
1日に何回も揚げたてが出る「じっくり煮込んだカレーパン」(115円)も人気商品のひとつだ。

売り場奥に設置された石窯の前では、焼き上がったパンの仕上げ作業などが行われる。石窯パンの陳列棚もあって、様々な商品が並んでいた。

とろっとした食感が人気の「粉クリ熟ちーず」(115円)。冷やすとさらにおいしく食べられるという。「ひとくちサイズの幸せを」というキャッチフレーズと共に陳列されていた。

ベルギー産チョコレートスティックが2本入った「ショコラ王子のショコラ・ショコラ」(136円)も人気だ。

やや照明を落とした売り場から見ると、製造スペースの明るさが印象的だ。
井上さんは、16歳のとき、父を亡くした。実家の生業は牛乳の卸業で、飲食部門も持っていた。
「父が亡くなり、その間、母が会社を切り盛りしていました。その後他人の協力も得たのですが、私はその人と意見が合わず、若くして社会に出ました。同年代の人たちが学校で勉強しているときに、私は様々な業種の仕事の実学を学びました。そして、飲食の世界でやっていくことに決めたんです。その中で教わったことは、自分が客だったら何をしてほしいかを考えればいい、ということでした」(井上さん)
その後、バブル期の人手不足もあり、母と、亡くなった父のために、実家が営む会社の井上フーズに戻った。
そして、22歳のときにあるベーカリーに修業に出た。「駅前にマクドナルドとパン屋が並んで営業していたんですが、パン屋の方が断然繁盛していて、『ベーカリーはこれから有望だ』と思いました」と振り返る。その後、さらにいくつかの店で、パンの修業を重ね、井上フーズでベーカリー事業を立ち上げた。
「わくわくする店作り」が井上さんのモットーだ。そのための方法論のひとつが、ディズニーランドから学ぶことだった。例えば店舗の外壁は、時代感を出すため、特殊な塗料を何回も塗り重ねている。ディズニーランドの建物を実際に担当した職人に依頼したという。
ホスピタリティーの精神もディズニーランドから学んだ。朝礼時に井上さんは「今日も1日、たくさんのゲストをお迎えして、小さな村の住人を演じましょう」と訓辞を述べる。
顧客へのあいさつは「いらっしゃいませ」ではなく、「ようこそ、こんにちは」だ。「売り場主導のベーカリーにしなければ、決して店は繁盛しません」と井上さんは言い切る。
「お客様がほしい時間にほしい商品を提供しなければなりません。ともすれば、製造サイドは『無理です』と言いがちなのですが、実際は、無理ではないことがほとんどなんです。話は簡単です。自分がお客様だったら、何をしてほしいかを考えればいいだけなんですよ」
同ベーカリーは、市民参加型の企画にも積極的だ。例えば、調理パンに使用している特製ソースは、下妻市に住む女性が開発したものだ。また、店内に流れるBGMは、同じく下妻市在住の女性が選曲したものだという。さらに、従業員が着るユニフォームのデザインや、店内に飾るフラワーアレンジメント、パンに合うワインの選定なども市内在住の女性に依頼した。
「お客様に参加していただいて、共にいい店を作っていきたいと考えているんです」と井上さんはいった。