特注ケーキ類はリテールベーカリーにおける高利益商品で必ずといっていいほど商品化されている。


ベーカリー商品もこのような「レディー・トゥ・イート=そのまま食事として食べられる」商品が人気だ。この写真例は小麦粉を焼いた薄手の生地で各種のフィリングを包んだラップ。


大衆路線を行くコンビニエンス・ストアにおけるサンドイッチ類も最近は既存の商品とは異なるものが出始めた。この写真例は、セブン−イレブンが新たに商品化したシリーズで、「ビッグ・イート」と命名されている。このように顧客トレンドをつかんだ商品開発が行われていることに注目しよう。

リテールと対峙するのがスーパーマーケットのインストアベーカリー。最近のトレンドとして、このような木製の商品陳列台が開発され、売り場の楽しさを演出している。


カジュアルレストランにおいても、この写真例のような健康志向の「ベジタブルバーガー」が人気商品となっている。

原価計算女王
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