MR.MASAO ASANUMA
ムッターローザに約20年間勤務。その一方で、日清製粉が主催するフォーラムに参加し、パン業界の様々な人たちと深く関わった。そしていま、東京・中央区の小さな事務所から、次の一歩を踏み出そうとしている。
22年前、大手製菓メーカーが立ち上げたばかりのベーカリー、ムッターローザから声がかかった。
そのとき、働いていた小さなベーカリーに、ムッターローザが、ベーカリー運営を学ぶために、研究員を派遣していたのがきっかけだった。
そこからすべてが始まった。浅沼さんはムッターローザに入社。パンの製造工程から、販売方法まで、あらゆることを再構築した。
あるとき、日清製粉が主催するあるフォーラムに参加しないかと声がかかった。大手製パンメーカー、リテールベーカリー、製パン機械メーカーなどパンに関係する様々な立場の人が集まる勉強会の一種だった。参加者一人一人が自分の経験や立場で、ほかの参加者に何を与えられるかが問われるフォーラムだった。そして与えた分だけ、自分もほかのメンバーから得ることができた。
フォーラムでは、毎回、テーマを決めて、それに最も適した立場の人が講師になって話をした。
「店舗の掃除に専門の業者を頼むことがありますが、その適正な内容について私が話すことになったことがありました。私は、自分の職場での経験を生かして、実際に清掃業者にフォーラムの会場に来てもらい、仮の床を敷いて、そこで専用の機械を使ってワックスがけの実演をしてもらいました。コンビニはどういう清掃をし、ワックスがけをしているか、ということを具体的にわかってほしいと思ったんです」
フォーラムでは、ベーカリーを経営していくためのあらゆることがらがテーマになった。
そして、浅沼さんは、自分の職場とフォーラムの両方から多くのことを学んだ。そのひとつに従業員教育があった。
「ベーカリーを経営していくうえで、人をいかにして育てるか、その難しさがよく言われますが、私に言わせれば、オーナーが自分で育てようとするから、だめなんです。なぜだめか。それは、経営者が最初から直接育てようとすると、教育になりづらいということなんです。つまり経営者と教育者は違うということです。じゃあ、どうすればいいか。スタッフの中から教育する役割の人を決めるんです。その人はもちろん会社の意思を背負っているわけですが、会社を離れた一人の人間という立場からも従業員と接することができますから」
さらに、「従業員に語りかけることです。そのときに大事なのは、必ず、質問を入れること。従業員はそれに答えたいと思うので、勉強します。新入社員や新しいアルバイトが入ってきたら、最初から経営者が、厳しくきつい口調で接してはいけません。萎縮してやめてしまうこともあります。やはり、チーフなどに教育は任せた方がいでしょう。会社になじみ、自分の立場をしっかりと確立できるまで、辛抱強く待つことが大事です」
いま、長年勤めたムッターローザを去って1年、浅沼さんは次の一歩を踏み出すための準備を着々と進めている。
リテイルベーカリー協同組合の理事としても活躍中。「総論よりも各論を」が信条だ。